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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 8

 数の多い小型が落ちてくる前に弾種を切り替え撃つ。

 糸を伸ばして緩やかに降りてくる小型に炸裂式雷撃弾の青白い光が周囲を巻き込む。

 マホロの予想より早く降下してくる小型の蜘蛛たち。

 落ちてくるまでに雷撃弾は二発しか撃てなかったがそれでも8匹、湯気を立てて自らが出した糸につられて揺られている。


「兄貴、やばいって! 捕まったら一本釣り待ったなし!」

「マホロ! エクエリを奪われるな、後どうしたらいい!」

「精鋭、黄薔薇隊の人! 助けて」


 着地し濡れた床に糸をつけ周囲には上の巣から延びる蜘蛛の糸がまっすぐ床につき檻のようになりマホロたちを閉じ込める。

 糸は細く見えづらいがスプリンクラーの水が伝って流れているため注視すれば存在は確認できた。

 粘着性はないがかなり丈夫で人の力で切れるようなものではない、ただそこにあるだけでそれだけでユユキたちの行動に制限がかかる。

 特に大型のエクエリを非武装の三人のために右へ左へと振り回しているマホロには銃身に糸が引っかかり数段動きずらくなっていた。


「糸が邪魔なら切って、エクエリの弾で普通に切れる」

「バッテリーが持ったいねー、こいつら倒してもまだ上にデカいのが待ってる。それに後から追ってきている第七世代とも戦う、バッテリーの消費を抑えないと」


 わざわざ糸を狙って一本ずつエクエリで撃って切っていくには時間がかかりすぎ、手間取っている間にも小型は床や縦糸を伝って移動しそこから飛び掛かる。

 小型にたやすく人を殺す殺傷能力がないのが救いか、数匹が強化繊維の制服に上ってきていても顔や手にとりつかれるのを気を付け誰も怪我をしていない。

 チヤは上着を腕の部分だけ着た状態のまま裏返しで脱ぎ、袖の内側から掴んで両腕で上着を振り回している。

 こうすることで数少ない強化繊維で守られていない手首から先を守ることができ、ユユキたちもチヤの真似をして上着を裏返しでに脱ぎ小型を振り払って床落とす。

 エクエリはないが床にいるに向かって力任せにブーツで踏みつけようとして、それを小型の蜘蛛は機敏に避ける。


「くっそ、ちょこまかと。それに縦糸を移動しながら粘着性の糸で横に糸を張ってる、このままじゃ閉じ込められちまうぞ兄貴」

「糸が髪について動くたびに引っ張られて痛い、これだけでも切ってくれない?」


 行動に制限がかかりながらも無駄撃ち少なく一匹ずつ確実に撃ち抜いていたマホロはユユキたちを見た。

 視界の端で小型相手に全力で対処していた彼女たちは、小型の蜘蛛に飛びつかれるたびにつけられる粘着性の糸に撒かれほつれた糸が体の動きに合わせて揺れている。


「だいぶ減ったあと8匹、動きがやたら機敏なのが残った。さすが兄貴よく当てる」

「冷蔵庫の裏にいるのと同じ生き残り方してる、足の速いやつはやっぱり生き残るんだ」

「さっさとやっつけてくださいよ」


 制服を振り回しても体力的に問題のない精鋭のチヤと膝に手をついて息を切らせている王都の研究者のユユキたち。

 小型の蜘蛛たちも少し距離を取りマホロがエクエリの銃口を向けようとすると縦糸を移動し死角へと逃げようとする。

 しかし数が減り狙う時間に余裕ができてくるとそれらも一掃されていく。


「兄貴、私たちが来た方の通路に新しい生体兵器!」


 最後の一匹に狙いをつけていた時に聞こえたチヤの声に視線を動かし闘技場の入り口を見ると、百足型の生体兵器が周囲の状況を確認すべく赤い頭についた長い触角を機敏に動かしていた。

 上着を着なおしユユキが百足型の生体兵器の説明を始める。


「デスサイズ、興味本位で発注したらほんとに捕まえてきた生体兵器だ。過去に災害種になった生体兵器とまったくの同種らしく、体は二回りほど小さく一般兵に捕獲されるような奴だけど能力は本物。とにかく稲妻のように早くて人を殺す毒もある、ちなみに災害種の名前は拠点壊し、防衛能力の高いシェルターを襲わず、資材回収班や前線基地を見つけた端から片っ端から潰していった強襲型の生体兵器」


 ユユキの注意を聞きつつマホロはデスサイズとの距離が離れている今のうちに周囲の糸をエクエリの弾で切った。

 そしてバッテリーを替えながら答える。


「大丈夫、こいつは災害種じゃないしそもそも特定危険種でもないからすぐに倒せる。問題はこいつと第七世代が上に上がってきているはず、ユユキさん自慢の一品そっちが脅威度は高い」

「生体兵器同士で戦ってくれないかな。危険と認識しない限りは近場にいる奴から倒しに来るからむりか、一匹はあんな上にいるし」


 マホロが正面のデスサイズに意識を向け、その横でチヤがフォッシビバンを警戒する。

 お互い何も言わず二匹の生体兵器に対処できるように役割を分担した。


「チヤ、皆を俺の後ろに」

「そりゃとっくに後ろにいる、死にたくないもの。くそっ、糸がうざったいなぁ!」


 マホロがデスサイズに注意を向けているころ長い脚で機敏に糸の上を移動するフォッシビバン。

 より高いところへと移動したフォッシビバンは長い脚に糸を巻き付け糸の弾を作り下へと落とす。


「兄貴、なんか落としてきた上の警戒」

「わかった」


 マホロが大型のエクエリを持ち上げて真上に向けるとチヤがデスサイズの警戒を変わる。

 糸の弾は吊るす糸から切られ床まで落ちてきた。


「何だ?」

「わからない、でも何かしらの攻撃だ」


 二回目の糸玉の攻撃は真下ではなく横へと落とした。

 見当はずれの方向へ落ちていくが途中で角度を変えてユユキたちの方向へと向かってくる。


「振り子! 避けて」


 ユユキが叫んでナユタとともに床に伏せ躱そうとした。

 しかしユユキたちの前にあった残った縦糸にくっつき止まる。


「巨大な粘着糸の固まりか、これで高いところから降りずに私たちを捕まえるつもりか」

「遠距離攻撃ってまったく毒針活用できてないな」


「元は第三世代の小さな生体兵器、ここまで大きくなる予定はなかったんだろう」

「元はこの小型と同じで飛び掛かってくるタイプだったのか、それならまだ毒針の使い道もあったかもな」


 ユユキの分析にマホロが心の声を漏らす。

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