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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 7

 通路の端により携帯端末で下の階に置いてきたユウゴたちと連絡を受けるマホロ。

 スモウの死骸で後方の様子はわからないが闘技場は目と鼻の先でユユキたちも出口が近いことに安堵し座り込んで休んでいた。

 通路は闘技場からの眩しいくらいの光が差し込んでいる。


「ユウゴさん何だって?」

「合流はできなさそう、後第七世代と逃げ出した生体兵器が一匹がこっちに向かってるって」


「うげっ、早いとこ先すすまないと。こんな場所じゃ大型のエクエリ一丁で生体兵器と戦えないぜ。それに足手まといになるユユキたちを戦いになる前に逃がす必要もあるし」

「そうだな。ユユキさんに知らせてくる」


 先に闘技場へと歩いていくチヤと別れマホロは大型のエクエリを担ぎなおしてユユキのもとへと向かう。

 彼女は座ったまま顔を上げ眼鏡を上げなおすとマホロを見る。

 つられて横にいた白衣の女性も顔を上げる。


「ユユキさんそろそろ出発します。まだ歩けますか」

「もう少しで地上に出られる。休んだから体力はなんとか、とはいえこれから長い梯子を上らなきゃいけないんだけども」


 マホロの手を借りてユユキは立ち上がり闘技場へと歩き出す。


 円形で凹凸のない巨大な空間となっている闘技場は壁も床も白く湯気が立っている。

 いくつもの高光度の照明に照らされた闘技場はスプリンクラーの水が上の階から流れ落ち小さな滝がいくつもできていた。

 スプリンクラーが作動し多くの水が撒かれていてその水の向こう、湯気すら立ち上るその向こうにも同じような通路が見える。


「なんかここ蒸し暑いな」

「強いライトの光が床を焼いているから撒かれた水を蒸発させてる、強い光だからライトに近寄れば火傷するわ」


 湿度で眼鏡が曇ったユユキは眼鏡をはずしてレンズを拭きながらマホロについていく。

 闘技場に入ると全方位から照らされる光で色の薄い影が複数でき、降り続く水は光輝き空中で煌めき虹がかかっていた。

 天井と入り口の通路以外は全周囲コンクリートの壁、遮るものはなく平らな床に水たまりができている。


「恐ろしいな」

「人間が入るところじゃないし、どの角度から映像をきれいに移すためにも光量は必須。それにいざという時、生体兵器が上に登ろうとしたときだけど、そん時は閃光弾代わりに眩しく光るの」


「今その状態じゃない?」

「ええ、だってサーバーが指示を受け付けない暴走状態だからね」


 立ち上る湯気はさらに視界を悪くさせ、ユユキは曇る眼鏡を拭いてついていく。

 蒸される空間にチヤやユユキは少しボタンをはずし胸元を緩めた。


「あんまし、ボタン開けると強化繊維でも生体兵器の攻撃に耐えられないんじゃないのかユユキさん」


 ユユキの青い下着が目につきマホロが気持ちのこもっていない注意をする。


「ところで向こうにも通路見えるけどエレベーターがあるのか?」

「あるけど向こうは生体兵器が飼育されている部屋があるから、それらが逃げてたら危ない」


「確かに、ユユキさんたちを連れてならこっちの道しかないか。でもユウゴさんたちに連絡すれば合流できるな。ユユキさんたちを無事に送り届けたらそっちで合流しよう」

「なら、彼女に開け方を聞いておくべきよ」


「そうだな、っと。ところでその下の階にいた生体兵器はなんだ」

「強化繊維用の糸を作る蜘蛛型、肉食の生体兵器だから私が襲われた時にいた蚕と違い人を襲うの」


 ユユキがそういった瞬間前方からの悲鳴、振り返ればナユタの白衣の背中に1メートルサイズの小型の蜘蛛型の生体兵器がくっついていた。


「助けて! 何かが背中に!!」


 強化繊維のおかげで尖った脚は体に刺さらなかったものの小型の蜘蛛は糸を背中に縫い付けている。

 そして縫い付けが終わると小型の蜘蛛とともに一気に上へと巻き上げられていく。


 ナユタは一瞬中に持ち上がるも白衣が脱げ、床にたたきつけたられるように落ちる。

 白衣はそのまま上へと上がっていき遥か上に見える大きな影のもとへと消えていった。


「小型!?」

「兄貴、エクエリ!」


 チヤは強化繊維の上着を脱いで小型の蜘蛛を叩いている。

 奇襲に失敗し糸をたどって上に逃げようとしている蜘蛛をはたき落とし続けていて彼女を助けるため蜘蛛を撃つと、大型の弾を耐えるほどの強度はなく体の真ん中に当たらなかったが小型の蜘蛛は大穴を開けられ息絶えた。


 小型の生体兵器が死んだことを確かめマホロは上を見上げる。

 まばゆい光の中にわずか水にぬれ光を反射する大きな漆黒の体が見え、ユユキは眩しい光に目を細めながら言う。


「フォッシルビバンスパイダー、数少ない第三世代未満の生体兵器でありながら成長を続け巨大化した生きた化石だ。巣を張るうえあれのお尻に蜂の毒針がある、太さ五センチ長さ1メートルの。捕まったら助からないと思う」

「巣を張るのは見ればわかる、身動き取れなくなるから毒とかの前にその時点で普通終わりだ。ユユキさんたち俺から離れないで」


 よく見れば光の中にはフォッシビバン以外に、いくつもの黒い点が見えそれらは小さな蜘蛛の生体兵器たちだった。

 フォッシビバンスパイダーは20匹近くの小型の蜘蛛を味方につけ、獲物を見つけは背中に振ってきては糸を縫い付け巣へと連れていく。

 マホロは重たい大型のエクエリを真上に向けて構え何発か撃つ。


「ダメだ眩しくって狙えたものじゃない」


 大した手ごたえがないのに舌打ちをしつつ重さでぶれる銃口を力を入れてしっかりと構えなおす。


「兄貴、炸裂式雷撃弾で照明を」


 チヤに言われマホロは闘技場の壁と屋根の境目につけられている照明に撃つ。

 青い電流が配線を焼き切り電球が消える。

 それを繰り返し周囲の壁に何発か撃ちこみライトを壊して光の量を調整した。


 壊していくことで闘技場の明かりが減り、上の層の観客席からの明かりに照らされ浮かび上がるフォッシビバンと仲間の小型蜘蛛たち。

 数匹での奇襲に失敗し今度は小型の蜘蛛全匹で4人目掛け飛び降りてくる。


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