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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 6

 一定時間がたちスプリンクラーのが作動、しかしユウゴたちは気にも留めずエクエリを撃ち続ける。

 通路いっぱいに肥大化したロイアルポイズンの目を潰し腕に致命的なダメージを与えるが、潰した目がちぎれかけた腕が内側から盛り上がり再生していく。


「いやはや、これはもうファンタジーの領域ですな。手足の傷ならまだしも目や骨まで再生するだなんて、どうやって倒すというか削り切るというか」

「しかし、別段硬くなったわけでも動きが早くなったわけでもありませんし。それにほらよく見てください、再生のたびに体が萎んでいっていますいつかは空気の抜けた風船みたいになって死ぬんじゃないですか?」


「ならそう願うとしよう。バッテリーを替える、少しの間任せても?」

「ええ、それが終わったら私もバッテリーを交換します」


 二人の精鋭の止むことのない攻撃に手足を失い続け、前に進むことも後ろに下がることも許されないロイアルポイズン。

 体に力を入れ体中の毒を飛ばすがスプリンクラーの水と混ざり飛距離は短く、床に飛び散った先から水に流れて排水溝へと消えていく。


「道が限定されてるって本当に倒しやすいですね。しかし動かない相手と戦うのはつまらない」

「硬い相手が相手ならこっちがやられる展開になるのだが。さて、頭を集中的に狙っているのに死なないとは……もしかして脳も再生していたりしているのか?」


 もはやただの作業となるポイズントードの駆除。

 初めは戦闘を楽しみにしていたユウゴも、反撃のない一方的な攻撃に二丁あるうちのエクエリの一丁しまいポイズントードを攻撃する。

 二人の何もさせない圧倒的な攻撃により再生より破損のほうが多くなり、皮膚に最初はなかったこぶが増えちぎれそうな腕から新たな腕を生やしたり修復に間に合わなくなった再生能力が暴走し始めていた。


「だいぶ萎んできましたね。それと生物として冒涜的な形になってきた」

「死ぬに死ねないってどんな気分なのでしょうな? しかしいい加減、死んでもらわないとバッテリーがなくなってしまう。上に上がっていった大型の生体兵器も気になり、階段はどの程度残っているのかわかったものでもない」


「奥にいる第七世代のこと忘れてませんか? こんな期待外れを倒したらサッサとほかの生体兵器を探しにいきましょう」

「生体兵器を倒す前にイサリビ嬢の護衛を、そのためにここは合流するのが目的というのを忘れてはいないかね?」


 突然ロイアルポイズンがユウゴたちに向かって動き出す。

 頭を失い手足が歪な状態で動けないようにもしているにもかかわらず床を滑るように動き出した巨体に驚いて下がる二人。


「何です、これどうしました!?」


 冷静に一度しまったエクエリを持ち直し二丁で応戦するユウゴ。

 体と頭のあちこちが削れそれでも巨体はゆっくりと床を滑るように動き続ける。

 しかしすぐに動いているのが手足が動いていないロイアルポイズン自身でないことに気が付く。


「これ背後で何かが押している」

「柔らかいとはいえ小型のエクエリでこの巨体を貫通させて向こうへの攻撃は無理がある、これはまずい」


 通路めいいっぱいに膨れ上がった巨体をよけることもできず、今も再生を続ける頭を踏んで乗り越えることもできない。

 何より体には何種類もの猛毒を持っている触れることすら危うい。

 通路は左右に逃げ込めるような部屋はなく背後は階段を失った縦穴、正面からゆっくり滑ってくる巨体を何とかしなければいずれ押し出され縦穴を落ちていく。


「さて、後ろにいるの何だと思う」

「第七世代でしょう」


「……やはりか」

「他にいないでしょう、あの蛇が第七世代に勝ってこいつを丸呑みにしようとしているって可能性もないこともないですが、重量と力的に押し負けるのは蛇のほうでしょう。さて何とかして第七世代と戦う方法を考えないと」


 リクコウが攻撃をやめ髭をさすりながら縦穴のほうへと歩いていく。

 縦穴にあった階段はきれいになくなっている。

 スモウが昇るために脚を食い込ませ傷つけた壁があるが、強度が不安で掴まれそうな突起もなくケーブルもどこかへ消えていた。


「逃げられそうな場所はないですな」

「さて困った」


 二人が本気で困っているとその心配は勝手に解消された。

 押される力に柔らかい体が負けロイアルポイズンの体が裂け零れる臓物、ボロボロになっても再生を始めようとする体の散らばる肉片の中から第七世代は現れる。

 硬い鱗は毒など通さず、ロイアルポイズンの毒のある皮膚を剥がして内臓を食らっていた。


 食事をするにつれ少しずつ大きくなっている第七世代、その背丈は二足で立てば頭を天井にぶつけるくらいにまで大きくなっていた。


「ようこそ!」


 多少の動揺があったものの、ユウゴが二丁のエクエリ構え第七世代を狙って攻撃する。

 遅れてリクコウも行動に制限をかけるため足に狙いをつけエクエリを撃つ。

 光の弾に頭部の鱗を破壊され、その驚きに第七世代は食事をやめて体をよじって通路の端へ移動しののロイアルポイズンの肉塊を盾にする。

 ロイアルポイズンの残骸に空いた穴を挟んで精鋭と第七世代は対峙した。


 流石にバラバラになった状態からでもは再生できないようでロイアルポイズンだった塊は形を維持できず崩れ落ち、四つ足で威嚇する第七世代の奥で体を千切られたサンドスピーカーの姿がスプリンクラーの強い水しぶきの中ぼんやりと見える。


 緊張の瞬間もわずか、今度はユウゴたちの背後から縦穴を上ってくる一定のリズムで連続する足音。

 百足型の生体兵器がユウゴたちに気が付いたようで一瞬動きを止めるが、そのまま上へと向かってしまう。


「我々を無視した?」

「リクコウ!」


 後ろに気を取られた一瞬の隙をついて走り出し、ロイアルポイズンの死骸を一気に跳躍する第七世代。

 その勢いのままとっさに壁に張り付くように避けるユウゴたちを無視して百足型の生体兵器を追うように縦穴を上っていく。


「何だったんだ、我々より生体兵器を追っていった?」


 ユウゴが呼ばなければスプリンクラーの水音で背後の第七世代に気が付かず、突き飛ばされ縦穴から落ちていったかもしれなかったリクコウ。

 勢い良く壁へと避けたときに体をぶつけたがすぐにエクエリを構え第七世代を狙っていた。

 しかしもう壁を上っていった二匹の姿はない。


「まぁ、人間より生体兵器のほうがカロリーの量がある。食えるとこのない蛇と、食事の邪魔される蛙より、新しい餌を求めていったというところか。イサリビ嬢が言っていた通りならここから上に上がるすべはもうない……我々は残った生体兵器を掃討でもしていくしかないだろうな」


 第七世代の消えていった縦穴を見つめユウゴはバッテリを取り換える、リクコウも携帯端末でマホロたちに連絡を取りながらバッテリーを取り換えた。


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