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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 5

 

 階段を上りきりユユキたちを奥に行かせて下に攻撃を撃ちこむチヤ。

 薄暗い竪穴に青い閃光が光る。

 それでもスモウは止まらず、攻撃をあきらめチヤもエクエリを担いで奥へと逃げた。


「止められなかった、殻が硬いんだ雷撃弾は表面だけ伝って壁に流れていってる。通常弾じゃ傷はつけられても殺しきるには時間がかかるぜ、なんで兄貴エクエリ捨てたのさ。生体兵器とこれからどうやって戦うつもりよ」

「生体兵器と戦う武器がなくなるのは分かっていたが仕方なかった、流石にあれを持ったまま壁から外れた階段を上るのは辛かったんだ。長くてあちこち引っかかるし何より重いんだチヤも知ってるだろ。この二人も手すりに摑まりっぱなしだったし、手を引いて上に上がるためにもあれは邪魔だった」


 巨大な部屋ごと移動させるため大型の生体兵器も通れる広い通路。

 エレベーターからレールが闘技場へと続いていて4人はそれを伝って走る。

 配電盤や多少の凹凸あるものの4人が通路に隠れられるような場所はなく、背後では上り切ったスモウが通路へと足をかけていた。


「どうする、階段が壊された以上ユウゴさんたちが助けに来ることはなさそうだぞ」

「どうするって兄貴はエクエリ捨てて私に頼りっきりじゃんよ。ユウゴさんに兄貴の小型のエクエリ貸しているし大型の生体兵器と戦うには火力が足りない。ユウゴさんみたいな接近しての視覚外から部位を削っていく戦い方なら翻弄できるんだろうけどさ」


 引きながらも上がってきたスモウにエクエリを撃つチヤ。

 重たいエクエリを持っているってこともあり走って先を逃げるユユキたちから大きく放され置いていかれている。


「なら俺が戦うからチヤ、そのエクエリを貸してくれ」

「いいけど、捨てないでよ? それ捨てたらもう私たちだって自分の身を守れるかわからないんだから」


「わかってる」

「んじゃおねがい」


 チヤを待ちマホロは大型のエクエリを受け取るとスリングをかけて背後から迫るスモウに狙いをつけた。


「ユユキさん!」

「え、なに?」


 マホロが闘技場へと振り返ることなくまっすぐ走っていたユユキへと声を張り呼び止め、彼女は振り返って後ろにいないマホロたちを探して止まる。

 それに続いてナユタも止まった。


「ちょっと戦ってくる、あまり先に行かないようにチヤと行動を共にしていてくれ。先で世帯兵器が待ち伏せてたりしていたらあぶない」

「わかったけど、何をするつもり」


 ユユキが疑問を口にしたが、答えるより先にマホロがスモウに向かって走りだす。

 今まで超大型のエクエリを構えながら走っていたマホロには、走りながら大型のエクエリを構え撃つことは容易。

 通路に乗りあがり向かってくるスモウの目を狙い通常弾を撃ち込む。

 光の弾はすでに何度となくチヤが狙った跡がありスモウの頭に新たに傷が増える。


 ――並みの大型よりも硬いな、エクエリ一つでも時間をかけていれば倒せなくないけど、ユユキさんの見ている手前時間をかけて倒している場合でもないし。


 狙いは関節部。


 マホロの接近にスモウは体を下げて床につけるように歩き方を変える。

 しかし通路のわずかな凹凸を使って大きな体の下へと潜り込む。


 下から足の付け根、赤い関節部に銃口を向け撃ちあげる。

 大型のエクエリ威力は小型の何倍もあり数発撃ちこめば脚は重量に耐え兼ね根もとから折れる。

 攻撃ができる場所でないため移動を速めマホロの上から離れようとするスモウ。


 通り過ぎる前に関節部に手をかける。

 スモウの棘の生えた脚に強化繊維が引っかかり引っ張られる形でスモウに張り付く。

 体の下は姿勢を低く押しつぶそうとしていて近寄れないが足は常に曲げていて空間がある、デメリットとして歩くたびに大きく揺れるが。

 そして引きずられるようにマホロはそのままうまく狙いのつけられない片腕で攻撃を続け少しずつ外骨格を削っていく。

 至近距離で大きな体でたらめに撃ってもダメージの大小はあるが命中はする。


 体が割れ体内にダメージが入ると体をひねり大型のエクエリの弾種を炸裂式雷撃弾に切り替えた。

 小型程度の生体兵器なら命中すれば一撃で全身の神経を焼ききり、中型なら神経や脳を焼き行動に制限をかけ、大型であっても行動を中断させたりひるませる。

 撃ちこまれた青い光の後で体液が沸騰する。

 移動をやめ体を崩し止まると引っかかったままの上着を脱いでマホロはスモウの正面へ回り銃口を触角の動く頭へとむけた。


「あぶないよ兄貴、濡れてる体であんな至近距離にいて炸裂式雷撃弾で感電とかしてない?」

「やっぱりあの距離はあぶないのか、脚がアースになってて大丈夫だと思っていた」


 通常弾に戻して何度も撃ちこみ頭に穴をあけ何発も撃ちこむとスモウの触角は動きを止めた。


「ユユキさん、あと何匹いるんだっけか?」


 チヤに寄り添い一緒にいたユユキが答える。


「7……8匹くらいだと思う、第七世代をいれれば。もしかしたら見えないところで生体兵器同士が潰しあって何匹か死んでいるかもしれないけども、それくらいいると考えるべき」


 白衣の女性はスモウをみて腰が引けていたがユユキを盾にして、怖いながらもなるべくみんなから離れないようにしていた。

 エクエリを持っていなくてもスモウのそばまで寄っていくチヤはユユキの意見に同意する。


「楽観的に考えたらいけないか、全部生きてると考えて考えようぜ。そのエクエリは兄貴が持ってていいよ。戦わないでユユキたちを守るというのなら私が戦うけどさ?」


 マホロはスモウの脚に引っ掛かった上着をはずして羽織ると、三人と合流しエレベーターと闘技場を交互に見てチヤの顔をみた。


「いや俺が持つよ。どうする、ユウゴさんたちと合流しに戻るか?」

「階段がない、上がってこれないからこのまま上を目指すべきだと思うけど」


「合流をあきらめて地上に目指すか……普通の生体兵器にやられる程度の人たちじゃないから心配はしていないけど、エクエリがこれしかないから」

「仕方がないとはいえ、兄貴が捨てるからじゃんよ」


 すこし考えたがチヤはユユキたちを地上に返す選択をする。

 そして闘技場へと向かって歩きだした。


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