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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 4

 ユウゴたちを残しパイプ作りの階段の薄い鉄板をガンガンガンと音を立てながら駆けるユユキたち。

 スプリンクラーの水を浴び濡れているため手すりを掴んでいても滑って転ぶ恐れがあり、急いでいても慎重に階段を上っていた。


「ユユキさん」


 チヤが前だけを見て先頭を進みマホロが背後と前を交互に見ながらしんがりを務めて、階段を上がっているとユユキに話しかけた。


「どうしたの?」

「さっき、現れたあれ、第七世代。二足で立ってたけど、第七世代は何で二足で立ってたんだ? なんたらキャットか?」


「ミーヤキャットではない。立ち上がるのに尾を軸にして3本足にしているのではなく、第七世代が立てるのは鳥と一緒だ、尾羽ではないが尾で重心のバランスをとることで二足で立つことができる。それとその状態で歩くことのできる強靭な足は、4足と2足の両方の状態である程度の行動をさせることができた。毒などの力を持たない代わりに地を蹴り壁を上る筋力はすごくて、小型の生体兵器なら複数隊相手どるほどのスペックがある」


 生体兵器の話となり饒舌になるユユキ。

 いつしか怯えていた冷静さを取り戻し白衣の女性も呆れている。

 しかし、すでに階段を上りったり下ったりし生体兵器に襲われ、身体的にも精神的にも疲弊しているため非武装の二人の足取りはすごく重かった。


 もうすぐ上の階にたどり着くというところで先頭を歩いていたチヤが後方へと腕を伸ばし、後から続くユユキたちを止めた。


「ストップ」

「どうした?」


 マホロがユユキたちを挟んでチヤに尋ねる。

 暗く薄暗い場所で立ち止まっているとどこからほかの生体兵器が襲ってくるのかわからないので進むか戻るかしたいユユキたち。


「さっきより音が大きくなっている?」

「音?」


「聞こえない? ゴンゴンって重たい音同士がぶつかる音、エレベーター動かしたりしてないよね」


 ユユキは首を振る。


「そんなはずはない、エラーでどの操作も受け付けないし勝手に動くはずもない」

「じゃあこの音はなんなの」


 チヤに言われユユキたちが黙り込み耳をすませば、同時に下方から金属の拉げる音。

 後ろを振り返れば今しがた上ってきた階段が下から崩れ、外れた鉄板が宙を舞って落ちて行っている。


「なに!?」

「何事!」


 4人は暗い縦穴の下に目を凝らす。

 ゆっくりと動く大きな影。

 巨大な昆虫型の生体兵器がのこぎりのようなギザギザの6本の脚を動かし上を目指して歩を進めていた。


「下すぐんところに、どすこい!」

「すもぅ……もう好きに呼んでくれ」


 チヤとマホロは何を言うでもなく同時にエクエリを真下へとむけ攻撃。

 大型のエクエリの強力な一撃を受けてもひるむことなく歩を進める。

 一歩足を進めるたびに階段が何段も外れた。

 スモウの大顎が進路場の邪魔となる障害物を破壊し壁と階段との接続部が拉げ外れ、階段は傾きながら宙へと浮いていく。


「このままだと、階段ごと下まで落ちる! 早く上に!」

「急いで!」


 階段の破壊に伴って大きく脆い鉄パイプの通路が揺れる。

 壊れるたびに大きく揺れ手すりに摑まっていないと振り落とされそうになりユユキとナユタが悲鳴を上げた。

 エクエリの攻撃も一、二発程度では大型の生体兵器をしとめるとこはできず、大顎の先と体の一部に大きな穴をあけるにとどまった。


「逃げないと、このままじゃ階段が落ちるぞ。これは邪魔になるか……」


 揺れる通路を進むには邪魔になる超大型のエクエリを捨てマホロは階段を駆け上がる。

 手すりに摑まって動けない二人をエスコートするように上らせ先に上の階についたチヤと合流した。

 持ち主から離れた超大型のエクエリは階段を滑っていき、下にいたスモウにぶつかって縦穴の底へと消えてく。



 ユウゴとリクコウが時間を稼ごうと残っている下の階で第七世代と対峙するサンドスピーカー。

 行動を制限され倒れていても第七世代は床を蹴り壁を蹴りサンドスピーカーを壁にぶつけて締め付けが弱るとすり抜け食らいつく。


「このまま、戦っているようなら我々もそろそろ上に上がりますかな」

「まぁそうした方がいいですね、このままここに残って戦ってもいいのですが」


 そっと気配を消し階段のほうまで下がってくると、そこには巨大な大顎が見えた。

 階段を登ろうとした二人が驚愕する。


「なんだ、これは?」

「逃げた生体兵器のようですね、階段が破壊された追いつけなくなりました」


 赤い関節の黒い巨体はユウゴたちに目もくれず上を目指す。

 とりあえずサンドスピーカーたちの刺激にならないようにスモウから離れ距離を取り、小型のエクエリを構え大型の生体兵器の関節部へと攻撃する。

 関節部は小さなダメージでも大きな効果が得られるが、やはり小型のエクエリでは外骨格に小さな穴しかあけられず大した効き目はなかった。



「これ上る前に足全部もぎれるますかね?」

「むりそうですな、後ろを」


 リクコウに言われユウゴが振り返れば戦闘音を聞いて集まってきた蛙型の生体兵器、ロイアルポイズンの姿があった。

 先ほど出会った時より一回り以上大きくなっており頭のてっぺんは天井すれすれの場所にある。


「先ほどとは雰囲気が違いますな」

「ああ、これは危険な状態だ。ハハハハ、いい、すごくいい」


「ユウゴ殿はスイッチ入ったようで」

「退路はない、ここに見える三匹、皆倒しますよ」


 すでに背後にスモウの姿はない。

 目の前に立ちふさがりロイアルポイズンの赤く血走った眼は二人の精鋭を見据えている。

 後ろで戦っている二匹の生体兵器には目もくれず、まっすぐユウゴたちのほうへと歩み寄ってきていた。

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