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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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油断、2

 道路にまで散らばった瓦礫をよけながら一同は廃墟を進む。

 瓦礫や道路の間から細い木々が伸びていて、半壊、全壊の建物が多い中、コンクリート製の建物はひび割れや傾き程度で収まっているものが多かった。


「これは隠れようと思えばどこにでも隠れられそうだな」


 トウジが両脇に見える瓦礫の山を見てつぶやく。

 崩れた建物の下に潜り込んでいる可能性を考え、遠回りでも開けた道を選んで川を目指す。


「ここ瓦礫の量多いね、ビルの多い大都市だったのかな?」


 周囲の様子を見て感想を述べるライカ。


「見えました、二時の方向に橋です」


 周囲のがれきや動くものに気を付けていた他のメンバーより、中心にいた先にトヨが目的地への手がかりを見つける。

 倒壊した建物のはるか向こうに半壊したアーチ状の物が見えた。


「左、400メートル先、水色の建物の壁に動物型、爬虫類です」

「こちらに気付いた様子は」

「とりまありません」


 ライカの発見した生体兵器は灰色のトカゲのような生体兵器で、色あせた水色の建物にへばりついていて、1,2メートルの爬虫類の姿がくっきりと形が浮き出ていた。


「トハル、ここから頭狙えますがどうします」


 腰を下ろして大型のエクエリを構えると水色の建物を狙う。

 多少距離は離れているが、トヨは一撃で仕留める自身があった。


「今はいい。消音とはいえそれの音は響く、目標が優先だ。撃つのは戦闘を避けられない時だ」

「わかりました」


 トキハルに止められ、トヨは素直に構えたエクエリを下ろして再び担ぐと、生体兵器を無視して廃墟を進む。

 歩いていると周囲の景色が変わり、今歩いている廃墟は住宅街だったようで一階の潰れた二階だけの建物や子供がいたであろう遊具の残骸などがあった。


「前方、100メートル先、土手がある。手前に大きな道路」

「その向こうが川ですね」


 トガネの報告に携帯端末に映した地図を見て答えるトヨ。

 どこまで行っても木と瓦礫の土地は途中で途切れ、正面に緩やかな傾斜のついた緑と黄色の壁が見えた。

 枯草とまだ枯れていない草に覆われた土手の先に蜥蜴型の生体兵器がいる。


「右、500メートル同じく爬虫類、無視する。シジマ、さっきのやつは灰色の体だったか?」

「はい、そうです」

「同じ型だ。この辺多いぞ、戦闘時集まって来て乱戦になる覚悟をしておけ」


 こちらも発見しやすく、茶色い建物に灰色のトカゲがくっついていた、先ほど同様建物にへばりつく生体兵器を無視して廃墟を進んだ。


 ぽつりと冷たいものが5人の額に当たる、触れてみるとすぐそれが水滴だとわかった。


「降って来たな」

「そうですね」

「まじかー」

「あの廃屋で一度休憩する」


 土手の手前には2車線の道路があり蒼薔薇隊はその更に手前のレストランだった廃屋の中に入った。

 すでに雨は本降り気味となっていてあたりの音をかき消していた。


 建物の中は、内装はほとんど腐っておりかび臭いにおいがした。

 大きな窓はすべて割れ朽ちたテーブルなどが見える、天井の一部は崩れ中から空に向かって細長い木が生えている。


「戦闘はここの駐車場で行う。トヨはトウジとこの建物の中で身を潜めて居ろ。戦闘開始時に建物内からこちらを援護だ」

「わかりました、そうします」


 トキハルの指示に短い返事で返すトヨ、続いてライカに指示を出す。


「シジマ、ここに荷物を置いて土手の上を見てこい。そこで見える物はすべて報告しろ。報告が終わったらムギハラと合流だ」

「はい」


 トキハルの指示に返事を返すと、一同は同時にリュックをおろし、腰につけた鞄を外して身軽になるとライカは屈伸など準備運動を始めた。

 準備運動をしているライカを放置し四人は腰を下ろすとトキハルがリュックからタブレットを取り出し、この場所の地図を映し出して全員が見える場所に置く。


「ムギハラはシジマが戻り次第、駐車場の向こうで待ち伏せ。ハシラは建物内部の安全ができ次第ライカと交換、もしターゲットが単独でいれば引き連れてこい。その後、俺と合流だ、駐車場に入り次第攻撃を開始する。報告より数が多い場合、別の生体兵器が居る場合はまた別の作戦を立てる」


 トキハル以外の全員が「了解」と声を合わせ返事をする。


「ライカちゃん頑張ってね」

「無理はすんなよ」

「危ないと感じたらすぐ戻ってきてくださいね」

「いつも通りだし、楽勝」


 トヨとトウジに向かってVサインで答えるとエクエリを構えて、ガラスの無い窓の外に見える土手を見た。

 雨の中姿勢を低くして制服が濡れるのが嫌だったが、手っ取り早く済ませてしまおうと大きく深呼吸をして気合を入れるライカ。


「雨で冷えたら、俺っちが温めてあげるから」

「先輩キモっ」

「気持ち悪いです」


 トガネがいつもの調子で軽口をたたくと、ライカとトヨが同時に身を震わせた。


 雨で気分が落ちているのかいつもはスルーするトヨまで反応をして、少しばかり大きく反応をして見せるトガネ。


「作戦は昨日の通りでいく、何か質問はあるか?」


 トキハルの問いにライカが手を挙げた。


「なんだ?」

「いっそ、トガネ先輩を生贄に生体兵器おびき出しませんか?」


「無いようだな。では解散」


 解散後、トガネはレストランから出ていき周囲に気を配りながら雨の中、駐車場の向こうに消えていく。


 少したってライカはリュックから取り出した彼女の背丈だと膝下くらいまであるフード付きの迷彩柄のマントを被って準備が整うと彼女も外へ出て行った。


 雨はいつの間にか本格的な本降りに変わり、レストランの穴の開いた天井から雨水が滴っていた。

 この雨が自分たちの臭いを消してくれる味方となるか、生体兵器の接近を隠す音を掻き消す敵となるか。

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