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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 2

 生体兵器でないとわかるとマホロとチヤはとっさに向けたエクエリを下ろす。

 ナユタはユユキを見つけると飛び掛かるように押し倒し、抱きしめながらすすり泣く。

 たった一人エクエリも持たずに隠れていた女性はその恐怖から半狂乱状態。

 背中をさすりながら彼女に怪我がないことを確かめると、ユユキは赤く濡れたナユタをおこす。


「い、痛い、苦しいから、離れて。あなたこんなところで何しているの? 避難は、他には誰もいないの、なんであんなところに入っていたの?」


 ナユタは少しずつ落ち着きを取り戻し、ここに来た経緯を話しだした。

 話を聞いている間、チヤとマホロは壁全体にあるモニターを注意深く片っ端から見ていき、逃げ出した生体兵器が映らないか探している。


「隔壁が降りて閉じ込められて。なんか突然のことで、一緒にいた一般兵にここへの扉を開けてもらってたんですが、途中で、生体兵器が……ブレイクタイラントです、あれが私の護衛を……なんなんですかあれ、一方的でした。12人いたのに、だれも!」


 白衣の女性は少し前の出来事を思い出し身を震わし、すこし過呼吸気味になると身長も年も下のユユキが慰めチヤの残りの水をもらいそれを飲ませた。


「それでもあなたが無事でよかった。一緒にここを出ましょう、黄薔薇隊に任せておけば安全に外へと出られる。一般兵のことは残念だけど、だからと言ってここで私たちが死ぬ理由にはならないもの。さぁ、自力で立って歩いて」

「他の人は」


 白衣の女性のぽつりとした言葉にユユキが固まる。


「他? 上はまだ混乱しているみたいだけど、階段上ってる最中に連絡を取ったら、職員皆集まっていまサーバールームへと向かってるって。強制終了すればこちらに操作権が戻ってくる、そすればドームから出られる。そしてマホロたちがドームにいる生体兵器をみんな排除するわ」

「違います、他の階の作業員のことです」


 白衣の女性の言葉にユユキの表情が変わった。


「ちょっと待って、下の階の研究者はすでに避難しているんじゃないの?」

「ここでの作業員は誰も避難なんかしていません。メンテナンスの間、最下層に降りないように作業を続けていました。今日の予定でもその予定でした」


「いや、でも。誰もと会わなかったし、なんかあったときのセーフティールームに逃げ込んだじゃない……か」


 並べたられらモニターにはセーフティールームの映像も映っている、しかしどこにも人は移っていない。

 ユユキがコントロールパネルを操作するが反応はなかった。


「録画が壊れていなければ……」


 その後を続けようとして口ごもるユユキ。

 話の続き続きは研究員がどこに行ったかではなく、生体兵器に食べられる光景が見れるとしか続かない。


「しかし、地下で働いていた人数は決して少なくないはず。それだけ大ぐらいな生体兵器なんているの?」

「そんなこと知らないです。ここに逃げてくるのがやっとでしたから、離れないでください」


「必死ね」


 もう一度二人場無事を確かめ合うように抱きしめあう。


「ユユキ、きて」


 チヤに呼ばれユユキは振り返る。

 彼女はたくさんあるモニターの一つを指さし尋ねた。


「このカメラはどこ?」

「それは二つ下の階」


 カメラには先ほどであった蛇の生体兵器、サンドスピーカーが映っている。

 画面にはどこかの部屋の研究用の薬品漬けにされた生体兵器の部位をガラスの瓶を割って食べていた。


「急いだほうがいい。下のやつも結構すぐそばまで上がってきてる、今のところほかの生体兵器は映っていないけどこいつが最初じゃないとおもうし」

「確かに。じゃぁ、そろそろ行こうか、チヤ、ユユキさん、それとそっちの人、ここから出る早く上に行こう。で、どう行けばいいんだユユキさん」


 眼鏡を上げた姿勢のまま固まり、真剣な表情でユユキはたくさんある画面の中の真ん中に集められた多角度からの映像を見ていた。


「ユユキさん?」


 呼んでも返事がないためそばによってもう一度呼びかける。

 少し驚きながらも彼女はマホロのほうを振り返りすぐにモニターへと向き直った。


「ごめん、闘技場の様子を見ていたの。ここには生体兵器はいないみたい、床も大型の生体兵器が暴れることを考慮して丈夫に作ってあるから天井をぶち抜いては来れないみたい。闘技場まで行けば生体兵器が待っていることはなくなるはず」


 マホロとチヤに促され部屋を出て上ってきた階段を一階分降り通路に出た、通路は相変わらずのスプリンクラーの雨。

 ユユキとチヤは肩を落とす。


「またこの中を歩くのね、うんざり」

「滑りやすくなるし体温も奪われ視界が悪くなるけど、悪いことばかりでもありません。臭いがかき消せますから、生体兵器待ち伏せするならぎりぎりまで気が付かれないことが多い」


「逃げている現状それは必要ないことだと思うけど?」

「匂いが散って追跡もできないから偶然出くわさない限り生体兵器に見つからない」


「それで、どっちに行けばいいユユキさん?」

「闘技場へ生体兵器の入った部屋を持ち上げるエレベーターがあるのはさっき言ったよね、この階にはその作業をするためエレベーターに触れられる点検用の通路がある。部屋がない場合そこから出入りができるからそこに行くの。道もこのまままっすぐ進むだけ」


 モニター室の映像を見る限り下の階にはサンドスピーカーがいる、黄薔薇隊はエクエリを構えたまま歩く。

 移動の際は構えていなかったマホロとチヤも銃口を上に上げたままゆっくりと進む。


「も、もう少し早く歩けませんか」


 挙動不審でユユキの肩を握るナユタがチヤに尋ねる。


「構えると重心上に来てふらつくんだよね。私は兄貴に合わせてるだけだけど、兄貴は重くて本当にこれ以上早くは移動できない」

「そうですか……」


 そう呟くと彼女はユユキを盾に通路を進んでいく。

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