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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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糸の結界 1


――


 隔壁を破壊しさらに進もうとするフォードキャンサーへと第七世代は4足で駆けとび上がる。

 スプリンクラーの水音で接近に遅れ、第七世代が甲羅に乗ってから気が付く。

 フォードキャンサーは身を揺らし振り払おうとするがその爪は、溶岩の岩のようなひび割れた甲羅に食い込み離れない。

 棘のついた尻尾を甲羅に打ち付けてもダメージが入った様子はなかった。

 第七世代が離れないとなると甲羅ごと壁に押し付けようと後ろに下がる。

 しかし巨体ゆえのゆっくりとした動きでその間に第七世代は頭へと周り前足の爪と後ろ脚の爪を食い込ませその殻を割ろうとした。

 第七世代の全力を出してもびくともしない丈夫な甲羅。


 頭に回った大きな腕についた小さな鋏で振り払おうとしたが、その時には既に一本無い脚の方向へと回る。

 体と太く長い脚の間に爪を食い込ませ、体のほうを足場に関節部にできたエクエリの攻撃痕に噛みつき力任せに引っ張った。

 脚を引かれつるつるの床と溜まった水に滑りバランスを崩すフォードキャンサー。

 レールに足を引っかけ床にバランスを崩しても倒れはしないものの、力任せにその巨体が引っ張り続けエクエリの攻撃を受け脆くなっていたその足は根元から千切られた。

 二本の脚を失い何をするにも行動に難が出たフォードキャンサー。

 第七世代は床を転がり滑りながらも、もぎり取った脚を噛み砕き中身を食す。


 床に降り脚を食している第七世代目掛けフォードキャンサーは鋏のついた腕を振り回した。

 動きこそ遅いものの範囲と威力はすさまじい、他の生体兵器が歩いても傷一つつかない床に抉るような傷をつけながら迫る巨大な腕を躱す。

 第七世代の食べかけの脚は通路の端まで滑って壁に当たって止まる、第七世代硬い甲羅には目もくれず脚に狙いをつけ再度飛び掛かった。

 フォードキャンサーの流れでる体液は排水溝へと流れていく。


――


 上の階を目指すユユキたちは階段を上り切りエレベーターの先にある鉄の扉、胸ポケットから鍵を取り出し扉を開ける。


「おおアナログだ」

「ここには生体兵器こないし必要ないから。本当にメンテナンスに合わせて地下から人払いしていて良かった」


 チヤが部屋の中の安全を確かめ中へと入っていく。

 無人だが機材は動いていた。

 部屋の中はいくつものモニターがタイルのように並べられ、モニターのない部分は大型の機械が並ぶ。


「さて。生体兵器と遭遇せずまっすぐ上がってくることができたけど、ここはまだ地下なんだろユユキさん?」

「一応は地下2階というくくりよ、地下一階の闘技場から結構深いところにあるけど。そういう意味では出口は近いわ」


 部屋には入ってきた以外に出口はなく、部屋の外には業務員用の小さなエレベーターがありユウゴとリクコウは階段の下を見張る。

 ユユキはマホロたちと部屋の中央にあるテーブルのような大きな操作パネルのほうへと歩いていった。

 周囲を見回しマホロが尋ねた。


「ここは、何の部屋なんですか?」

「地下側の生体兵器の入った部屋を運んで闘技場に上げたり、観客席に生体兵器が行かないように隔壁を閉めたりする場所、モニター室だよ。この操作は観客席側でもできるけど、非常時どうなるかわからないから何か所か用意しておくものだろ……とはいってもここもサーバーの影響で操作を受け付けてはくれないみたいだけど」


 モニターは生体兵器の入っていた部屋の様子を映していて、ユユキが机と一体化しているコントロールパネルを指でなぞったりボタンをいくつか押してみるが何かが変わる様子はない。

 チヤはびっしりと敷き詰められたモニターを見ていた。


「上げるって、また別にエレベーターがあるの?」

「あるけど下の階からは操作できないし、ほとんどワイヤーを引っかけて吊り上げるクレーンみたいな仕様で、どのみち人を乗せるにしても、操作するのにここまで上がってこないといけない」


「ねぇ、ユユキ。このモニターって動いてる?」

「たぶん今のリアルタイムの映像のはず、録画はできていないけど……ああだめだ、角度の操作も受け付けない」


「だとすると第七世代は移っていない感じ?」

「そんなはずは、カメラが壊れていることはあっても映っていないことはないはず」


 カメラに映る部屋の様子を見るどれの例外なく生体兵器などおらず空っぽで同じ景色が映されている。

 その画面をユユキはひとつづつ指差しで確認していく。


「逃げた、第七世代もにげた」


 青ざめた顔で最後の画面を指さし終えたとき彼女の指は床を向いた。

 生体兵器が逃げた時点ですべて逃げるであろうと想定していた黄薔薇隊は衝撃が薄くそこまで驚くものかとユユキのショックを受けた様子を見ている。

 逃げた第七世代のことでユユキが騒ぎそれを階段側を警戒しながら聞いていたユウゴがつぶやく。


「だったら、もう少し待っていれば戦えたのですね」

「やれやれ、ユウゴ殿にも困ったものだ」


 唐突に部屋の端のロッカーが開かれる。

 全員が驚き交じりに振り返ると頭の先からずぶ濡れの赤く染まった白衣の女性が現れた。

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