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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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幕が開く 10

 生体兵器を警戒しながら歩いていた時、一つ天井に大きな穴が開いている部屋があった。

 逃げた生体兵器の一匹が破壊した後の用で一同は部屋に集まる。

 多くの機材が横倒しになり部屋の中は荒らされ生体兵器が通った後は荷物が隅の方に寄せられていた。


「少なくとも真上に生体兵器はいないようです、何が通った後でしょうか」

「ここを登れば生体兵器が道を作るまで待たなくても上に行けそうですな」


 ユウゴとリクコウがエクエリを構えて、床に落ちている瓦礫をよけ穴の真下まで向かい上の様子を確認した。

 部屋のスプリンクラーは壊れていて、代わりに上の階のスプリンクラーの水が垂れてきている。

 上の安全を確保するとリクコウが手招きしユユキたちも穴の下までやってきて、周囲を見たチヤが部屋の隅を指さす。


「そこらにあるテーブル寄せる?」


 テーブルは大きく一人では持ち運ぶには辛そうだが3つほど重ねることができれば、上の階に手が延ばせそうだった。


「そうだな、ユウゴさんは上の警戒。リクコウさんは通路を見ておいてもらえますか。ユユキさんは部屋の奥へ、入り口近くにいると危ないから」


 マホロの指示で今歩いて来た通路側に移動しようとしているとユウゴが意見を挟む。


「リクコウ、少し手伝ってもらえませんか?」

「何をする気かな」


「上に」


 そういってユウゴは天井の穴を指さす。


「やれやれ、了解した」


 そういってユウゴは屈んだリクコウの手を借りて組んだ掌の上から肩に足を乗せ、マホロに抑えられながらリクコウを踏み台にするように飛びあがり、そのまま天井につかまるとそのまま自分の力で上がり切った。

 ユウゴを上の階にあげリクコウが部屋の入り口へと向かう。


「おお、すごい、精鋭……運動能力が高いのは知っていたけど、イベントで見るチアリーディングのようだった」

「楽しんでもらえて何より。でも残念ながら上がった先で足を滑らせ着地は失敗しましたけどね」


 ユユキがその様子を見て感想を漏らすと上の階から返事が返ってきた。

 マホロとチヤが部屋中に転がっているテーブルを集めピラミッド状に積み上げていく。


「できた、上に行こう。ユユキさんは俺が支えますからゆっくりで大丈夫です。水で滑りやすいからしっかりつかまって」

「ところであの大型の生体兵器は放って置いてよいのですか?」


 チヤが上の階に上がり続いてユユキが上から手を引かれマホロに押し上げられ上の階に上がる。

 残ったマホロのリクコウが話しかけた。


「あの巨体、重量もそこそこあるだろ。どうせ地上には上がれない、最後に戦車連れて一気に力押しで倒せばいいと思うんだけど」

「ま、それもそうですな」


 そういって二人も上の階に上る、上の階は広く大型の装置が並ぶ部屋だった。

 素人目には何に使うかわからずマホロがユユキに尋ねる。


「ユユキさん、この階は何をする階ですか?」


 再びスプリンクラーが止まり急に静まりかえった室内でたじろぎユユキが少し口ごもる。


「……薬品実験」


 地下に降りてきた時点で他の階のことは教えなかったことから、この階から上には何かしらのことがあると皆察する。

 ユウゴが部屋の外を出て通路の様子を確認しに行く。


「皆さん、行かないのですか? 早く出口を探しに行きませんか?」

「ユウゴさんは出口じゃなくて、生体兵器を探しているのでしょ?」


 軽く笑って部屋を出ていくユウゴ。

 5人が通路に出ると奥の方からガラスの割れる音が聞こえ、顔を見合わせたのちユウゴとリクコウを先頭に音の聞こえるほうへと歩いていく。


「人ではないよな」


 音の聞こえる部屋の前まで歩いていくと、そっとリクコウが携帯端末をカメラモードに切り替え部屋の中を覗いた。

 部屋の中では生体兵器が薬品の入ったガラス瓶を噛み割っていて中身を余さず飲み込んでいく。

 倒れた薬品棚で部屋は砕けたガラス片で満たされている。


「一匹見つけた」


 写真を撮りマホロたちに見せた。

 ぬらぬらとした深緑色の大きな丸い体の背にぶつぶつと鮮やかな赤、蛍光色の黄緑、半透明な青などのできものができている。


「背中のあれ卵じゃないよね」


 チヤがユユキに尋ねる。


「ロイアルポイズン、逃げた生体兵器。あの腫物すべてに毒が詰まっている。研究用にいくつか摘出したがどれも強力な猛毒だ、生体兵器もある程度の毒には耐えられるが量や質によっては殺せる。あれは対生体兵器用の生体兵器だ」

「毒餌としての生体兵器……か」


 すこしテンションの上がってきたユユキの返答にチヤが感想を漏らす。


「炸裂式榴弾だと毒がその辺飛び散りそうだな」

「普通に通常弾でいいんじゃない、ちょっと時間かかるけど毒飛ばされて失明とかしても嫌だし」


 打ち合わせをして一斉に部屋の入り口の前に立つと黄薔薇隊はその巨体を撃つ。

 撃ちこまれたエクエリの弾、おおきな体に次々と穴が開く。

 動く暇すらなく穴だらけになっていく生体兵器、そこで一同目を見開いた。


「傷が……」

「回復した?」


 エクエリの撃ちこまれた穴が古い順からみるみる修復されていく、穴の周囲の肉が急速に増殖し開けられた傷をいやす。

 攻撃を受けガラス瓶を食していた頭が体ごと振り返り赤い眼球がユユキたちを見た。

 敵を発見しロイアルポイズンはすぐに背中をマホロたち向け縮こまる。


「隠れろ」


 嫌な予感を感じ取ったマホロの声とともに部屋の外へと逃げ扉の影へと駆け込む。

 大きな体をできる限り体を小さく、筋肉を引き締め内部の圧力を高め体にある肉を絞る、背中のできものすべてから毒液が飛ばされた。

 ゲル状で壁や天井に張り付き少し遅れてから床に落ちてくる。


「何だあれ、どうなってんだユユキさん!」


 エクエリに開けられた傷は完全に治り逃げるようにロイアルポイズンは移動を始めた。

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