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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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幕が開く 9

 ユユキたちのいる隔壁の向こうから光の弾が飛んだ。

 弾は水滴を蒸発させ白い線を作って天井まで飛んでいく。


「戦闘始めちゃいましたよ、ユウゴさん。兄貴、どうするん?」

「そうだなー、向こうの部屋に行ってくれないと事情を説明できないし、しばらくは放って置くしかないよな。さすがにユウゴさんなら死なないと思うし」


 チヤとマホロが細い通路を出てレールのある広い通路に出る。


「すごいよね、たぶん死なないで片づけられる人。心配とかしないもんな」

「実際、戦闘経験なら俺らより上だし。あの人の心配するなら一人で災害種と戦い始めたらだろ」


 フォードキャンサーは隔壁の向こうからの攻撃に応戦するように鋏を震わし、その巨体を隔壁の向こうへと向かおうとしていて後ろにいるマホロたちに気づく様子はない。


「どうやら合流は、少し後になるようだ」


 リクコウの言葉に二人は振り返る。

 通路の奥に動く影。

 スプリンクラーの水のせいで形はぼやけ、なんだかわからないが動きからして人ではない。

 ユユキのもとへと戻ってきてマホロが彼女の前に立つ。


「ユユキさんはも少し後ろへ。でも下がりすぎないで、あのでかい蟹に見つかるかもしれないから」


 バガンという音とともに背後でフォードキャンサーが壁の向こう側へと吸い込まれるように消えていく。

 乗り越えた先でユウゴに足を一本おられバランスを崩し滑ったためだ。

 大きな音は隔壁に体がぶつかった音。

 地面が揺れた。


「大型の生体兵器相手に一人で善戦してる……ぶっ飛んでるな」


 大きな音に反応し細い通の影がこちらへと向かってきている。

 人か生体兵器がまだ判断着かないことから、マホロたちはエクエリを構えたまま動かない。


「どっちだと思うチヤ?」

「生体兵器一択でしょ、人だったらなんかしら声かけてくるっしょ」


「まぁ、そうだろうけど」

「ほら来た」


 水のカーテンでぼやけていても近づいてくるにしたがって相手の形が次第に鮮明になっていく。

 それは脚が大きく折りたたんだ前脚が2本、歩くための脚が4本ある生体兵器だった。


 人でないとわかると何も言わずチヤが先に撃ち、マホロが続く。

 首が飛び体に大穴が開き、通路の壁に寄りかかるように崩れ倒れた。


「お二人ともお見事。これで逃げ出した生体兵器二匹目ですな、あと何匹残っている?」


 戦闘に参加しようと構えていたがマホロたちの攻撃を生体兵器はよけることなく命中し、そのまま倒したためリクコウは警戒を解いてエクエリを下ろしユユキに尋ねる。


「後ろのフォードキャンサーを入れてあと9匹だ、全部逃げているとしたらだけど。……今倒したのを確認したい、マホロ連れてって」


 その数に第七世代は含まれていない。


「任せろユユキさん。しっかり守って見せる」

「見たところほかに生体兵器いないし、守るも守らないもない気がするぜ、兄貴」


 チヤをその場に残してリクコウを先頭にマホロとユユキが倒した生体兵器を確認しに向かう。

 スプリンクラーの水のせいでそばまで寄らないとかの姿の判別は難しい。

 マホロが超大型のエクエリでつつき、生体兵器が完全に死んでいることを確認してからユユキが前に出る。

 白い体に黄色い斑点のある蟷螂。


「形と色からツジギリだな、運び込まれた生体兵器の一匹だ……」

「逃げ出して通路を破壊しながらここまで来たか」

「守っていた一般兵は、また全滅か」


 ツジギリの鎌には衣服の切れ端と血がついていてそれを見たユユキがまた暗い顔をする。


「ユユキさんのせいじゃないって、機械のトラブルかなんかなんだろ」

「サーバーに何らかのエラーが発生してドーム内のすべてを管理していたものが暴走状態にある」


 落ち込むユユキにマホロが声をかけた。


「直るのか?」

「取り替えるかプログラムしなおすか、何にしろ一度強制終了させないと難しい。上と連絡したところこのドームから出ることもできないらしい」


「じゃあ向かう先はサーバールームか」

「マホロ、そこまでの護衛をお願いできる?」


 もちろんと答えツジギリの死骸から離れチヤのもとへと戻る。


 待機を命じた場所にチヤはおらず、彼女は破壊された隔壁の陰からフォードキャンサーを攻撃していた。


「チヤ、何してんだ」

「兄貴、ユウゴさんの援護。こっちに呼んで合流しないと、ユウゴさんこのままだと倒しちゃうぜ」


 隔壁の向こうでユウゴは大型の生体兵器相手に一歩も引かずに小型のエクエリで戦い続けている。

 リクコウが携帯端末でユウゴと連絡を取り事情を説明した。

 すると、ユウゴはフォードキャンサーに踏みつぶされないように大きくよけながら隔壁をよじ登り、チヤと合流してマホロたちのいる通路へと逃げ込む。


「やぁ皆さん、無事で何より。いやいや、まさか生体兵器に道を作らせているとはいざ知らず、倒してしまうところでした」


 ユウゴは息を切らしながら黄薔薇隊の無事とユユキの無事を確認する。

 戦闘後の彼は笑っていた。


「そっちも、一人で大型相手にお疲れ様ですな」


 リクコウが少しあきれた様子を見せながらもねぎらう。

 戦果はフォードキャンサーの脚一本を付け根から破壊、ちぎれた脚から体液が流れ出ておりスプリンクらによって洗い流されている。

 細い通路まで逃げ込みフォードキャンサーの視界から完全に消えて、ユウゴがバッテリーを取り換えるのを待ってから一同は細い通路を進む。


「私のいないところで生体兵器と戦ってましたね?」


 ツジギリの死骸の横を移動している最中に死骸の破損具合からマホロたちが倒したこと悟ったユウゴがつぶやく。


「今さっきだよ、ユウゴさんがデカいのの脚もいでたころ」


 大型のエクエリを構えたまま進むチヤが楽しそうに続ける。


「兄貴、ここで待ってても時間かかりそうだから、他の生体兵器探しに行くんでしょ」

「そうだな、この階にもまだいそうだし探す。ユユキさんの安全のためには動かないで生体兵器が現れたら倒せばいいだけなんだけど」

「安全確保のために戦うのです」

「ユウゴ殿はぶれないですな」

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