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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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幕が開く 8

 なにも変化のない隔壁に隔離された通路。

 スプリンクラーの誤作動で高い天井から大量の水が降り注ぐ。

 ひとり残ったユウゴは小型のエクエリを両手に持ったまま立って生体兵器のいる部屋の扉を見続けていた。


「第7世代……戦ってみたいのに一向に開きませんね。やれやれ、待っているの飽きてきましたよ」


 今まで生体兵器が部屋を壊して出てこなかったのは部屋の丈夫さと定期的に投与されている睡眠薬と睡眠ガスの影響だった。


 ――しかし一度止まりはしたものの、やむ気配のないこのスプリンクラーはどこから水を? 地上のあの大きな水たまりすべてここに流しているってわけじゃないでしょう?


 撒かれている水が凄まじい雨音に似た音を立てている中、水音に紛れて重たい音が聞こえる。


 ――おや、近くで戦闘しているようですね? マホロたちか?


 ユウゴは音の聞こえた気のする隔壁のほうへと歩いていく。

 隔壁に手を触れ耳を近づけようとすると隔壁の向こう側で何かがぶつかる音が聞こえ後ろに下がる。

 直後濡れた隔壁が振動で飛沫を飛ばし並みの力ではびくともしない隔壁の一部が変形していた。


 ――何かがこちらに来ようとしているのか。この向こうへ行ったマホロたちはどうなったのやら、なんであれここが開けば様子を見に行けることでしここを壊した生体兵器とも戦える。だとしたら早く開けてほしいものですね。


 ユウゴは隔壁から十分距離を取り、その分厚い壁が破壊される時を待った。



 フォードキャンサーは隔壁を破壊しユユキたちのほうへと入ってくると次の隔壁を破壊し始める。


「ユユキさん、ユユキさん。どうしたんだこいつ?」

「たぶん外に出ようとしているんだと思う。もとはこいつの住処は山だった、居心地が悪いんだろう、生体兵器はそれぞれ地形や気温に左右されて戦闘力が変わる。自身の最も力のふるえる場所へと帰ろうとしているんだとおもう」


「そのために蹴区壁を破壊して道を作っているのか」

「壊したところで一周するだけなんだけど」


 ブロックトードの破壊した細い通路に逃げ込み様子を見ていた一行はスプリンクラーの大雨で視界が悪くなったこともあり、一度攻撃を加えたにもかかわらず生体兵器に発見されることなくやり過ごしていた。


「兄貴、こいつこのまま放って置いたらエレベーターのところまで行けるんじゃね?」

「確かに、気づかれないようについていくか?」

「忘れていないと思いますがあの先にはあのユウゴがいるのですよ。放って置くと、この壁の向こうで勝手に戦闘と挑むと思うのです」


「確かに、ユウゴさん大型でも一人で戦いそう」

「流石に倒せない相手に戦いを挑むことはないと思うけど……まぁあの人ならこの手の生体兵器なら倒し方わかってるだろうし、戦い始めるか……な」

「彼なら間違いなく戦いますな」


 黄薔薇隊は雑談を交えながらフォードキャンサーの通ってきた破壊された隔壁の向こう側と、倒したブロックトードの逃げていった細い通路の先を警戒している。

 今のところ大量の水で視界の悪い中見えるものはない。


「倒せるのか? あれを」


 マホロの袖を引きフォードキャンサーをユユキが指さしながら訪ね、彼は包帯の巻かれたユユキの手を取り答える。


「関節部狙えば攻略できるんですよ。でかい分動きが大きく単調になるし、見ますかユユキさんが応援してくれるなら俺一人で倒して見せますよ!」


 その言葉に嘘や見栄はなく確かな自信があった。


「さすがにそんな無茶はしなくていい、倒せるなら問題はないみんなで万全の状態で頼む」


 生体兵器はフォードキャンサーだけではない、たとえ倒せたとしてもそこで疲れてしまえば後々危なくなる、いいとこ見せようと張り切っているマホロをユユキは止めた。

 しばらくしてフォードキャンサーが次の隔壁が破壊しその穴を広げ始めている。


「それでどうする、倒すのか放って置くのか?」

「現状放置でいいんじゃないの? エレベーター前まで道作ってもらわないと、あの巨体じゃエレベーターにならないと地上に行けないでしょう」

「だとしたら他にも生体兵器が逃げているわけだから、ユウゴと合流してから道ができるまでそちらを探すのですかな」


 リクコウの提案にチヤもマホロもそれに頷いた。


「それがいい、しかし……」


 チヤの言葉が途中で途切れ、そして3人はユユキを見る。

 精鋭でもトップクラスの集まりである薔薇の隊が、特定危険種ですらない生体兵器を倒すことはわけない。

 しかし戦闘力のない彼女を連れて戦えるか、誰も言わなかったが場の空気をユユキが察した。


「私か……」


 戦闘力のマイナス要因と自覚しユユキは自嘲気味に笑い気まずい沈黙にリクコウが口を開く。


「イサリビ嬢、そういえばこの上に上がるときは何を使うのですか? エレベーターはここまで一直線でしたし、他に道もないようでしたが?」

「別のエレベーターと階段がある、地上には通じていないが」


 生体兵器は天井を破壊し上の階に逃げた、もしかしたらそのあとをついていけば地上に出られるかもしてない、そう思って上の階に行く道を聞こうとしているとリクコウの横からチヤが口をはさむ。


「それはどこにあるの?」

「エレベーターのある駐車場の隣だ」


「どのみち、道ができるまで何もできないわけか」


 再び周囲を警戒しフォードキャンサーが隔壁を破壊しつくすのを待つ。

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