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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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幕が開く 7

 チヤが隔壁をエクエリでたたく。

 高い通路の上と左右から三枚の鉄板がパズルをはめるように閉じた隔壁。


「ユユキ、これ開けられる?」


 この向こうには第七世代の扉の前に置いてきたユウゴがいる。


 ユユキが隔壁の開閉装置に近づいていきカードキーを差し込んで、開閉装置に反応はなく隔壁が開くことはなかった。


「ダメみたい」


 そう言いつつ何度もカードキーを開閉装置に差し込み突っ返される。


「見ればわかる。で、どうしたら開けられるの? さすがにユウゴさん一人にいつまでも任せてられないし。逃げた生体兵器を追うにしろ、第七世代を見張るにしろユウゴさんと合流しないと」


 そこへエクエリをしまったリクコウがやってきた。


「逃げ出した生体兵器が何匹かわかったりしませんか?」

「上に確認してみる、カメラも止まっているだろうから期待しないで」


 ふいにスプリンクラーが止まる。

 降り注ぐ水が床に跳ねて霧のように白くぼやけた視界が戻り、周囲は壁や床を伝い排水溝に水が流れていく音が響く。

 皆、天井を仰ぐ。


「システムが直ったのか?」

「いや、一定時間で停止し火が消えたかの確認をする。燃えていた場合また再起動する」


 大量の水を浴びずぶ濡れの制服、吸った水で重くなりいつもより行動が制限される、また少ししたらスプリンクラーが動き出すとわかっていてもリクコウが強化繊維の上着を脱いで制服を絞る。


「ここ地下だからそのうち水没しないだろうな」

「排水はしっかりしている、詰まっていなければしっかり流しきれる。水深が数センチほど溜まれば水量は自動的に弱まるけど、こっちは誤作動している可能性もある」


 そういってユユキが携帯端末をもって黄薔薇隊から離れていく。

 そしてドームの地上階と連絡を取る。


「私よ、ええ無事今はだけど。そんなことより、生体兵器の場所わかったりしない? そう、逃げた。だから場所、わかる? うん、違うおそらく全部。確認はしてないけど、全部だと思って」


 会話の内容は聞こえないがユユキの相槌だけが通路に響く。

 ユユキの通話の様子をマホロとチヤが眺めている。


「助け、間に合ってよかったね兄貴」

「ああ、間一髪のところだった。一度目も道に迷ったら間に合わないところだった」


 バッテリーの取り換えを行うマホロは笑いながら答えた。

 ユユキとブロックトードとの距離はさほど離れていない、後数秒遅ければ加えられたユユキごとエクエリで撃ち抜いてしまう可能性すらあったがどのみち生体兵器に交渉は通じない、生体兵器のキルゾーンに入ってしまった時点で助けようはない。

 そのためユユキの生存確認より討伐を優先した。


「ところで生体兵器の逃げた穴は? どこにも見えないけど」


 通話を終えたユユキがスプリンクラーの止んだ天井を見て尋ねてくる。


「ここじゃない、ユユキさんが連絡する前に別の生体兵器と戦っていた百足のやつだ。助けを求めていたからユユキさんを優先したが。他は隔壁が閉まった後混線する一般兵の無線で聞いた」


 しかしその騒がしい通信ももうない。


 第七世代とユウゴのいる隔壁の反対側で何かのぶつかる音が聞こえた。

 初めは隔壁の向こう側が何かしらの手段でこちら側と連絡を取ろうとしているのかと思ったが、やがて隔壁の反対側が音を立てて変形を始める。


「生体兵器だ」

「次はなんだろ、全部駆除しなきゃいけないんだし。面倒だからお互い潰しあってくれたりしないかな」


 力づくでこじ開けられる隔壁、そこから巨大な大顎が見え隔壁は音を立てて曲がっていく。


「こいつはたしか、ドスコイ!」

「近いが違う、スモウだ!」


 チヤが素早く反応しエクエリの銃身を隔壁の隙間から見える大あごに向け、ユユキが素早く訂正する。

 マホロも同じように行動し二人で大顎を射る。


 高出力の大型、超大型のエクエリを受けておいてあごには深いくぼみができた程度。


「あれ?」

「なんか効き目無い?」


 マホロは急いで弾種を切り替え、チヤとともに破壊されていく隔壁へと近づく。

 3分の1ほど隔壁を剥がしてきたところでマホロたちの2度目の攻撃。

 しかし、期待していたほどのダメージはない。


「チッ、硬い……」


 後ろに下がりながら大型のエクエリを撃ち続けるチヤが舌打ちをし声を漏らす。


「はん?」

「増えた!?」


 エクエリの隔壁の向こうに見えていた大顎が二つに増える。

 皆が大型の生体兵器、通称スモウの大顎だと思ったものは別の生体兵器の腕だった。


「違う、フォードキャンサー!」


 別の生体兵器の名前をユユキが叫ぶ。

 2つの鋏が穴の開いた隔壁の両端を掴み引き裂くように広げ、固まった溶岩のような体の本体が姿を現す。


「イサリビさんこちらへ」

「え、ええ」


 攻撃に参加していないリクコウがユユキを細い通路側へと案内し、マホロがチヤとともにそのあとを追って通路へと非難してきた。


「こんなもんよく運んできたなぁ、部屋の中ぎっちぎちだったんじゃないか。さてどう倒そうか、大型なんて広域燃焼弾で一撃なんだけどなぁ」

「この距離で撃ったら熱で私たち焼けちゃうね、離れていたとしても蒸されるんだろうけど。兄貴、避難しよ」


 超大型のエクエリを持つマホロが隔壁を破り、こちら側に入ってきたフォードキャンサーを見ながら細い通路へ逃げてくる。

 ブロックトードが進むために破壊した扉には破けた戦闘服と肉片、装備の一部が引っかかっていた。


「兄貴、今のうちに目だけでも潰しておこう。炸裂式雷撃弾に切り替えて!」


 床に流れる水の流れが小さくなってきたとき、スプリンクラーが再起動し滝のような水量が天井から降ってくる。

 狙いを定めていたチヤは構えていたエクエリを下ろす。


「これだよ、炸裂式雷撃弾なんか撃ったら私たちごと感電するか……通常弾以外の選択肢がないね。どうする兄貴」

「どうもこうも通常弾と貫通榴弾、振動榴弾、炸裂榴弾これらで戦うしかないだろ」


 どう倒すか少し険しい顔で思案するマホロ。

 ユユキは黄薔薇隊の3人の後ろで隔壁の内側に入ってきた大型の生体兵器の全身を見ていた。


「兄貴それでいいんだろうけど、私のエクエリのスロット、炸裂式雷撃弾だよ」

「厳しいな」


 チヤは弾種を切り替えながら、彼女もしかめっ面で不機嫌そうに答える。


「厳しいよ」

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