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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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幕が開く 3

 ユユキに案内され、黄薔薇隊は一般兵たちとは別の扉へと向かっていく。

 入り組んだ通路を通ってとある施設の中を突っ切り広い部屋に入る。

たくさんのガラス窓、窓の向こうには緑が広がっていた。


「だいぶ、迷宮みたいになってるんだな。迷いそうだ」

「地下もドームと同じように円形の構造をしているわ、出入り口は一つだけど」


 分厚いガラスの向こうに見える小さな子供くらいのサイズのある巨大な芋虫が、音を立てながら一度に多くの量の葉を食べている。


「これが制服の材料の一つ、蚕をベースにした改造生物よ」

「ここまででかいときもいな、これは人を襲うのか?」


「生体兵器との区別化するために、わざわざ改造生物といったんだけど」

「襲わないのか」


「襲うけど、体が軟弱で非武装でも倒せるわ。あくまで糸を生産するだけの生き物、体が脆い分ろくに動くこともできない、繭を作り一生を終えるまで食べて寝るだけ」

「脅威ではないんだな?」


「私でも倒せると思うわ」

「なら脅威じゃないな」


 マホロがそんなことをいいチヤが笑う。

 ポケットに手を入れてついてきていたユウゴが前に出てきてユユキに話しかける。


「イサリビさん、一ついいですか?」

「何でしょう?」


「もし生体兵器が逃げだすようなことがあれば、私たちは倒してしまってもいいのでしょうか?」

「もちろん、下手に捕獲しなおそうとして犠牲者を出すわけにはいかないもの」


「わかりました。なら、まぁ、一匹くらい抜け出して、退屈にならないことを祈るとしますか」


 ユウゴはホルダーにしまったエクエリを撫で、その発言にチヤが笑いながら叱る。


「不謹慎ですよ、クルマキさん」


 施設を突っ切り広い廊下に出た。

 車両が通れそうなほど大きく作られた廊下は緩やかに湾曲していて、床には通路に埋め込まれるようにレールが敷かれている。

 そして壁に埋め込み式の部屋があるようで、レールは各部屋につながっていた。


「ところで、先ほどの施設を横切った理由は?」

「言ったでしょうここは地上ドームと同じで構造が円形の建物だと。マホロにはさっき教えたけど、あの娯楽施設がドームの中心。それをぐるりと囲むように生体兵器が収監されている、第七世代はあのエレベータの入り口からから一番遠い位置にいる、逃げたら一番やばいやつだから」


 地面に埋め込まれている足元のレールをみてリクコウが尋ねる。


「これはレールのようですが、地下は列車でも走るのですか?」

「いいえ、生体兵器を部屋から出して移動させると危険だから、部屋ごと移動させるためのレールよ」


 壁に埋め込まれているモニターには生体兵器の映像と心拍数などの情報が並んで移されていた。

 モニターの前でユユキが止まる。


「一応説明しておくわ、これがリスト。マホロは昨日見たわよね」


 大きなモニターに映される生体兵器たち。

 各部屋の映像のようで室内にある一メートル幅のタイルが描く生体兵器の大きさを物語っている。


 大きさは6メートル前後、尻尾だけでなく体中に生えた深緑色の棘からも毒を分泌するカーキ色の蠍、剣山。


 8メートル前後、長い毒牙と尻尾の先に着いた脱皮殻を震わせ威嚇する赤い鎖模様の体の太い大蛇、サンドスピーカー。


 5メートル前後、分厚く異型に変形した背肉が、まるで亀の甲羅を背負っているようにも見える蛙、ブロックトード。


 10メートル前後、深緑色の巨躯の背中に多種の宝石をちりばめたような輝きを放つ毒袋を持った蛙、ロイヤルポイズン。


 5メートル前後、白と淡い黄色の斑模様の蟷螂、ツジギリ。


 大きな腹に小さな頭、しかし細長い足を入れれば15メートル前後の巨大な漆黒の毒蜘蛛、フォッシルビバンスパイダー。


 6メートル前後、体毛があり8本の足が親熊に寄り添った子熊を思わせる毛深く茶色い大蜘蛛、ブレイクタイラント。


 体に見合わない小さなハサミを持つ10メートル前後の黒く溶岩の固まった姿のような蟹、フォードキャンサー。


 8メートル前後、見るからに重装甲で殻を必要としない金属光沢のあるヤドカリ、ギガンテス。


 黒い体に赤い頭の尾を持つ全長10メートルほど長い体、他とは違う細身のキチキチと音をたて威嚇する百足、デスサイズ。


 体の割に小さな顎を持つ12メートルほどで他と比べて威圧感のあるクワガタ、スモウ。



 黄薔薇隊の面々が難しい顔で生体兵器たちを見る。

 戦闘を想定してそれぞれの倒し方をイメージしているのかもしれない。

 しばらく無言で映像を見ていたが最初にマホロが口を開いた。


「これだけ中型以上の生体兵器が集まるのは壮観だな、特定危険種でもない限りこんな数はいないしな」

「式典でしょぼい小型なんて出せないわ」


「小型でも簡単に人は殺せるんだよなぁ」

「対生体兵器用の生体兵器を倒さないと意味がないの」


 画面に映る生体兵器を指先でつついて尋ねるユウゴ。


「ずいぶんと落ち着いているんですね」

「薬やガスで眠らせている。食事は週一、人と違って頻繁に食事をしなくても生きていけるからね」


 改めてモニターを見るとリクコウは顔をしかめる。


「しかし数が多いな、それも名前がついているようだが?」

「あくまでここにいるのは一般兵が捕獲できた程度の生体兵器。図体ばかり大きくて人との戦闘経験も低いはず精鋭の相手になるとは思っていないわ」


 一呼吸おいてユユキが続けた。


「そしてこの子が、第7世代」

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