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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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幕が開く 2

 一般兵とともにトラックに乗っている白い制服の精鋭。

 チヤやほかの黄薔薇隊の隊員二人。

 髭を伸ばし頬の扱けた顔の青白さならユユキとそう変わらない、吸血鬼のような優男、ハザマ・リクコウ。

 制服から見える首から頬にかけて魚の鱗を思わす刺青、同じく細身で長髪を束ねた品のある佇まい男、クルマキ・ユウゴ。

 エレベーターはゆっくりと降下している最中で、チヤは携帯端末をいじっており、同乗するほかの一般兵たちは緊張からか口数が少ない。


「まさか、ドームにこんな秘密があったとは。なんであれ強い日の光を浴びないというのは楽でいい」


 リクコウは青白い顔に生えた顎髭を整えるようになぞる。


「驚きですね、王都がわざわざこんなところに作ったシェルター。何か秘密があるとは思っていましたが、聞いた話では制服を仕立てているらしいじゃないですか。これ生体兵器の一部だったんですねぇ」

「まぁ、普通の素材ではないと思っていたが」


 白い小型のエクエリに着いた汚れをハンカチで拭いていたユウゴは周囲を見回した。


 到着しエレベーターの扉が開きトラックは降りるために進み出す。

 たどり着いた地下研究施設、地上階にある機材とは別種の大型の分析装置などが並んでいる。


「見たところ、普通の生体兵器の解体所のようだが」

「いやいや、普通の解体所の数倍の規模はあるでしょう。防壁の外で倒した生体兵器はみなこのドームへと運ばしていたのですね」


 突然トラックが止まり、青い髪に青い制服の女性と見慣れた褐色肌の精鋭が乗り込んできた。


「イサリビ嬢か」

「おや、さっきどっかいかなかったでしたっけ?」


 黄薔薇隊の面々を見つけユユキが頭を下げる。


「今日はおねがいします。メンテナンスは6時間ほどですが、予定よりもう少し時間がかかると思ってください」


 二人を乗せトラックが再び動き出す。

 急に動き出したトラックの荷台でバランスを崩したユユキをマホロが支えた。


「ユユキさんのためなら」

「OK、任せといて」

「了解」

「理解した」


 顔を赤らめ前髪で顔を隠すユユキに黄薔薇隊は苦笑しながら返事を返す。


 まっすぐ伸びた通路を通った先の地下駐車場にトラックを止め一般兵たちは下ろされた。

 仮に生体兵器が逃げたときようの隔壁が今しがたトラックに乗って通ってきた一本道にあるの。

 それを真剣な表情で見上げている一般兵たち。


 生体兵器が逃げた場合、この道は何枚もの分厚い鉄板の隔壁に閉ざされる。

 万が一が起きてしまえば閉じ込められ、逃げられない。

 彼らはいっそう気を引き締めた。


「この先が生体兵器を閉じ込めている場所になります。私に続いてきてください」


 白衣の女性に続いて一般兵たちがぞろぞろと歩いて、いくつかある扉のうち大きなコンテナごと運び入れられるような一番大きな扉へと向かっていく。


 駐車場に残ったユユキと彼女と一緒に行動しようとするマホロ。

 そして、何となく残った黄薔薇隊の面々。


「ユユキさんはどこに行く? 一緒にはいかないみたいだけど」

「……呼び止める手間が省けてちょうどいいというべきかなんというか」


 ユユキは眼鏡の位置を直すと扉の一つを指をさす。

 彼女に案内され、黄薔薇隊は一般兵たちとは別の扉へと向かっていく。


「黄薔薇隊はこちらへ。あなたたちには第7世代の監視を行ってもらいたい」

「第7世代? ユユキさん、一つ聞きたかったのだけども」


「なんです、わかることなら答えますよ?」

「生体兵器の世代とは?」


 ユユキが立ち止まり、髪を分け眼鏡をくいと上にあげマホロを見る。

 長い前髪に隠れ普段あまり見ることのない彼女の目は輝いていた。

 そんな彼女の顔を見た瞬間、黄薔薇隊の面々は表情を凍らせる。


「生体兵器の歴史のこと、あなたが興味ないことだろうからわかる程度に簡潔で」

「頼む、簡潔に。簡潔に」


 ユユキは大きく息を吸い込むと語り始めた。


「そもそも生体兵器の開発当時の第1、第2世代は、実験段階で戦いの主戦力として考えておらず、昆虫や鳥を使った偵察や嫌がらせ程度の品だったのよ。生体兵器に殺傷能力が付いたのが第3世代から、このあたりから数センチの甲虫型が数十センチくらいまでサイズを変更させる大型化が始まったわ」


 スイッチが入り止まることのないユユキの話、チヤが肘でマホロを小突き、リクコウが頭を押さえ溜息をつき、ユウゴが肩をすくめる。

 戦い倒すだけの対象である生体兵器について、まったく興味のない面々は話を聞いても理解しようとはしない。

 ただ一人、マホロは得意げに話すユユキを嬉しそうに聞き入っていた。


「まぁ第4世代はいろいろと迷走した時代だったから、処刑用や拷問用、輸送用と戦場から少し引いた用途が限定的なものが作られていたわ。そしてここからよく知る今の規格に合わせた小型、中型、大型にあわせたサイズになった。その後、爬虫類や哺乳類、魚類、甲殻類、植物といった第4世代と、その発展形である第5世代で頭打ちになって、今いるほとんどの生体兵器は第4世代以降だといわれてるわ。時折、第3世代以前の物も見つかって入るけど、もうそれらは他の生体兵器が育てている食糧でしかないわね」

「で、第7世代とは。今の話には出てこなかったよな」


「そうね、ほかの国からの情報はなく、手元にある資料の限りだと第6世代はナナシキ家だけが作り出した生体兵器。第7世代はナナシキ家が開発途中で投げ出した……というよりこの国にクラックホーネットが進行してきて開発どころではなくなった」

「ちなみにダイロクセダイ? ってどういったものになったんだ?」


 自分の得意分野について語るユユキは止まらない。


「今までのが戦うために生まれ、殺すことに特化しているとしたら。第6は人に寄り添い、人の役に立つ生体兵器。でも頭がいいぶん、野に放たれた時の危険度がすごい。国が壊れたときからいる長生きな災害種、レットターゲット。あの第6世代は、いまだに健在でしょう。国の崩壊当時、本当は10匹いたらしいけど、もう最後の一匹を残して皆死んだわ。いくら丈夫な大型の生体兵器でもクラックホーネットとシュトルム、この2つに攻撃を仕掛けたばかりに返り討ちになった、あの災害種のことはマホロもよく知っているでしょう。さて、肝心の第7は、昔に戻って破壊に特化した生体兵器だけど、姿が異形化し既存の生き物の枠を大きく超えたわ。もはやどの生物にも似ていない化け物」

「そんなものを作っていたのユユキは」


「話すより見たほうが早い、それがこの先にいる。見せてあげるわ、早くついてきなさい!」


 ユユキはそういってまた歩き出す。

 ようやく話が終わったとマホロ以外のメンバーが携帯端末をポケットにしまって歩き出す。

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