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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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祭りの準備に、一つの影 5

 携帯端末を取り出し中の相手とコンタクトを取ろうとするユユキ。

 マホロが部屋のインターホンを押してみるが反応はなく、扉の開閉スイッチに触れてみるも扉が開くことはなかった。


「そんなことして出てくるようならば逃げたりしないでしょう。……なんか体がべたつくわ、終わったらシャワーでも浴びよう」

「そういえばいつもと違うと思ったら、ユユキさん今日は白衣着てないんだな」


 マホロは青い髪の毛先からブーツの先までユユキの服装を見回す。


「ここを出て行く時に着ていったけど汚れたから捨ててきた。部屋に戻ってから着替える、あなたに気にされることじゃない。それじゃ、呼び出すわよ。扉開いた途端に襲ってくるかも」

「了解。ならユユキさんは後ろに、俺が開けるよ」


「お願いするわ、怪我だけはしないでね」

「おう」


 マホロが扉の正面に立ちユユキが壁まで下がりもたれかかると、携帯端末を操作し耳に当てる。


「もしもし、わたし。今あなたの部屋の前にいるの、なんでここに来たかわかっているわよね? 話がしたい扉を開けてもらっていいかしら」


 通信はつながっているものの返事はない。

 少し間をおいてから、ユユキは話し続ける。


「答えがないけど、このままだと扉を破壊して強制的に開けさせてもらうことになるわ。返事がこのまま無いようならば、この先は出て行ってもらうのではなくあなたを追い出す形になる、そうなると荷物をまとめる時間はないわよ。それでもいいの、ここに来てからあなたの集めたものを持ち出す時間はないわよ」


 そこまで言うとようやく携帯端末から答えが返ってきた。


『わかった、い、今から開ける。だから暴力は無しにしてくれ』

「元から話し合いでなんとかするつもり」


 音声はまごついており、ユユキの声を聴いて慌てている様子。


『ひ、一つ言い訳をさせてくれ』

「失態については言い分を聞く気はないから。あなたがここから出ていくことは決まっている、ここには出ていく日にちと時間を話に来ただけ。さぁ、扉を開けて」


 通話が切れて少し時間が立ち扉が開く。

 中から出てくる白衣を着た髭の濃い脂身の多い男。

 彼は大粒の汗をかきマホロの警戒しながら彼の後ろにいるユユキに話しかけた。


「さ、最後のチャンスを」

「シオウさん、前にも言ったけど。三度目はない、ちゃんと一度目の時にそう言ったでしょう? あきらめなさい」


 脂身の多い男、シオウ・ヒロノスケは汗をぬぐい手を合わせ頭を下げる。


「もう一度だけ」

「くどい。それでここを出ていくって話なのだけど……うわぁ……なにこれ……」


 ユユキは携帯端末をしまってマホロの隣まで歩き部屋の中を見て絶句した。

 窓はなく照明のついていない暗い室内にモニターの画面が青白い光を放っている。

 菓子の袋やカップ麺、何かを食べた後の皿、大きな箱や破かれ放置された包装紙、足の踏み場のない。

 部屋の入り口まで来た彼の足もゴミに埋もれている。


「何この部屋」

「ひでえな、チヤだってもっと部屋はきれいだ。これは散らかってるというよりゴミ溜めってレベルだな」


 稼働している発電機もゴミに半分埋もれておりそれらに火が付きいつ燃え出すかわからない状態。

 床と同じような状態の机にあるいくつものモニターには何かのキャラクターが映っている。


「出ていく時に片づけてほしいけど、そんな時間も惜しいわね」


 中に入って状況を確認しようと思っていたが、その部屋の状態に思わず躊躇する。

 ヒロノスケの部屋から漂う異臭と虫の気配。

 思わず鼻を押さえるマホロと身震いし両腕をさすりながら後ろに下がるユユキ。


「決めたは、明日の昼には帰ってもらう!」

「早すぎです、そそそ、そんな急に荷物をまとめられるわけないじゃないですか」


 話している途中、部屋の奥でごみ山が崩れ落ちる。

 目を引くつかせ眼鏡の位置を直すと、ユユキは大きく息を吸い込んだ。

 そして悪臭にむせる。


「本当なら今すぐにでも追い出したいくらい、これ以上グダグダいうなら本当に追い出すわ。マホロもいるし実力行使ができるもの」


 そういうと扉の横の開閉スイッチを強く押してヒロノスケの部屋の扉を閉め、マホロにも聞こえる音で奥歯を鳴らし無言で歩きだすユユキ。


「おいおい、歯ぎしりはよくないってユユキさん。歯砕けちまうぞ?」


 そんなマホロの言葉を無視してユユキは進み続ける。


 ――仮にもシュゴウさまがお姉さまに任されたドームの管理。それを私に貸し与えてくれ、いうなればこの生体兵器の研究をするドームはお姉さまの物。お姉さまの物が汚されていいわけがない。それをあんなに汚して、思い出すだけで腹が立つ。何なの。


 マホロは速足で歩き始めた彼女を追いかけ後ろをついて歩く。


「あれは掃除が大変そうだな、ユユキさん」


 そういって後ろを振り返り先ほどの彼が追ってこないかを確かめた。


 ――時折彼の靴がにっちゃにっちゃと音を立ててると思ったらこういう状態だったのね。服も臭っていたし、あれならそうでしょうね。というかあの部屋、服の類がなかったように見えたけどもしかして着替えとかしていない……? すごい寒気が止まらないわ。


「体調が悪そうだな、悪寒が走るなら今日はもう休んだ方がいいと思うぜ。俺達には何の情報もないが、流れ的に今は体壊しちゃいけないときなんだろ? ところでああいう部屋にカメラはないのか?」

「廊下にはあるけど基本的に休憩室や仮眠部屋にカメラはないわ、ずっと見られている状態でリラックスなんてできるわけないじゃない。娯楽の少ないシェルターで少しガス抜きをするときにだって邪魔でしょ」


 そういうとユユキはカードキーを取り出し別の部屋に入る。

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