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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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祭りの準備に、一つの影 4

 ユユキが不在の間にたまっていた資料に目を通しタブレットをナユタに返す。


「では、明日のメンテナンスを終えれば全工程が終了ね」

「はい、その後は式典の日を待つだけとなります」


「しかし、一番厄介なのが残ったわ。管理コンピューターのメンテナンス、防犯アラートや情報処理、一時的に生体兵器の生命維持や薬物投与、檻の破損アラートなどが使用不能に。私がいない間に済ませておいてくれればよかったのに」

「インフラ等のシェルターの生活環境には影響ないですし、作業も問題なく進めば6時間程度。機材の一部使用不能、データへのアクセス不能など仕事に影響はありますが生活に影響はさほど出ないかと」


「メンテナンスの影響はドームの中だけの話。メンテナンスは仕方がないけど、精鋭と一般兵を生体兵器の管理区画のそばに待機させておかないといけないわ。万が一に備えて」

「一般兵を……シェルターの中にそれもドームの中へいれるのですか? 確認を取らないと。王都からの援助で最新鋭の機材がそろっているこのシェルターでそのようなことは起きにくいと思われますが」


「仮に一匹でも逃げ出したら私たちは防壁から助けが来るまで、ここからドーム内が赤い絨毯が作られていく光景を見ることになるから。せっかくお姉さまが集めてくれた技術者たちを餌にはしたくないでしょう。責任問題で私たちも餌になるかもしれない」

「わかりました、手配しておきます」


 指示を与えユユキは室内を見渡し今急ぎですべきことがないとわかると溜息をつき椅子に深くもたれかかる。

 彼女の仕事が終わったのを見計らって暇にしていたマホロが話しかけた。


「ユユキさん」

「なに? どうでもいい話だったら無視するけど」


「仕事できびきびしてる姿かっこいいな」

「そう。じゃ、行くわよ」


「お、やっと俺の出番か。呼ばれるだけでそのまま返されるかと思ったぜ」

「とはいっても、退去への手続きを手伝ってもらうだけ。暴れたり抵抗したり襲ってきたら」


「ぶっ飛ばすと」

「ええ、いきなりはぶっ飛びすぎ、私を守ってもらうだけ。ふつうにあなたは圧力としていてもらうだけで、極力穏便に済ませたいのだけど。式典前に問題が発生したなんてお姉さまに顔向けできない。すでに起きたのだけれども、これ以上端を重ねる前に何とかしたい」


 ユユキは立ち上がりマホロを連れて気怠そうに部屋を出る。

 二人は来た時同様エレベーターに乗り下へ、


「それで追い出すってのはどんな奴なんだ?」

「機械に強くて情報の並行処理が得意の、使える人材だったのだけど。誰も文句が言えない立場になると権力を振り回して食う寝る遊ぶのやりたい放題、仕事さえしてもらえれば問題はなかったのだけども。最近じゃそれもおろそかに、ほかのシェルターからかき集めたゲームに夢中で仕事が手につかなくなり、一度犠牲者が出て厳重注意をしたのだけれど、今回の二度目。さすがに三度と犠牲者を出すのはよろしくない」


「なるほどな」

「このシェルターに来た当初は数人分の働きをしてくれたのだけども、だんだんとね。働きに応じて昇給していたのだけど、このシェルターで使うところがないし、休みもほとんどないからほかのシェルターで息抜きもできない。もともと熱意がないから」


「そういう奴は一度一般兵になって根性鍛えなおせばいいんだ。仕事に熱意がないなんて、俺なんかユユキさんの護衛になるためだけに精鋭になったっていうのに」

「あなたの熱意は変な方向にねじ暮れ曲がってストーカーの域を超えているわ」


 エレベーターはドームの居住区ある階へと到着する。

 とはいえ、泊まり込みで働いたり仮眠室などがあるだけで規模は大きくない。

 それ以外は他の階同様に研究室が並ぶ。


「ユユキさん」

「あまり話しかけないで、今日もう疲れた。話したくない、あなたに合うとどっと疲れが出るんだから」


 うつむき前髪で顔の半分が隠れるユユキ、その表情はマホロからは見れない。

 通り過ぎる研究室からは機械の音、見れば室内で何台もの大型のミシンが動いていて一つ一つデザインの異なった布を裁縫している。


「ここはなんの研究しているんだ?」

「主に強化繊維を作っているわ。羊、蜘蛛、蚕、綿花などを生体兵器とまではいかなくても、丈夫に多く収穫できるように改良して育てて、収穫し染色して繊維にして精鋭の制服を仕立てて作っているわ。あなたの着ているそれもここで作ってるのよ、もっともこのシェルターのことはやっていることがやっていることだけに、誰にも教えられることはないのだけれども」


「まじか、これ生体兵器の毛で作られて作ってたのか」

「そうよ、ここは生体兵器の研究をするシェルター。第5世代まで生体兵器を徹底的に調べ上げ使えるものは人類のために使う、ほかのシェルターでも倒した生体兵器を調べたりしているけれどここは設備も人員の数も圧倒的に多い。強化繊維用の生体兵器、一匹一匹育てるのにだってかなりの時間はかかるし丈夫な糸を加工するのだって手間がかかるんだから大切に扱いなさい。特に洗濯、強化繊維は衝撃にはめっぽう強くても薬品には弱い、雑な選択は強度が落ちるから適切な方法で洗ってちょうだいよ? こっちの苦労も知らないで腹立たしいことに、守らない精鋭が多いって報告が上がってるんだから」


「そりゃまぁ、日ごろ生体兵器と戦って疲れているのに、汚れたらいちいち手荒いなんて面倒くさがったりするだろう」

「強度が下がって穴が開いたらすぐに交換なのよ、制服交換を半年に一回、シーズンごとに作らされるこっちのみになってよ。タダでさえ魔都への進行のために精鋭増やしているんだから。手が追い付かなくなるわ」


 疲れたといいつつも自分の得意分野となるとたくさん喋り、そんな彼女の姿をかわいいと内心思いつつ眺めるマホロ。

 そして話している間に二人は問題の部屋の前に到着した。

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