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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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祭りの準備に、一つの影 3

 ユユキはエレベーターに乗り上の階へ向かいドームの最上階でおりる。

 最上階には1部屋しかなく、フロア丸々を使った大部屋でユユキは装飾された金属の扉を開けた。


「今戻ったわ、話も聞いている」


 最上階大部屋の中には並べられた机に大量のモニターとそれを操作するオペレーターたち。

 壁にも大型のモニターが取り付けられ施設内の最重要区画を映している。

 声に部屋の中にいたものたちは一斉に振り返りユユキを見て、白衣姿の研究者たちはその顔色を青ざめさせた。

 理由は当然、留守中の設備の管理ミスで犠牲者を出してしまったこと。

 カガリが持つ注射器をユユキも携帯を許可されており皆それを恐れている。


「おかえりなさいませ、ユユキ様」

 機嫌を探るように話しかけてきたオペレーターの一人に、周囲は仕事の手を止め慌てた様子でユユキを見た。


「彼は」


 話しかけたオペレターが再び話しかけるまで室内は静まり返り機材のファンが動く音だけが響く。


「ユユキ様の帰還の報告を受けこの場を離れ先ほど自室に引きこもり、シオウのやつは籠城を決め込んでおります。現在説得に応じず音信不通、自室に自家発電機と大型冷蔵庫を備え大量の食糧があり電源供給を切ってもなお、電子施錠で籠城を続けております」

「仕事が早いわね、私が返ってきて少し時間が立ってるとはいえ。しかし籠城、最悪は扉を破壊するしかないわけね」


「しかし、扉を破壊するものなどこのシェルターには」

「なくもないけど、爆薬じゃ使ったら中身ごと死んでしまうか……。というか電源を落としたの? 換気もできないじゃない、窓のない密閉空間よ? やることがぶっ飛んでるわね」


 数多く並んだ机に一つだけ、ほかの机よりいくつか多くおかれたモニターに囲まれた机があったが今は無人。

 その机にはかなりの量の食べかすが散らかっていた。


「我々に被害があるのならなんだってします、ですので……ですので……」

「流石に、新しく調達しないとこの人数に撃つ薬は持っていないわ、すぐにマホロが来る。後は彼に……」


 エレベーターのある通路の扉が開きマホロが入ってきて部屋の様子を興味深げに見まわしながらユユキのもとへと歩いてくる。


「呼んだか、ユユキ!」

「黙っらっしゃい! ……来るのが早いわね」


 エレベーターに乗り遅れたのかマホロの背後には彼を呼びに行ったナユタはいない。


「ユユキさんが俺を呼んだから全力で走ってきた」

「そう、息切れてないけどエレベーター使ったよね? 道案内もなく初めてきたにしてはやけに早い、ここのことチヤにでも聞いていたのかしら」


 ドームとは関係のない部外者であるマホロを見て大部屋にいたオペレーターたちがざわつくが、彼を見てユユキが何も言わないためすぐに静かになった。


「ユユキさんここは何する部屋なんだ? モニターいっぱいで、映画館か?」

「ドーム内のすべてのデータを管理し、シェルター内すべての建物とのやり取りをする場所よ。王都からの指示をここから一気に周りに伝えるの。娯楽施設は外の建物よ」


「それで、ユユキさん追い出すって誰をだ?」


 そういってマホロは室内を見渡す。

 彼の普段の生活では見慣れない、いくつものモニターに興味深げに再び目を向け文字やグラフばかり映っていることを確認すると興味を失う。


「ここにはいない、私が返ってきたのを知って自室に引きこもったわ。あなたにはしばらく要はないその辺にでもいてください。少し作業の進行状況を確認したらマホロにも手伝ってもらいます」

「おうよ、俺にできることなら任せとけ」


 マホロに真横に立たれ鬱陶しく思いユユキは部屋の真ん中まで進んでいき近場の椅子を手元に寄せ座る。

 ユユキの様子を見て八つ当たりはないと判断し皆仕事に戻り始め、少し遅れてマホロを呼びに行ったナユタが返ってきた。

 彼女はすぐにユユキのそばに向かい、しゃがみこんでユユキと目線を合わせる。


「式典の準備は進んでいるの?」

「はい、それは問題ありません。食材の調達も、当日の段取りも、会場の飾りつけも済んでおります」


「式典にはお姉さまやシュゴウ様、王家アマノガワの方々も来られる。万全以上に事を進めておくように。不足に事態にならないように、絶対に連帯責任では済まされなくなるわよ」

「了解です」


 タブレットを差し出されユユキは眼鏡をかけなおし画面をスクロールさせ情報を流し見た。


「お待させしました、こちらに式典へ向け集まったものの一覧が」

「集まってみると意外と少ないものね。もうあまり時間もない、これがすべてでしょうね」


「クズリュウシェルターや連合からも生体兵器が届くはずでしたが、協力者からは連絡はなく……」

「来ないものはいい、それにいつの話をしているの? あの辺のトラブルの話は出どころもわからないけども流れているわ。今そろっている分で十分、あれらを前座に第七世代のお披露目よ。楽しくなるわ」


 呼び出しておいて放置されるマホロは部屋の様子を眺めながらユユキのもとへと向かう。

 ユユキのつむじを見下ろす感じでちらりと目に入った彼女の持つタブレット、そこに映ったものを見て会話に割って入る。


「わきから失礼。ユユキさんちょいと聞きたいが、いいか?」

「なに? めんどくさい話ならパスよ」


 マホロがユユキの持つタブレットの画面を指さし、ユユキたちがそれを目で追う。


「ここに映ってるのって」

「今このドームの地下にいる生体兵器よ? 各地から集めさせたの」


 平然と話すユユキと特におかしいことは言っていないと不思議そうな顔をするナユタ。


「おいおい、時々裏口に大型のトレーラーが入っていくと思ったら」

「ええ、地下に運び入れていたものでしょうね。あるいはその食糧の輸送」


「食料!? まさか人を運んできてたりしないだろうな、ユユキ?」

「そんなわけないでしょう、いくら私が王都の生まれでもそこまでのことはしないわ。餌として運び入れていたのは家畜よ、雑食とはいえ野菜を大量に運び込むなんてことはできないでしょ、病気や食肉に適さない家畜を処分という名でここに買い取っている。向こうも少しでも買値が付くからと進んで売ってくれるわ。質問は終わり、今片づけられる分だけの仕事が終わったらあなたにも仕事してもらうから、それまで待っててくれる?」


 そういうとユユキはタブレットに視線を戻す。

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