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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
2章 迫る怪物と挑み守るもの ‐‐私情の多い戦場‐‐
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防壁の内側、5

 4人の夕食が終わるころになってトガネが帰宅、彼の夕食が終わるのを待ちその後片づけをしているトヨが皿洗いを終えるのを待って彼女が席に着くと同時に作戦会議が始まった。


「すみません、御手間取らせました」


 手を拭きながらトヨがトキハルの横の席に座る。


「全員そろったな、明日の朝ここを出立する。夕食前にはここに戻ってきている予定だ」

「えっと、今回はどちらへ?」


 トヨが席に着くとトキハルがタブレットを持って席を立ち話し始めた。


「ここから東に7キロほど行ったところにある廃墟群、その中央に流れる川の付近を縄張りにしている生体兵器だ」

「縄張り……動物型ですか?」


 昆虫型にも一定の場所を中心に活動する生体兵器はいるが巣ではなく縄張りと言ったところから動物型をイメージした。


「ああ、鰐をベースに作られた水陸両用の強襲用生体兵器だ、金属回収のため付近を通った資材回収班が襲われ被害が出た」


 タブレットを部屋に備え付けのモニターに接続し操作すると映し出された荒い映像の中に、逃げ惑う一般兵の中3匹ほどの黒に近い緑色のワニが暴れている。


 一般兵たちは大きなトラックに廃墟放置された壊れた車などを回収している最中で、突如現れた生体兵器に右往左往している。

 一般兵に渡されている小型のエクエリでは歯が立たないようで、パニックを起こし一般兵は逃げることしかできていなかった。


「数と大きさは?」

「8メートルほどのが数匹との報告だ、短い脚は予想以上に早く分厚い鱗がありエクエリが効かないという話だ」

「早いのはともかくやっぱ硬いのか。おいおい、トヨのエクエリ以外俺たちのエクエリは、通じないんじゃないのか」


 お手上げと言いたげにトウジが背もたれにもたれかかる。


「今回もやばいくらいアバウトですね、今まで正確だったことなんてないけどさ」


 トウジが買ってきたお菓子と頬張りながらライカも不満気に言った。


 しかしそうは言いながらもトウジとライカは動画を見ながら、生体兵器の弱点となりそうな部位を探している。


 目は弱点の一つなのだろうが非常に小さく激しい戦闘の中狙うのは無理だろう、腹部は柔らかく弱点なのだろうが鱗の一部が変化し垂れさがり、地面を覆うようになっていてその腹を守っている。


「いつも通り、見つけた生体兵器は片っ端から片付ければいい」

「そうだね、俺っちらはその方がわかりやすいや」

「勝手に私たちがわからない感だすのマジやめてよ!」


 トガネ先輩は背もたれにもたれかかり頭の後ろに手を回し気楽に映像を見ていてその隣でライカが彼の脇をどつく。


 人が死ぬような重たい映像だが、ここにいる全員顔色一つ変えず冷静に一般兵と生体兵器にとの戦闘を分析していた。


「車は? 狭い廃墟を抜けるとなると、いつもの装甲トラックじゃ狭くて物の多い市街地らへんの廃墟は移動が不便ですよね、トハル」

「今回は小型車二台に分けていく。もう手配もしておいた」

「んじゃ俺っち、ライカちゃんとトヨっちの乗ってる方ね」

「いや、マジで嫌なんですけど」


 数分間の動画が終わり、些細なことをメモし終わると生体兵器がいる廃墟までの地図を映し出した。


 地図に書かれた廃墟の中央に大きな川が流れており、そこの一部にバツ印が付いている、おそらくは目的地なのだろう。


「戦力は均等に分けるのでそれはないかと。むしろ私たちは走行中の戦闘では足手まといなので、運転手だと思います」


 トヨは試作の大型のエクエリで、本来の大型エクエリより大きく銃座には乗せられないため走行中にエクエリを撃つことができなかった。


 ライカは俊敏性から走りまわっての接近戦を得意とし、走行中は体力の温存ということもあって運転を任されることが多い、廃墟での運転は意外と神経使うけど。


「どうせ、いつも通りの乗りわけだろ。いちいちトガネは自分の願望を口に出しすぎだぜ」

「何事も言ってみないとね、希望も、告白も」

「こいつの相手怠いわ―」

「これ以上詳しい地形情報がないため、現在の廃墟がどうなっているかは向こうについてから出ないとわからない。また付近にいるだろう他の生体兵器の情報もない、状況によってだが戦闘の際の対処は各自に任せることになるだろう」


 話しがずれ始めたのをトキハルが直し今夜の会議は終わった。


「以上だ、明日の早朝に出発する」

「了解。まあ、俺っちらにはいつものことだね、朝がつらい」

「了解、前線基地に行く前の準備運動にはちょうどいいんじゃねぇの」

「了解、とりま私は偵察が終わったらトヨちゃんじゃなかった、副隊長を守ってればいいんですよね」

「了解。では、この後、私、補給物資貰ってきますね」


 会議が終わるとトヨが席を立つ。


「外暗いし基地の中とはいえ危ないだろ。俺も行くぜ、今日迷惑かけたしな」


 気遣ったトウジと振り返り、トヨが彼から目をそらすと彼女と彼に微妙な間が生まれる。


「あ、ごめんなさい結構です。この時間に迷子になられても困りますし」

「……」


 誰も口には出さなかったがここにいる全員が思った、トウジならきっと迷子になると。


「俺っちが行こうか?」

「変なことをしなければ、お願いします」


「へーきへーき、だいじょーぶ」


「言い忘れていた最後にもう一つ、向こうに着いたらしばらく雨が続くとの話だ」


 思い出したかのようにトキハルが一つ付け加えた。


「うわっ、何それ。ちょーだるい」

「傘さしながらエクエリは撃てないもんなぁ、撃てたとしても動きずらくて生体兵器にやられるだろうけど」

「カッパは動きまわるのに邪魔だし、あれ蒸れますもんね。まぁあれはカッパじゃないけど……」

「かといって濡れっぱなしだと風邪引いちゃいますよ? というか誰も雨天時のエクエリの威力の減退については話さないんですね」

「濡れるのシャツ透けるし、マジ嫌なんだけど」


 ライカはこいつがなとジッと、トヨと一緒に外の行く準備を整えているトガネを見る。


 昼間はあちかったが夜は冷えるので上着を取りに行き、外に出る準備を済ませるとトヨとトガネは補給物資を取りに部屋から出ていった。


 トウジは自室に戻り部屋にはライカとトキハルだけになった。


「サジョウ隊長。その仕事、晴れに日に変更できないのですか?」

「来週までここに居る気か?」


「あー、長雨なのですかー、冷めるわ―」

「ついたらすぐにけりをつけて帰ってくればいいだけの話だ」


「まぁそうですけど、地面転がりまわる私としては服の奥まで泥水が染みちゃうんですよね。カッパきてればワンチャンあるかもしれないけどあんまり期待できないし」

「ここに戻ってきたら乾かせばいいだろ」


「まぁそうですけど、濡れっぱだと気持ち悪いんですよね。……それじゃ、とりまトガネがいないので先寝る前のお風呂頂いちゃいますね」


 話しが終わるとライカはその場から離れ女性用の寝室に戻っていった。

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