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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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祭りの準備に、一つの影 1

 ユユキの向かうシェルターはマクウチシェルターと同じく元シュトルム支配の北に近いため生体兵器との戦闘は他のシェルターより多い。

 それを逆手にとって作られたこのシェルターは立ち寄る人間が少なく、内側から逃げだしたりするものは生体兵器に襲われるため情報が漏れにくい。


 シェルターの白い防壁に青い屋根の見張り塔が並ぶ外観は西洋の城壁、出入り口となる門は格子状の金属の扉が二重となっている。

 シェルター内の情報が漏れないように職員でない一般兵たちはシュゴウシェルターに入ることはできないため防壁の外側に基地がありそこで暮らしている。


 防壁と同じように白く塗装われた砲台のエクエリが防壁の外側と内側に向けて並んでいて、シュゴウシェルターには防壁から門をくぐり町へと続く道の両脇には基地は存在せず、建物が立ち並ぶエリアまで巨大な水たまりが存在していた。

 見晴らしがよくゴミ一つない透き通った水たまりの水深は浅く、くるぶし程度で抑えられ泳げるような深さはなく場所によっては噴水やライトが設置され夜を美しく彩る。


「それでは、これで。我々はここまでですので」

「ええ、ここまで送っていただきありがとうございました」


 防壁前に停車する装甲車。

 基地は防壁内に収められていて装甲車を降りユユキはブーツと強化繊維のタイツを脱いで路上に放置すると鏡面のように光を反射する水に足をつけすこし歩く。


 風などで波が立たなければ広く大きな水面は空を映し出す。


 ――帰ってきた、狭い車内で座っりっぱなしはお尻が疲れる。やはり見慣れた景色と匂いが落ち着くし居心地がいい。そして、ここは静かだ。この、古っぽい防壁と近未来的な建物のギャップ、他にはないよさがある。


 開発系シェルターシュゴウ、数千人規模の極小なシェルターでありながら頻繁に建物の建て替えが行われていて、ほかのシェルターよりかなり強固にそして先進的に作られ、シェルター内には何本もの外壁の見えない全面ガラス張りの三角塔が立ち並ぶ。

 このシェルターはある目的のためだけに作られていて研究所、食事処、職員の宿泊のできる建物がほとんどで研究者やそれらの関係者以外の民間人は住んでいない。

 そして、そのシェルターの中央、ただでさえ異様な発展を遂げている建物の中でも特別異彩を放つ巨大なドームがそびえたつ。


「おや、帰ってきたんだ。おかえり、どこ行ってたのどこ探してもいないもんだから兄貴が探してたぜ? ん、いつもより機嫌よさそうだけどうれしいことでもあった?」


 先ほどまでユユキ以外誰もいなかった道路に白い制服の精鋭。

 白銀の大型のエクエリを背負った右目に傷のあるボサっとしたショートカットのボーイッシュな褐色肌の女性が立っていた。


「チヤ、いつからそこに、吃驚するからやめてよ」

「いや基地でぼんやり生体兵器が襲ってくるの待ってたら、このシェルターに装甲車が寄ってきたから様子見に。そしたらユユキが降りてきた」


 白い制服には金色の薔薇の刺繍、王都直轄の精鋭黄薔薇隊。

 隊員一人一人がほかの精鋭の隊長クラスの実力者を集めた隊で、シュゴウシェルター防衛のために呼ばれ戦っている。

 その隊員、フシミ・チヤ、片目に傷のある褐色肌の男らしい女性は大型のエクエリを置いて道路の淵に立つ。


「理由になってない」

「あとそこ、ばっちりユユキのスカートの中まで水面に反射してるよ。かわいいお尻が丸見え、しっかしユユキは青好きだね下着も青か」


「いうなよ、チヤ以外に誰も見てないし問題はない」

「女の子としてそれはどうかと思うぜ、かわいく恥じらえよ。兄貴呼ぶぞ?」


「長旅で疲れてるんだから、しばらく一人にさせてよ。彼呼ばれたら過労で私が倒れる、もう私のことは放って置いていいよ、一人で帰るから」

「いや、私のことは気にすんな。中央に帰るときに足は必要だろ、カート運転してやるから一緒に行こうや、向こうに置いてあるからさ」


 そういうとチヤは防壁の向こうを見る。

 ユユキはチヤのもとへと近寄っていく。


「ところでここにいるのはチヤ一人だけ? 他は」

「兄貴は中央でまだ寝てるんじゃないかなこの時間。おっさんらはまだ基地でのんびりしてるよ、今日は生体兵器の襲ってこない平和な日だ。何なら兄貴に連絡とって迎えに来てもらうか、すごく会いたがってたぞ?」


「できれば、このまま彼には合わずに式典まで何とかしたい、真剣に」

「嫌われてるねぇ、兄貴」


「私は一人で居たいの、騒がしいのは嫌い。これ以上何か言うならあなたもかえって」

「了解、黙ってるよ。それにしても気持ちよさそうだね、その水は冷たいのかい?」


「少しぬるいくらい、ブーツは蒸れるから今日みたいな日は気持ちい」

「確かに、もうだいぶ暖かくなってきたね。もう上着着ているのはそろそろきつい時期か、夏服は動きやすいけど防御能力がな」


「薄く丈夫ではあれで限界、生体兵器の種類に合わせて着替えてもらうしか」

「無理、四六時中持って歩けと? めんどくさいわ、こっちは装備も持ってるんだぞ」


 チヤは足元に置いた白銀の鉄塊をブーツのつま先で蹴飛ばす。


「確かに」

「それにセーターでさえ動くと熱いし、シャツ単体だと透けるし。夏は嫌い」


「少しでも薄く軽く、発刊性を求めたんだけど」

「十分、着やすいけどね。やっぱり私も入る、私の下着見るなよ?」


「見られたくないなら隠せ」

「んじゃま、いっか。女の子同士だし」


 そういうとチヤもブーツを脱いで水に足をつける。

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