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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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過去の夢を見る 1

 キサキを別れを告げユユキを乗せてシェルター間を移動する装甲車。

 小さな覗き窓からは随伴する護衛の装甲車と戦闘車両が見える。


 目的地への道のりは長く持ってきた資料にもあらかた目を通し残りに目を通していると、ふとうすぼんやり頭の中に靄がかかりユユキは眠りに落ちた。



――



 過去の記憶の夢。

 そこは、シェルターのごみを廃棄するゴミ捨て場だった。


 シェルター規模は王都が確認する限り最大規模の大きさで人口が多く、毎日出るごみの量がとてつもなく多い。

 廃車両がパーツを抜かれフレームだけが積み上げられ加工される時を錆びながら待つ場所に、まだ目も悪くはなく髪も青く染める前の少女ユユキの姿がそこにあった。


 着ている服はくすんだ水色のぼろきれのようなワンピース。

 彼女は一冊の本を両手で大事そうに胸に抱えており廃車両の間を走っていた。


「おい、待てそこの!」


 走る彼女の背後から声がかかるが少女ユユキは足を止めず走り続けた。


「そっちに行ったぞ! 回り込め!」


 声のほかに複数の足音、高く積まれた車両に隠れ姿は見えないが数は多い。

 一心不乱に走り続けていると廃車両の積み上げられたごみ置き場を突き抜けてしまった。


 途端に横や背後からユユキに追いついてくる少年たち。

 小柄の体で狭い道をすり抜け何とか逃げ切っていたが無いもない場所で走る速度はユユキが圧倒的に遅い。

 あっという間に追いつかれ髪を掴まれ地面に押し倒される。


「止まれって!」


 転んでいる間に取り囲まれ逃げ場を封じられた。

 囲んでいるのは少女ユユキより一回りほど年上で背の高い少年たち。

 彼らも服装はユユキと変わりはなく色あせ穴の開いたぼろの服。


「その本、やっぱり精鋭の英雄譚だな。その本は古本でも高く売れるんだ、こっちによこせ!」

「いやだ!」


「抵抗してもいいが結果は目見見えてるだろ。おい、やれっ!」


 本を守るようにうずくまりユユキが断ると髪を掴んでいる奴の仲間が、ユユキのわき腹に蹴りを入れられる。

 肺の空気が逆流し目に涙を溜めむせるユユキ。


「もっと痛い目にあいたいのか。いやだったらそれを渡せ、そしたら解放してやる」

「渡さない、絶対に!」


 痛みと恐怖に涙声になりながらも抱えた本は手放さない。

 ユユキの返答を不服とし囲んでいた少年らは包囲を狭めユユキを袋叩きにしようとする。


「待った待った、何してる弱い者いじめか? だとしたら許せない」


 声とともに褐色肌の少年がユユキたちのもとへ向かってくる。

 少年たちは一瞬顔を見合わせたがすぐにユユキを押さえている一人を残し褐色肌の子を迎え撃つ体制をとった。


「……その肌。お前、このあたりで荒らしまわってる新入りか」

「だったらなんだ?」


「ヒーロー気取りか? この数相手に戦えるとでも思ってるのか?」

「やってみないとわからない。なんでも挑戦してみることが大事だろ」


「おい、こいつをぶちのめしてここに連れて来い」

「お前は戦わないのか?」


 後からもう一人彼の兄弟と思われる褐色肌の子が小走りで彼に追いついてくる。


「兄貴、一人で先行くなって。伏兵が隠れてたらどうすんだよ」

「わり。今にも始まりそうだったんで思わずな」


 もう一人と合流し2対複数、ほとんどは素手だが棒切れのような武器を持っている子もいて、なおかつとり囲まれ圧倒的に不利な状態だったが彼らは一方的に少年らの集団を叩きのめした。

 うずくまり倒れる少年らをまたいで二人はユユキのほうへと歩いてくる。

 ユユキを押さえつけ髪を掴んでいた少年は最後に先端の欠けた刃物を取り出し抵抗しようと立ち向かったが、軽くあしらわれ少年ら同様地面に付す。


「大丈夫か? 近くを歩いていたら声が聞こえて来てみればこれだ。女の子を大勢で囲むだなんて許せないやつらだな。大丈夫制裁は加えたしばらくは立てないだろう、逃げるなら今だ」

「怪我とかは? 見せてみ、軽傷だったら何とかするから」


 二人はさわやかな笑顔で彼らはユユキに笑いかけるも、彼女は抱えた本を奪われないように服の中に隠し彼らに背を向ける。


「その本そんなに大事なのか? 大丈夫取ったりしないさ、家は、歩けないようなら送っていくぜ」

「兄貴、あんまり聞くのよしなよ警戒されてるじゃん」


「そうだな。とりあえず俺らは君が困ってるようなんで助けた。余計なお世話かもしれないけど見逃せないたちなんでな」

「そういうこと。別にとったりしないぜ、じゃあ行くからこいつらが起き上がらないうちに逃げな。このあたりにはいないほうがいい、これからも気をつけな」


 そういうと何事もなかったかのように二人は去っていく。

 二人が去って少したってからユユキは立ち上がる。

 そして彼らの歩いていった方向にお辞儀をしてからこの場を離れていった。



――



 夢の途中、ユユキは一般兵に揺さぶられ目を覚ます。


「ユユキ様、もうじき到着します」

「わかった。荷物は後でとりに来させるから一度基地に置いておいてください」


 眼鏡をはずし眼をこすり体を伸ばすをする。


「……懐かしい夢、何年前だ? ……さて仕事だ、式典の準備を進めないと」


 そういってユユキは速度を緩め始めた装甲車を降りる用意をし始めた。

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