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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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次への鍵 8

 大型のエクエリを担いだ男性を先頭に階段を上がってくる精鋭。

 一番最初に階段を伸びり切った彼とは別に後をついてくる女性二人は泥だらけで、男性はポケットからハンカチを取り出し女性達の顔についた泥を拭く。

 顔を拭いてもらい服装を整えると隊長と思われるぼさぼさ髪の女性が部下を連れて報告にやって来る。


「襲ってきたのはみんな倒した、隠れているかどうかは知らん。イグサは、なんかある?」

「たぶんみんな倒した、と思う? おっきいのも小さいのも飛び掛かってきたし。完全に見えない分、夜戦うよりきつかったね」


「な。ほんとに何も見えない、真っ暗でやばかった」

「コリュが後ろで照らしてくれてなかったらほんとやばかった。あ、そういえばライトで照らしてるだけでコリュ戦ってないでしょ」


「出るわ出るわ、小型が多いわ。たまに親かなんかの中型がいるくらい? さすがに地下では動きずらい大型はいないみたい。コリュウは後ろでの援護任せだったし大型のエクエリで建物戦は無茶があるし、生体兵器が私たちに飛び掛かってきた時ようの保険だったし」

「生体兵器、ね、あれ、すごくキモかった、なんか終始笑ってたし。足元どろどろだし、転んで制服もべたべたしてるし」


「広い範囲を移動するタイプじゃなくて、拠点防衛や潜入とした生体兵器が住んでいるだろう、動きがトリッキーだけど攻撃力はさほどないっぽかったし、もちろん生体兵器基準で人間なんか簡単にバラバラにできるけど」

「怖いね、掴みかかられた時助けてもらえなかったら今頃血だらけだったかも」


「それはコリュウが助けたやつだな」

「ありがとコリュ」


 報告に来て相槌を打つ暇もなく話す朝顔隊の二人、話が終わらなさそうだったのキサキがで無理に割って入る。


「ご苦労様でした、以後この場で待機、階段をも仕上がってくる生体兵器がいれば排除してください。私たちが戻ってくるまでここを守っておいてください」


 朝顔隊を階段前に残しユユキたちはようやく建物の奥へと進めるようになりユユキとキサキは後ろ向きに入ってくる装甲車を引き連れ先に進ませていた一般兵と合流し最奥の部屋に到着した。


「上と下の回をぶち抜いてる、さすがにシェルターすべての電力を賄うとしたらこれぐらいの規模は必要か……到着、で、ここで何を回収するの?」

「シェルターの脳を奪って帰る。あとここは中央の電力設備で、サブとバックアップと電力施設は点在してる、ここだけじゃない」


 広く大きめの倉庫ほどの天井の高さと奥行きがある。

 その広い空間のほとんどが複雑な機械で埋め尽くされていた。


「こういう時って心臓を奪うんじゃないの、ことば的に」

「残念、ここに来たのは発電機ではなく、電力供給を効率よくするための人工知能をいただきに来た。だから脳でいい、10年以上前のものだし破損しているだろうけどそんなもの工業系のシェルターで部品を取り寄せればいい」


「だったら最初からパーツをそろえてくみ上げればいいんじゃ? それこそ王都で発注すれば作れるでしょう、予算はすごいことになるだろうけど」

「それはばれる、さすがにパーツを買い漁っていては私たちの作戦がばれる。この作戦はお姉さまから託された内緒の作戦、途中で感づかれてしまえばすべてが終わる」


「まぁ、なんでもいいや。さっさと回収しちゃって」

「それが、どこにあるのかよくわからない」


 巨大な空間もよくわからない泥でまみれており、機材の識別ができない状態。

 滑って転げ落ちないようにおっかなびっくりで階段を下り、うっすら読める壁にかかった地図をライトで照らす。

 地図に着いた泥を拭けまもうすこしよく見えるのだが、異臭を放つその泥を拭こうとする者はいない。


「たぶんここね、さぁみんなで素早く回収して帰りましょう」

「キサキは、はよ帰りたいんだもんね」


 強化外骨格を装着した一般兵がその辺からはがした板で除雪車のように床に積もった泥を一気に掻き出して安定して歩ける場所を作ると、そこに一般兵たちが他の装甲車に積んできた投光器を設置し装甲車のバッテリーと繋げ明るさを確保する。

 一つ二つと明かりがつき広い空間を明かりで照らす。


「見つけた。取り外して装甲車へと運んで」


 キサキが地図を見て探していた機械を見つけるとすぐに指示を出し、発電機からの取り出し作業が開始される。

 照らされ映し出されるのは巨大な機械類だけでない、下の階に潜んでいた生体兵器が食べたと思われるほかの生体兵器の骨。

 他の一般へが作業を続ける中、ユユキは一般兵たちの間をすり抜け、泥と一緒に部屋の隅へと積み上げられた骨のほうへと歩いていく。


 ――骨、比較的新しいものもある。歯形もついている、下にいた生体兵器のサンプルが欲しいところだけどあとであの精鋭に一つ拾ってきてもらうか。見たところ犬のような哺乳類の頭蓋や大腿骨が見える……。


 泥には触れないようにして遠巻きに骨を観察していると、彼女の目に留まる一つの大きな骨。

 大きさは中型サイズと思われ大小入り混じる骨の中、ひっそりと奥のほうに埋まっていた。


 ――これは魚の骨、珍しい……いや初めて見る。魚型の生体兵器がいるのかここは。こんな地下にどうやって? 侵入経路が謎だがそんなことを言い出したら、ほかの地域にいる生体兵器もあらかた生息区域がおかしいし……旧時代の排水路や知られていない地下空洞、ほかの生体兵器に運んでもらったか? 自力で掘ったということも考えられるが確かな手掛かりがないのなら考えるだけ無駄か。


 手に取ってよく調べたいが泥の奥の方、踏み込んでいきつかみ取る勇気もなかったため、ユユキは回収をあきらめ一つため息をついてほかに見るべきものがないか探す。

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