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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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次への鍵 7

 一般兵たちに指示を出し下で生体兵器が待ち構えていることを考え、一般兵たちは慎重に階段へと近づいていく。

 階段は半分まで来たところで折り返して下っていく一般的な階段、一段ずつゆっくりと降りていき下の階へ向けてライトで照らす。

 先ほどと同じように一般兵たちの探索が終わり安全が確保できるまで、装甲車の前で待つユユキとキサキ。


「しかしまぁ、この泥はなんなんだろか。壁や天井にも泥のついた跡がある。若干の粘り気のある、ヘドロ? 燕や蜂などのように巣を作るために外から持ち込まれた物だろうか、もっと単純な生体兵器の排泄物なのだろうか」


 そんなことを考えながらブーツの先で泥をかき分け動けるスペースを作るユユキ。

 そんなことをしても滑りやすいことに変化はないが歩くたびに泥のねちゃりとする不快感は少しばかり減った。


「報告遅いなぁ、はよ、はよ……ああ、もう先急ごうかな」

「やめてよ、ここはどんなに急いでいても安全確認出来てからすすも。それと、あんまり階段に近づかないほうがいい、滑り落ちるかもしれない襲われたら助けられない」


 階段を下りていた二人の一般兵が下の回から延びてきた腕につかまれ闇へと引き込まれきえる。

 悲鳴は後から聞こえてきた。


 残るは静寂。

 一瞬の出来事で近くにいた誰もが反応できなかった。


「見えた?」

「灰色の腕に薄く毛が生えていた、ことしか」


 何気ない動きでユユキの後ろに隠れるキサキ。


「ちょっと、私を盾にするな」

「大丈夫よユユキ、そこまで生体兵器のことがよく見えるなら襲ってきてもきっと躱せるから」


 安全圏にいる二人が緊張感もなくじゃれあっているうちに、数を増やして階段の下を見に行った一般兵の悲鳴が聞こえた。

 そこでさすがの二人も冷静になって作戦のことを考えはじめる。


「戦力の分散投入、愚策ね、このままいたずらに戦力を削らないほうがいいでしょ、精鋭でも呼んでくる? まだ間に合うと思うけど」

「そうね、それが安全ぽいわ。そうしましょうユユキ」


「キサキ、さっきまで精鋭を連れてくるのは反対していたのに、やけに素直ね」

「死にたくないし」


「素直」


 防護服に身を包み重たい酸素ボンベまで背負ったキサキがのそのそと装甲車のわきをすり抜けて精鋭を呼びに行き、その間にユユキが一般兵たちに地下への偵察を中断させた。


 数分後精鋭を連れて戻ってきたキサキ。


「うへぇ、建物の中も汚ね」

「転んだら絶対臭いつくよね? 洗って落ちるかな、落ちなかったらどうしよ。制服新しくなって間もないから変えがないのに」


「昔の着ればいいんでね? まだ十分似合うと思うけど」

「この前まで来てたしまだ着れるよ、まだ着れるけどせっかく成人用の制服に変わったのに。いやかわいいからいいけどさ」


「いやなら生体兵器に襲われないように戦うしかないじゃん」

「それができれば、どれだけいいことか。狭いところで無傷って今までにないんだけど」


 精鋭は三人一部隊、女性二人が小型のエクエリで男性一人が大型のエクエリをもって、私語が多く緊張感のない状態で階段の下へと向かって降りていく。

 精鋭が階段を下りて行ったあとユユキはキサキのそばまで歩いていきこそこそと小声で話す。


「なんで寄りにもよってあの隊を呼んできた?」

「え、なんかダメだった? 待機している中で一番暇そうにしてたから」


「ダメ……ではないけど、あの隊は」

「朝顔隊、隊長のことほかの部隊からは暗雲のアオゾラって呼ばれてみてるみたい。王都で数人しかいない二つ名持ちよ、すごくない!?」


 精鋭を見送り階段の下から泥の跳ねる音とキャッキャと騒ぐ声が聞こえてきた。


「戦闘が始まったみたいね」

「そうね。で、なんだっけ?」


 生体兵器との基本的な戦闘は適度な距離と多対一であること。

 強化繊維で生体兵器の攻撃を防げるとはいえ囲まれれば顔や手などの守られていない部分がいずれ狙われ、素早く機敏な小型の生体兵器に捕まれば武器を奪われ体の自由を奪われ嬲られながら死を待つだけになる。


「……それは王都のは称号として与えられてるもので、彼女の場合とはわけが違うわ。ほかの隊から言われているだけ、二つ名って意味でなら一緒だけど」

「え、違うの? ていうかなんで引きこもりのユユキがそんなこと知ってんのよ。生体兵器以外のことはからっきしなのがあなたのとりえなんじゃないの?」


「キサキはちょいちょい私を馬鹿にしないと気が済まないの? すべては知らないけど精鋭の情報なら王都で管理しているんだから、見ようとすれば簡単に閲覧できるわ」

「そんで、あの隊は有名なの?」


「強いは強い、北の侵攻作戦でマクウチシェルターに向かう最中迷子になって一部隊だけで名前付けすらされていない特定危険種が蠢く廃シェルターまで行って帰ってきたほどには、報告では戦闘は8回23種、軽装甲車は装甲のほとんどが削れ落ち彼女らの帰還時、エクエリのバッテリーはすべてが空。死骸の回収は無しでその報告を裏付けるものはない、戦闘報告が正しければ途中エクエリなしで生体兵器をやり過ごしたことになる」

「ま、多少話を持ってるでしょうね。変えのバッテリーをいくつ積んでたか知らないけど、一回での戦闘での集中力なんか結構なものなんでしょ? 精鋭のこと全然知らないけど、マクウチシェルターでの出来事はお姉さまから聞いて多少は分かる、災害種級の生体兵器が二匹同時に出たって」


「一匹はもともとこのあたりにいた生体兵器、姿を隠し魔都に潜んでいるかと思ったけど北にいて皆を驚かせた、アシットレイン。もう一匹は交戦情報が少なく被害も小さかったから特定危険種扱いになってたけど、マクウチシェルターを襲った重殻は災害種に指定されたわ」

「へぇ、私その特定危険種とか災害種とかよくわからない。どう違うの、わかりやすく」


「特定危険種、強い。災害種、超強い」

「なるへそ」


「そんないつ災害種級の生体兵と戦うかもわからない北の地で、仲間もなく孤立した部隊が北へ行って帰ってこれるわけがない」

「うわ、私そんないい加減な報告する隊連れてきちゃったんだ」


 しばらくして音はぴたりとやみ静けさが戻る。

 精鋭が戻ってくるまで時間がかかりそうでフロアを調べ終わった一般兵たちを進ませる。

 ユユキたちは精鋭が負け興奮した生体兵器たちがわらわらと出てこないとも考えられないこともないため、いざという時いそいで装甲車に飛び込み逃げられる体制で待っていた。


「音が止んだ」

「どっちが勝ったのかね」

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