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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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次への鍵 6

 

 ライトに照らされている場所以外何も見えない空間。

 正面は強力なヘッドライトで照らしているものの、車内の明かりと補助用のサイドのライトをつけても車両の側面や背後は十数メートルくらい先しか照らせない。


 地下の迷宮のような地下街は十分に車両と通れる幅がありガードレールの向こうに店だったものが並んでいる。

 天井にひびがありその際どこかの排水管が壊れたのか、水の流れる音が聞こえ雨水が流れ込んできているのか異臭を放つぬかるんだ地面はトンネルのどこまでも続いていた。


「全然見えない、注意なさい店の中から出てくるかもしれない」


 キサキが車内でくつろいでいる一般兵たちに緊張感を持たせようとするが効果は薄く、ユユキに助けを求める視線を送るが彼女は蒼淵の眼鏡を指先で押し上げ小窓から外を向く。

 地下の通路には障害物はなく災害種の攻撃時にここに放置されて朽ちて動きそうにない車両たちが通路の端、ガードレールを突き破った先に押しやられている。


 ――さすが工業系シェルター、物を運ぶための道がしっかりとしている。でも本来は道路に止まっていたと思われる車、端っこに押しのけられている? 見た感じここを何かが通った後に見える、大型の生体兵器でもいるのだろうか。


 ユユキが頬杖をついて光の照らされている範囲で地面を見てみるも、泥でぬかるんだ地面に大型の生体兵器がいるという証拠になる足跡らしきものは見えない。

 退屈そうに頬杖をついている姿を見てキサキがやってきて、座っているユユキを追いやり一つの椅子を二人で分け合って座り絡んでくる。


「ユユキ」

「なに? 人を尻で突き飛ばすな」


「細かいなぁ。で、こういった暗くて何も見えないような場所にいる生体兵器ってどんなものが多いか説明して」

「なんで私が……光がほとんどないから目を使わないものが多い、嗅覚か聴覚が発達したもの、振動に敏感なものや熱などを感知できるものと地上で見れない変わったものが多い」


「あなたのシェルターでは」

「研究はしているが作ってない」


「はぁ、ユユキの話はつまらないわ」

「そりゃどうも。私は根暗なもので」


「しっかし、どこまで降りるの? 最下層まで連れていくつもり?」

「ゆっくりだからそう感じているだけで、まだ一階を進んでいるだけよ。さっきたまたま読める看板があったけどまだ地下一階、目的の場所は地下3階でしょう、まだまだ時間がかかるわ」


 赤毛の女の案内のもと地下を進む装甲車。


「ここです……」


 声の出し方を忘れていたかのように空気の漏れるような蚊の鳴くような声で赤毛の女が指をさし、それを聞いて車列は周囲に展開するように停車した。

 到着した建物は一見他と変わりはなく建物としての規模が少し広いなと思える程度。

 看板やオブジェなど場所を示すものは設置されておらず、彼女の案内なしにはスルーしてしまいそうな場所。


「ふーん、ここが発電所。外観的に他と変わりなく言われないとさっぱりな建物ね」

「地下だし幅と高さに制限があるから、個性的な外観にはしずらいんでしょ。工業系シェルターだから機能性を優先した外観なのかもしれないけど」


「さて、もうこの二人は必要ないんだけど解放する?」

「ここで? バカじゃないのそんなん死ぬに決まってんじゃん」


「別にいいでしょ、それともユユキどっちかほしいの? 持ち帰って生体兵器のえさにでもする?」

「しない。お姉さまが生かしておいたんだから、私たちも生かしておくべき」


「ま、どっちでもいいけど。それじゃこのまま拘束しておくわ。逃げ出す可能性があるからトイレに行きたいといっても放って置くように」

「さすがに漏らされたら大惨事よ?」


 荷物を持ち作業用の外部骨格を装着し装備を整え建物の中に入る用意をする一般兵。

 ユユキとキサキも強化繊維の上着を脱ぎ代わりに防護服に着替え外に出る用意をしていた。


「さぁ、行くわよ。はよ終わらせ、とっととこんな臭い場所から出ていきましょ」

「すぐに鼻が馬鹿になるとおもけどなぁ。それに、扉を開ければ車内にも臭いは入ってくるし」


「だったら地上にもどるまで着ているまで」

「そうですか」


 マスクをつけ酸素ボンベを背負い右に左にとよろけるキサキ。

 そんな彼女を支えるユユキは最低限自分の服が服が汚れないように防護服を着ただけで何かあったときのため動きやすいようにしていた。


「地下のほうが地上より生体兵器がいると思ったのだけど、ここまで一匹とも接敵しなかったわね。ならこの先も何もなく無事に終われそうね」

「なにそれ、これから襲われますってふりなの?」


 精鋭たちにはその場で待機を命じ一般兵たちは懐中電灯とエクエリを持ちぞろぞろと建物の中に入っていく。

 彼らの最後に後ろ向きに照明などの機材を積んだ装甲車が入ってくる。

 車両がぎりぎり一台はいれる高さと幅の通路。

 地下は上からも下からも物を搬入できないため、工場などで使う大きな機械などを運ぶための専用の通路を通る。


 最も資材を運び終えたら普通の通路として使われるため、ロッカーやオブジェ、受付に使われていた大きな机などが並べられ装甲車の進路を妨げている。


「建物に入ったらどろどろは少し減った」

「それでも足が滑りやすいわ、助け合っていきましょう」


 強化外骨格を装備した一般兵が机や棚を近くの部屋の中に強引に押し込んでいき、ぬかるみ足を取られやすい地面をユユキたちはお互いを支えあって一歩一歩進む。


「キサキが私につかまってるだけじゃない。まったく、それと奥に生体兵器がいるのかもしれないのに、精鋭を連れて行かないの?」

「私たちが行うのはお姉さまに頼まれた秘密の作戦なんだから、お姉さまの指示にないことはできない。一般兵を連れて行けというのなら一般兵しか連れて行かないわ」


「そういうことなら納得だけど。精鋭いないとか、この先は地獄か」

「すでに似たようなものでしょ、地の底にいるんだから」


「扉は破壊され室内も時間だ経ったとは別に荒れている、それと手すりや照明も破壊されている。間違いなく生体兵器はこの地下のどこかにいるわ」

「いまだに一匹もあっていないけどね」


 途中の部屋の中を先に行った一般兵たちが、一つ一つ部屋の奥まで入って調べ生体兵器がいないかを確かめていく。

 進む先にいくつもある両サイドの部屋を調べさせている間、後部のドアが開け放たれたままの装甲車の前で待つ二人。


「一つ一つの部屋が広いわね、調べるのに時間がかかる」

「下にも階があるから下も調べさせないと、さっき階段をスルーしてきたけど」


 数人の一般兵を集め二人は階段まで戻ってくると、飲み込まれるような闇を覗き込む。

 その暗闇から不意に音が聞こえ皆身構えた。


「今なんか聞こえた、ねぇ聞こえたよねユユキ」

「人の声? 男の人の笑い声みたいなのが聞こえたけど」


 かすかではあったが暗闇の奥から聞こえてきた声に顔を見合わせる。


「まさか、こんなところにいるわけないじゃない」

「でも確かに今笑い声みたいなのが聞こえた」


「私も聞いた、でもあり得ない」

「こんなところに人が、いる?」

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