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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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次への鍵 5

 日が傾き建物の陰が伸び、いたるところに生体兵器が潜んでいそうな暗闇が増えたころに車両は中央区へとたどり着いた。

 一団は地下へと降りるトンネルを前にして一度精鋭たちの休憩をはさむ。


「さてついたわ、戦いにつかれた精鋭たちを休ませたら下へと降りていくわ。ここからが本番よ、テンション上げていきましょう!」

「はぁ。戦い見れないとか、いよいよ私は必要?」


 踊りだしひとりで騒いでいるキサキと比べ、ユユキや精鋭たちは長い旅路で疲弊していて座席に座ったまま動こうとはしない。


「今日一日、ほとんど生体兵器の戦闘尽くしだったじゃない。すぐは精鋭がかわいそうでしょ、それに迂回と待機でそれぞれの装甲車の運転手だって疲れてる」

「だから、はよ行きたいのを我慢してここで休憩をはさんでいるんじゃない。無理させて精鋭を失うわけにもいかないし、失敗なんてしたらお姉さまの信頼を失ってしまうもの、急いでいるからこそ万全の状態でいることを欠かさないんじゃない。急がば回れっていうほどにね」


「それにしても、この廃シェルター生体兵器多くない? 普段見る数倍いたように見えたけど。私がこの付近に来る時より接敵していたけど」

「いま、魔都の近くにあるシェルターすべてに、各地からシェルター守護のための精鋭までも引っこ抜いて集められているのは知っているよね。死の演奏家とかクラックホーネットって名前の災害種の餌となる生体兵器を殺しつくして兵糧攻めにしているの。知ってるユユキ兵糧攻めってなにか?」


「知ってるけど、なに。じきに魔都に攻撃を仕掛けるんでしょ、そのために周囲の生体兵器を手当たり次第に狩りつくして、北の元シュトルムの支配区域から生体兵器が出てこないようにもしてるんでしょ。この間北で下手にちょっかい出したのか災害種に襲われたらしいけど、そんくらいの情報ならこっちにだって入ってくる、馬鹿にしないで」

「ユユキ、自分の研究にしか興味がないと思ってた」



「基本は仕事しかすることがないから」

「それじゃ、道案内でもさせますか。ようやっと捕まえてきたこの女の出番だ」


 手足を縛ったのち座席に座らせシートベルトで身動きが取れないようにしていた拘束を解き、キサキは赤毛の女性の着こんでいる強化繊維のコートを脱がせる。


「はーん、やっぱり」


 キサキはゴム弾銃を赤毛の頭に突きつけているため抵抗はなくコートを受け取ると埃を払ってその材質を確かめ丸めてロッカーの中に突っ込む。


「どこで手に入れたものか知らないけれど、このコートは返してもらうわ。元は精鋭を束ねている王都からの支給品なのだから」


 赤毛の女性は何かを口にしようとしていたもののゴム弾銃を見て口ごもり、ボロボロの男の体に寄りかかった。


 ――キサキは強引すぎる。話し合えばこうならなかったかもしれないのにことを急いだばかりに……こうなってしまったからには隙を見せて暴れられないようにしなければ。彼らは望んでか望まないでか、シェルターの外で生きる無法者。私たちの知る普通が通用しない、キサキはそのあたりわかっているのだろうか。


 特に何をしたわけでもなく無理やり拘束され連れてこられただけの二人を見て、いたたまれない気持ちになる。

 改めて女性の手足を拘束すると運転席へと運び助手席へと座らせた。


 トンネルの入り口も蔦で覆われ地下へと続く穴は地の果てまで伸びているかのよう。

 別の入り口から吹き込んでいるのかトンネルは生き物のような低くうなり声のような重たい音が響く。


 ――不気味な、暗闇。先が見えないというのは純粋に怖いという感情しか出てこない。


 暗闇を見ていると背筋に寒気が走りユユキは自分の席に戻っていく。

 連れてきた一般兵は40名ほどはユユキとキサキが乗っている装甲車ともう2台の3台に集まっていて、周囲を精鋭たちがのった同じ型の装甲車が守る。


「中にも生体兵器がいるだろうから、精鋭を先行させないと」

「私たちの乗っている装甲車に精鋭を同乗させておかないの?」


「乗せないに決まってるじゃない。私たちがやっていることは今はまだ私たち以外は誰にも内緒のことなんだから、その目的を知られてはいけないの」

「同乗している一般兵の皆さんには知られてもいいんだ」


「お姉さまの指示だもの、現地で集めるでなくなるべく多く王都から一般兵を連れて行けとの」

「お姉さまの指示なら仕方ない」


 休憩が終わると道の幅的に車列を二列に分けゆっくりとヘッドライトをつけて装甲車は闇の中へと進んでいく。

 流石に光のない場所に生えないのか地上を覆っていた蔦は十数メートルも進むと生えなくなる。

 次第に地面はぬかるみその地面からはヘドロのようなにおいがしたため、開けていた窓を閉め装甲車最大の火力である大型のエクエリのついている天窓も閉めた。


「いいの? 生体兵器が襲ってきたとき対処に時間がかかるけど」

「襲ってこない生体兵器を警戒するよりくさいほうが嫌でしょ。臭いがついたりしたらどうするの、嫌でしょ? 生体兵器が出ても周りにいる精鋭が何とかしてくれる。そのために集めたんだから」


「真面目な隊もいれば、不真面目で有名な隊も見えるけど。今回の作戦はどういった基準で精鋭を集めたの」

「適当よ、廃シェルターヒバチに行きます手伝ってくれる人ーって集って集めた。そしたらこれだけ集まったってだけ。王都に恩を売ったり伝手を持っておこうっと思ったりしたんじゃない、いちいち調べない。戦って結果を出してくれればそれでいい」


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