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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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次への鍵 4

 廃シェルターヒバチ、純粋にクラックホーネットによって破壊されたシェルターで現在は放棄され魔都にも近いため誰も近寄らない。

 災害種との戦闘で大きく荒れ逃げ惑った人々が殺到したであろう防壁の門は開かれたままで、戦闘のあった痕跡と残骸だらけの防壁をくぐり廃シェルター内に入った。

 シェルターの内側は何もかもを覆い隠すように草が生い茂り、遠くに見える建物はどれも大きくひび割れ半壊し瓦礫の山が見える。


「ここも埃っぽい」

「さぁ、ついた。さっさと終わらせてさっさと帰ろう」


「これ進める道あるの?」

「知らないわ。さぁ、どんどん進みなさい」


 精鋭を先行させ無事な道を探させている間、窓を開け蔦に覆われた戦車を見上げるとユユキは携帯端末をかざして蔦の固まりを写真に収めるとすぐに窓を閉めた。


「湿っぽい。ユユキこれはなんなの」

「蒸すわね。さぁ、私もさっぱりここからじゃ普通の草じゃないってことしかわからないわ」


「どこに地下まで続く直通の穴が開いているかわからないから下手に進めない。なんだかわからないけどこの蔦はシェルター全体を覆っているみたい」

「何らかの生体兵器なのかも、少し調べてこようか。道具は最低限持っている」


「これが生体兵器? シェルター全体に広がってるっていうのに、それってどんな規模よ」

「植物型は数は少ないけどいなくはないよ、それに数が増えればそれだけ大きくなる。北で発生している藻、南で群生している竹や多肉植物、私も建材に使う杉や檜の改良を任されたこともあるし。植物型はどちらかというと防衛向きで直接戦闘に活かせないから出会った人は少ない、これが生体兵器だというのならその特徴を知っておかないと何か起きるかもしれない」


「じゃ、いっておいでよ。精鋭が戻ってくるまでまだかかりそうだし」

「言われなくても」


 装甲車の後部から降りユユキは鋏で茎十数センチと葉を一枚きり取り車内へ戻って窓を開けて座ると腰に下げている二つのカバンから試験管と薬品を二本取り出しその中にそれぞれ茎と葉を突っ込む。

 その様子を遠目に見ていたキサキがユユキの肩に乗りかかるように覗き込んだ。


「何してんの?」

「アルカリで分解。何かしらの生体兵器だったらこれで葉脈とかを見ればわかる。生物的に不自然に組み合わされている個所があったり、薬品の反応によってわかったりする」


 後から薬品を流し込み蓋をしてかき回すように降っていく。


「それでそれで、何かわかった?」

「まだ溶け始めたばかり、時間かかるからあっち行ってて。分解時に毒ガスとか出るかもしれないから危ないよ」


 鬱陶しさに薬品の扱いに気を付けながらも彼女を押し飛ばし追いやったものの、数分後戻ってきたキサキが再び寄りかかりユユキへ尋ねる。


「結果は?」

「生体兵器」


「じゃあこいつら襲ってくるの? やばくね」

「いや、増えるだけ。葉の裏に棘が隠れるように生えていて、長い蔦が車輪や履帯に絡まり降りてきたところにとげが刺さるっように作られたんだと思う、この植物型の生体兵器はうっそうと茂り、その下に潜った生体兵器やトラップをぎりぎりまで気が付かないようにさせる。刃物であったり切れたけど引っ張りにはすごく丈夫」


「だとしたらこれから先、歩きで移動になるのか。かったる」

「いや、この生体兵器だいぶ弱ってるからこのまま進んでも問題はなさそう。丈夫って言っても切れないわけじゃない、現にここまで車輪に絡まりながらもどの車両も故障は起きていないわけだし。このまま走っても問題はなさそう」


「なんで、行動を不能とさせるのがこの生体兵器の役目なんでしょ? 言ってること無茶苦茶じゃない」

「そこは工業系シェルターだからじゃない、土地が汚れていてこの生体兵器は本領を発揮できなかった、と考えるべき」


「さすが、生体兵器には詳しいなユユキは。毎日引きこもって研究しているだけはある」

「うっさい。すべてはお姉さまのためだから」


 精鋭たちの交信で進んだ先の無事を確保できるとユユキたちの乗った装甲車たちが進み始める。

 とはいえ廃シェルターのどこに生体兵器が潜んでいるかわからないため、廃墟を進む速さは車両を降りて警戒する周囲の精鋭たちの進行に合わせて歩く速度。


「それで誘拐してきたあの二人はどこで使うの?」


 工場に巻き付く蔦を見ていたユユキが、ふと爪の手入れをしているキサキへと話しかけた。


「地下に入ってから。このシェルターは王都に加入する前襲われたため町も地下も地図がない。だから連れてきた、シェルターの重要な施設は中央区の地下にしかないからそこまでの道のりを確保して地下に降りてから、それまでは暴れられると困るから簀巻きのままでいい」


 先頭を進む精鋭たちの戦闘音が静寂な廃墟に響き窓を開けている装甲車内まで響く。


「精鋭、また戦ってる。外は本当に生体兵器が多い、下手をするとこっちにも来るかも、怖いなぁ」


 頬杖をついてそんな音を聞ているユユキのもとへと暇を持て余したキサキが寄ってくると彼女の隣へと腰を掛けた。


「生体兵器が多いねほんと、わらわら出てきてない? 少し進んで止まって少し進んで止まって、1時間程度で着くはずの中央区に5時間かかってもつきやしない」

「寄りかからないで重いから、なに、さっきから落ち着きなく、暇なの? なんか時間潰すもの持ってきてないの?」


「時間潰すものって何、ユユキはなに持ってきたのさ」

「私はやらなきゃいけない仕事を持ってきてるし、目を通していない資料もある。あんたが私を連れ出して戻っても仕事が溜まってるの、キサキはそういう仕事は無いの」


「仕事? 今してるじゃない。ほかの仕事なんかしてる場合じゃないでしょ」

「私はキサキが何をしているか知らないけれど、今、暇しているならその間にできることないの?」


「ない、私は任された仕事に全力で挑んでいるから」

「そう、今度からその全力に私を巻き込まないで迷惑だから」


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