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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
12章 流れ星の光 ‐‐怪物たちの蟲毒‐‐
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次への鍵 3

そんなことをしているとユユキの後ろに様子を見にやってきたキサキが立っている。


「で、あんた何してんのさ? その注射……もしかしてあれ?」

「見てわからない? お姉さまの真似事、私たちにやられたように痛めつけて情報を引き出す。もちろんここでやることでどこかに隠れている仲間が助けにのこのこ現れることも期待している」


――とでも言わないと、キサキは満足しないだろうし。


とはいえ彼女も無意識のうちに常人なら気にも留めない気温差とかび臭い衛生状態、カガリに会えないイライラをぶつけられる相手を探していた。

キサキを追い返し男の腕に注射をして数秒後男に変化があった、全身に走る激痛、内側から引きちぎられるような痛みが男の体を駆け巡っているだろう。

撃たれた薬品は傷をいやすため体を活性化させ、傷口以外も急激な治癒能力の上昇で体が追い付かず悲鳴を上げている。


――記憶が、その痛みは体が覚えている。悲鳴を聞いて、その分、痛みがわかる分おぞましい。


男の叫びを聞いてユユキは耳を塞ぐ。

喉がつぶれるような声を出しているがそれも治癒されるであろう。


「拡声器、持ってきて」


男が気を失ったところで絶叫は途絶えじっとりとかいた自分の汗をぬぐい、ユユキは振り返って眼鏡の位置を直し背後で何が起きたかわからないでいる一般兵に命令した。

四方に散らばり生体兵器の警戒をしていた精鋭たちが男の絶叫を聞いて何事かと集まってくるも、王都の人間にはかかわらないように距離を取って事の次第を見守ってっている。


『テス、テス。聞こえているかな、聞こえていたら出てきてほしい。じゃないともう何本か打つ羽目になるし、最悪耐えられなくなってダメになるかも。別に捕まえて殺そうってわけじゃない、道案内をしてほしいだけ、終わればちゃんと報酬も払うし開放もする。どう、だめ? もう一本彼に打ってみようか』


しばらく待ってみるが返答はない。


――これ以上は無駄か、彼を開放して後をつけさせたほうが早いか。


とりあえず言ったことは実行しようと腰のカバンから二つ目にアンプルを取り出す。


「まって! ……ください」


廃墟に女性の声が響く。

その場にいた全員が動きを止め声の主を探した。



両手を上げ建物の暗がりから赤毛の女性が出てくると、一般兵たちはいっせいにゴム弾銃を構える。

キサキは指示を出し武器を下ろさせた。


「きたきた。私の手柄で報告を」

「よくやったわ、さぁ捕らえる用意を。注意しなさい、お姉さまの情報によると数人がかりで返り討ちにあうらしいから捕縛用の網を。射程に入れるまで警戒されるから構えないで」


暗がりから出てきた赤毛の女は季節的に暖かくなってきたにもかかわらず、ほつれたぼろい赤いコートを身にまとっている。

その防寒具の下はさすがに軽装だがちらりと刃物の柄のようなものが見えた。


「武器を捨ててもらえる? じゃないと」


キサキは自身が携帯している銃身を短くし小型化したゴム弾銃を構え足元に倒れている男へとむける。


「この距離なら威力的に骨が折れる、胸に当てれば内臓に刺さり死ぬかもしれない。さ、早く」


赤毛の女は立ち止まり腰に手をやり地面に刃の厚いナイフを落として再び歩き出す。


「体を調べてもし武器になるようなものが見つかった場合、あなたたちの無事は約束できない。最悪手足を切り取ってでも道案内してもらいますから。この薬品があれば多少の傷なんかでは死ねなくなるし」


鞄中を見せるようにアンプルをちらつかせユユキが念を押すと、赤毛の女は靴を脱ぎ、コートの袖から細く長い鎖を落としさらにナイフを数本取り出し地面へと捨てた。


――本当に持ってた。こわっ。武器だらけじゃんこの人。


彼女の脱いだ靴には鉄板が入っていて細い鎖はすごく丈夫なもので先端に重しがついている、そして持っていたナイフの一本は刀身が黒く輝いていた。

キサキがゴム弾銃をしまい地面に落ちているナイフを拾い上げる。


「黒刀の折れたやつを研ぎなおしたナイフ? よくもまぁ加工の難しいものを、さぁ、彼女の腕を縛って置いて頂戴。向こうに着くまでは足も縛って置いて、男のほうも起き上がって暴れられると困るから縛って置いて。さ、捕まえたし、さっさと行くわ。お姉さまの頼み事早く終わらせてシェルターへ帰るんだから」


縛り上げる一般兵たちが赤毛の彼女に変なことをしないようにユユキとキサキがゴム弾銃を構え見張っている。


「男のほうはここに置いて行ってもいいんじゃねの? だめなん?」

「あっちの女のほうが厄介なんでしょ、人質にできるこっちの男がいればいいじゃない。何かあればこのボロボロな男にゴム弾銃向ければ済む話だし、何なら重しになる枷でも二人をつなぐようにつければいいのではないの?」


「なるほど、さすがユユキ。根暗い手を思いつく」

「まてまて、キサキが今ゴム弾銃を突きつけてたでしょ」


「さぁ、いよいよ本命のヒバチへ。集めた精鋭たちが無駄にならないようにガンガン戦いの場を用意しないと」

「早く終わらせて帰りたい。式典の準備で忙しいのに、私が不在だなんてありえない」


捕らえた二人を装甲車に乗せ撤収準備を澄ませると廃シェルターを出ていく。

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