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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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討伐、勝利、そして 3

 倒れたシマが目を覚ましたのは戦闘から三日後の昼だった。

 目を開けると白い天井に蛍光灯、仕切りのカーテンが視界に入り消毒用の薬品の匂いに自分のいる場所が病院だとわかり体を起こす。


「ここは……病院か」


 腕には輸血を受けた跡が残っていて固まった体を動かしながら痛みがないのを確認した。

 病室にテレビが置いてあり午後のニュースが流れていて、もめ事をおこした鈴蘭隊の隊長が移っている。


『……何だってんだ! だったらお前たちが戦えばよかっただろ、文句があるなら生体兵器と戦ってから言えよ。隠れて私たちに聞こえるようにこそこそと、ただ逃げることしかしなかったくせに。お前たちが精鋭の採用試験を受けに来たら私が全員ぶっ殺してやる!』


 映像はそこで切られ前後がわからずだったが、ニュースキャスターやコメンテーターが精鋭としての自覚がないだの、品がないだの、戦うことしかできないシェルターでは楽ことのできない社会不適合しゃだの、無能だの言っていた。


 家族のだれかが見舞いに来たのかベットのすぐ横の机にシマの荷物が届いており、テレビの音声だけを耳に入れつつ替えの着替えを着て病室を出る。

 その後軽い検査を受け体に異常がないとわかるとシマはすぐに退院し町へと出た。


 ――3日か……そんなに寝ていたって気がないから、ついさっきのことのようにも思えて日が立ったっていう実感がないなぁ。


 黒煙を上げていた町は元の青空へと戻り、避難した人も戻ってきていて仕事も始まっている、騒ぎでドタバタしごみが散乱し散らかっていた町も今は綺麗になっている。

 半面、戦闘後の影響で道路が破壊され道は一部通行止め、迂回路などで中央区の渋滞はさらに深刻化していた。


 ――さて、普通に家に帰る前にミナモんとこにでも顔を出すか。急に倒れちまって迷惑かけただろうからな、なんかわびの品でも買っていくか。


 少し寄り道をし土産をもってミナモの家へと向かう。

 下層市民の家は畑の真ん中にぽつんと立つかのように遠く寂しいところに建っていて、ミナモの家も例外なく寂しい場所に立っていた。

 バスを降りてしばらく徒歩で道路を歩いていると風景に違和感を覚える。

 遠くてしっかりと見えないが木造のミナモの家があった場所には崩れた建物の影。


「おい、まさか!」


 ミナモの家のあった場所へと向かって走り出す。

 遠くからで目的地まで数百メートルあるが三日間倒れ寝ていたとは思えない速さと持久力で駆け寄り、近づくにつれ遠くから見えたその陰がどんどん大きくなり景色は鮮明となっていく。

 彼女の家の敷地を囲むようにキープアウトのテープが張られそのテープの中には焼け落ちた建物がある。


「なんだよ、これ……。戦いのときに生体兵器が壊していったのか……?」


 周囲にミナモの姿はない。

 かわりに軽装甲車が止まっていて中に人の姿が見える。

 シマが近づいても何の反応もなく運転席を覗き込むと警備兵は暇だったのか座席を倒し昼寝をしていた。

 窓をノックすると寝ていた警備兵は慌てて起きる。


「お前の顔見たことがあるな、同じ警備兵だったか? 今、俺が寝ていたことを黙っていてくれないか?」

「俺もそういう時があるから、言わないさ。代わりに教えてくれ。ミナモの……、この家はこの間の戦いで焼けたのか?」


「いや、一昨日の不審火でみんな焼けちまった」

「不審火?」


「出火元は家の外、壁に燃料を巻いた後で放火と断定し。今調べている最中だ」

「放火? なんでそんなことが!」


「お前ニュース見ていないのか? いまこのシェルター暮らしの精鋭の家が立て続けに襲撃されてんだよ」

「なっ!! わかった、ありがとう。用事ができたから行く」


 ふとミナモの行く先に心当たりがあったため、これ以上話を聞くよりそちらへ向かうことを優先した。




 すべての雨戸の閉まった一軒家。

 貸し出され精鋭の葉欄隊が宿舎に使われている建物。

 シマは恐る恐る玄関へと向かうと深呼吸を挟んでからインターホンを押す。


「ミナモ、居るのか? ミナモ」


 扉をノックすると少したってから建物の中から物音が聞こえる。

 ドアを開けたのはミナモの父親だった。


「君は? ああ、ミナモの知り合いの……とりあえず中へ、ここで長話はまずい」

「まずいって、それは……」


 彼の手にはシェルター内で働く憲兵や警備兵の持つゴム弾銃が握られている。

 ちらりと見たのがわかったのかゴム弾銃を靴箱へ立てかけ、とりあえずシマを家の中に入れた。


「これを君に向けるつもりはない、何かあったときのためにだ」

「何かって。そんなものどこで」


「ミナモの知り合いのケンくんとかいう一般兵に借りた」

「ケンか」


 ミナモの父親に招かれ靴を脱ぎ家へと上がる。


「家の様子を見たからここへ?」

「はい、一応。いったい何があったんですか?」


「家を焼かれる前に家に侵入者が、うちに押し入った」

「えっ!」


「ミナモは防衛任務で出払っていて、シズクとツユは他の精鋭の……キュウちゃんと言ったか? この人に預けられていて幸い家には誰もいなかったが、買ったものをすべて持っていかれた」


 雨戸に締め切られ昼間から電気をつけている暗い室内、こたつにシズクとツユが寄り添うように座ってテレビをみている。

 台所からミナモが顔を出しシマの顔を見ると駆け足で彼のもとへと歩み寄ってきた。


「シマ!? 退院おめでとう、ごめんねお見舞いいけなくて。もうふらつかない、傷は痛まない?」

「調子はいい、問題ない。それより話は聞いた。この数日大変だったな、どうしてこんなことに?」


 ミナモは双子が見ているテレビを指す。

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