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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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雨 5

 アシッドレイン最大の武器は十数メートルまで飛ぶ致死性の毒液。

 それさえなくなれば通常の大型生体兵器と戦い方は一緒。

 毒に頼っているためか瓦礫などを飛ばしてこないため、隠れるのはほかの生体兵器よりずっと楽だった。


「普通の生体兵器と違うから、無茶はできないなぁ」


 ミナモは打ち水をしたようにまかれた毒で濡れている道路を見て頭の傷を軽く触れる。

 シェルター派機能していないため治療はできず、包帯の巻かれたこの額に毒が降りかかれば死ぬ。

 近づいていくにつれ緊張と恐怖から心音が大きくなっていく。


 ――シマはちゃんとやってくれてるかな。あんな体なのに……とりあえずボクにできることをやらなくちゃ。


 これ以上の犠牲を出さないためにも精鋭たちが時間を稼ぐ必要がある。


「ああ、こんなのボクの戦いかたじゃないのに。やるしかないなんて、シマとシズク、ツユが逃げていれば市街地なんて来なかったし重殻とも戦わなかったのになぁ。と、考え込むのはよくないか」


 装甲車を追わないように気を引くため、毒がギンセツの方向に飛んでいるうちにミナモはエクエリを撃ちこんだ。

 ミナモもギンセツも通常の弾でなく炸裂式電撃弾、小型程度の生体兵器ならその電圧で脳を焼き切ることのできる強力な弾。

 しかし大型の生体兵器には効き目が薄い、かといって効き目がないわけではない瓦礫や壁を伝って手足を麻痺させ多少のダメージを与えることができた。

 そのため直接当てなくても壁を伝って手足を麻痺させ高所を取らせないことはできる。



 装甲車はアシッドレインの横をすり抜けその先の大型スーパーへと突っ込む。

 突撃し入り口を大きく壊しレジを吹き飛ばしたところで止まると扉やハッチから一般兵たちは小型のエクエリを抱えて降りる。


「作戦通りに、もたつけば精鋭が死に我々の命も危うくなる。待機していた一般兵たちもすぐに合流してくれる、迅速にな」

「「「了解」」」


 整列もなく装甲車を下り次第、指示を出すメモリへと返事をしスーパーの中全体に一般兵たちが散っていく。

 ミナモの渡した学ランは腕を通すには細すぎる袖、制服が男物だとは言えシマより彼女の体は小さく袖を結んでそれを肩に羽織っている。


「俺たちの振り分けられたもの急いで集めるぞ、まずは売り場を探さないとな」

「場所しってるよー」「お姉ちゃんとお買い物着てるから」


「助かる、ふたりともどっちだ」

「まっすぐ、すすんだとこ」「おいしい、カレーのあるとこ」


 他の一般兵に続きシマも買い物かごをカートに乗せるとその中にエクエリを乗せて、彼をおいて走り出した双子を追って血をおおく流し動かない体に鞭を撃ち走り出す。

 高い天井に高く積まれた商品もうすぐ咲く桜の花の装飾がなされた店内。

 いつもは人でにぎわう店内も今は誰もいなく、内線も消えていて広い店内にはほかの一般兵が走る音のみが響く。


「二人とも動かないように、かごを押さえておいてくれ」

「「あーい」」


 たどり着いたスパイスの棚。

 棚の奥まで腕を突っ込み綺麗に並べられた瓶を掻き出しかごの中に叩き落していく。


「よし、これで十分か。戻るぞ、あんまり時間をかけすぎると置いて行かれる」


 必要な種類をかき集めてかごいっぱいになると双子を先に装甲車へ走らせシマも戻ろうとカートを押すと横にあった棚が倒れる。

 棚が倒れた拍子に陳列されていた商品が転がり、瓶が割れ飛び散る中身。

 倒れた棚の上に立つニンジャ。


「なんで、みんなミナモたちが倒したはずじゃ。武器、武器を」


 エクエリを探すが食材の詰まれたかごの底。

 しかしニンジャはシマに気が付いておらず別の方向を見ている。

 刹那飛んでくる光の弾。

 すでに戦闘中でニンジャは集まってくる一般兵の攻撃を被弾しながらもエクエリの弾から逃げるように棚の裏へと隠れた。


「走れ!」


 誰かがシマに向かって叫ぶ。

 ボロボロの体の出せる全力で走りだすが転がってきた瓶を蹴飛ばしニンジャと目が合う。

 双子は生体兵器の姿を見てすでにどこかに姿を消していて、それに少しだけ安心しカートを捨ててとびかかってくるニンジャから逃げ出す。


「なんで、まだいるんだよ」


 まとめて襲ってくることはあってもそれがすべてではない。

 広範囲の探索のためグループを分けていたり、戦闘の際様子見で先行させた部隊を作ったりして分散している。

 一般兵としては起訴中の起訴でそのために小型のエクエリをもってスーパー内を移動していたわけだが、生体兵器と戦わないシマには知る由もないが。


『伏せろ』


 装甲車のに備え付けの大型のエクエリがシマの向こうのニンジャを狙う。

 その言葉に反応してシマは慌てて伏せた、というよりふらつき足がもつれバランスを崩して倒れた。

 すぐさまニンジャが追い付きその肩口を噛んだ。

 その上を光の弾が飛んでくる。


 シマに噛みつき下を向いていたニンジャの首の付け根に当たり背骨が焼け、息絶えたニンジャがシマに倒れこんだ。

 ニンジャを追って一般兵たちが集まってくるとシマにのしかかる首の取れそうな死骸をどかして立ち上がらせる。

 隠れていた双子がカートを押して近寄ってきた。


「だいじょうぶ?」「いたくない?」

「あ、ああ、ミナモが制服を貸してくれたおかげで、肩に怪我はない。命拾いした」


 袖を結んで羽織っていた生体兵器の唾液の付いた強化繊維の制服。

 大きく振って唾液を飛ばししわを伸ばすとまた羽織る。

 そして装甲車へと戻っていきカートごと乗せた。


「レジはあっちだよ?」「お金払わないの?」

「いまはいい、あとで偉い人が払ってくれるんだ」


 他の道具を取りに行った一般兵たちも戻ってくると装甲車はスーパーから出てアシッドレインのもとへと戻りだす。


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