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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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雨 4

 引き返すことを決めた葉欄隊。

 しかし負傷者が多く装甲車に乗せられた彼らを安全に治療できる場所まで運ぶためにも渋滞を押しのけるためにも戦車は必要。

 結果として引き返して戦場に戻るのは装甲車一台。


「ボクたちは負傷者の移し替えが終わり次第急いで戻る。人の数は減るけど駆け付けてきた一般兵を作戦に組み込んでいく方向で戦力を増やす」

「戦車がないのは火力的に不安だな」


「仕方がないでしょ、車を押しのけるためにも戦車は必要」

「わかっています、装甲車はタイヤが大きすぎて乗り上げてしまうからな」


 装甲車を降り負傷者が持っていたエクエリを借りた小型のエクエリを持つシマの姿が目に入る。

 ミナモの一瞬の驚きと湧き上がる怒り。

 ギンセツに使い方を教わっているシマの怪我をした方の肩を掴む。

 痛みで反射的に振り替えるシマ。


「シマ、なにしているの?」

「俺も戦う、シズクとツユは置いてきた。二人とも目を覚ましたけど落ち着いてる。お前に似てほんと強い子たちだよな」


「いや無理、帰ってよ。さっきフラフラだったじゃん、血がないんでしょ危ないって。災害種と戦うの、もう助けられないから」

「狙って撃つだけだろ。俺でもできる、戦力は多い方がいいだろ?」


「……そうはいっても震えてるじゃん、膝が笑ってるよ。いいよ警備兵だし怪我人だし、一緒に逃げちゃいなよ。誰も責めないよ、こんな傷だらけになったんだし」

「みんな重傷を負ってるのに、俺は精鋭にしか渡されてない道具まで使ってもらって」


「シマはほんとに人のことをよく考えるね。精鋭のボクは、僕自身と家族のことだけでいっぱいいっぱいなのに」

「そんなの考え方の違いだろ。お前の借金を返済するためと言いながらも、ミナモは結果的に生体兵器を倒して他の人を救ってんだ」


「変な言葉遊びでしょ」

「それでもミナモがこのシェルターのために戦ったことに違いはない」


 報告をしにメモリがおずおずと二人の間に入ってくる。


「話し合っているところすまないが準備が整った。急いで戻るんだろう?」


 もう一度シマを説得しようとしたがすでに戦車と負傷者を乗せた装甲車は走り出した後。

 シマの説得をあきらめて移動のため装甲車に乗り込むと知らぬ間に双子が車両を乗り換えていた。


「二人ともなんでいるの!」

「怪我した人がいっぱいいた」「椅子譲ってあげたよ」


「なんで、あっちの車両に乗っておかないの。この車はこれから生体兵器と戦いに行くの」

「お姉ちゃんと一緒なら怖くないもん」「このお兄ちゃんが守ってくれるもん」


 双子は姉から拳骨をもらう。

 頭を押さえて双子が逃げた先のシマも二度ビンタを受けた。



 装甲車の助手席に乗り込んだミナモは席の間に狭く押し込まれたメモリ。

 居心地の悪そうにメモリは携帯端末でほかの部隊と連絡を取ろうとしていた。


「火、全然消えないな」

「整備不良で機能してないのがあるのかもね。物は増えたところで修理できる人はみんな基地の修復を優先したから。まぁ燃え移ってないから」


 ドアを開け半身を出して大型のエクエリを構えるミナモ。

 装甲車の屋根の上にはギンセツが立っている。


「指揮所の混乱は侵攻部隊にベテランを多く連れて行ったことが原因らしいな。だいぶ落ち着いてきているが災害種の発見をしたいくつかの機甲部隊とは連絡が取れなくなった。というか私はまた連絡役なのか?」

「シアちゃんはこういうところで役に立つ子だと思ったから。で、何か連絡は」


「たしかに、戦力ではまるで役には立たないが。イライラ、私に当たらないでくれ。怖い。戦場に駆け付けている最中の装甲車がこも道の先で待機している。間に合わずすでに交戦している車両がいるが作戦内容は伝えておく、作戦開始時に向こうで合流してくれ」


 破壊音が聞こえてくる市街地、火災の起きている場所まで帰ってくると増援に来た指揮車両が戦っているところだった。


 アシッドレインの毒を飛ばす攻撃も車両内に閉じこもってしまえば降りかかることはない。

 ただし周囲の状況を確認できるのは画面に映ったカメラの視界のみ、破壊されれればそこは死角になる。

 建物を揺らし火事で脆くなった壁や柱を折ると、やがて耐え切れなくなり建物は道路に向かって倒れてきた。

 倒れると粉々になって崩れ大きな瓦礫の山を作る、その下にいた車両も飲み込んで。

 土煙の中瓦礫の上に立っているのはアシッドレイン。


「間に合わなかったか」

「いくよ、目や口、傷跡に気をつけて」


 屋根からギンセツが、助手席から中身の減ったリュックを背負いミナモが飛び出す。

 すぐにメモリが扉がしめ、装甲車は一気に速度を上げアシッドレインへと向かっていく。


 向かってくる装甲車に向かってアシッドレインは口を開く。

 折りたたまれていた二本の牙が狙いを定めて開いていき、装甲車のフロントガラスを狙った牙の先端から毒を飛ばす。

 ワイパーで毒を流しながら突撃するもアシッドレインは装甲車を紙一重で横に交わした。


「人が死ぬ毒、かなりの量じゃないか!」


 車内でメモリが頭を低くし悲鳴を上げる。

 フロントガラス、屋根、後部ハッチと通り過ぎていく装甲車に順に毒を浴びせていく。

 そのすきにミナモは建物の影に移動し反対側の建物の影に移動したギンセツに指示を出す。


「横を向いた、アカバネ君!」

「はい!」


 背中を向けたアシッドレインに攻撃、青白い閃光が背中の二か所で光る。

 攻撃をもらいアシッドレインは建物の上へと移動した。


「逃がさない」


 アタッチメントに取り付けられた榴弾がアシッドレインの掴もうとしていた建物の壁を吹き飛ばし、バランスを崩して壁に爪を食い込ませ壁にめくりあげながら巨体は下へと滑り落ちる。


「向こうに好きにさせてはいけない、こちらに攻撃の主導権を。ボクの後に続いて」

「わかりました!」


 下まで落ちるとアシッドレインは口を開け毒を飛ばせる用意をし二人のほうを向く。

 ミナモが攻撃をしつつ建物沿いに走り出しギンセツが同じく攻撃を仕掛け並走する、狙いをつけるとためらいなくアシッドレインは毒を飛ばした。

 毒を飛ばしても二人のもとへと届くのはわずかな時間がある、その間に二人は建物の中へと逃げ込む。

 まかれた毒は道路ではね四方に飛び散る。


「すごい量、でも使い切れば生成までに時間はかかる」


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