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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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破壊の一撃 6

 エクエリの威力の高い戦車や装甲車を相手にし振り向けないことをいいことに、物を吹き飛葉すことのできない重殻の背後から攻撃を仕掛けるミナモ。

 棘のついた尻尾に気を付けながら距離を詰める。

 すでに装甲車は二台破壊され頼みの戦車も距離を詰められ距離を取ろうと後ろに下がり、結果潰した複数の乗用車の塊に乗りあげバランスを崩し横転しそうになって停車したところをやられた。


「ダメだなぁ、この土煙どうにかしないことには」


 土埃が攻撃を阻害し光の弾が重殻に届く前に青い稲光が光る。

 エクエリは何度撃っても土埃に阻まれる、あきらめ重殻の足元を狙いアタッチメントに着いた実弾の榴弾を飛ばす。


 ――あと2つ。


 ポケットから弾を取り出しアタッチメントにとりつけ撃つ。

 すべてを撃ちこんだところで重殻に変化があった。


「無傷? この大きさだから足何本かとれば体を支えられなくなるだろうからほしかったところだけど付け根もおなかも硬いなぁ、全然勝つ方法が思いつかない」


 土煙を身にまとい放って置いても無害と思っていた精鋭が硬い体に傷つかなかったにしろダメージを与えてきた。

 その認識で強力ではあるが土煙で無力化できるエクエリの弾しか撃つことのできない戦車や装甲車よりミナモが危険視される。


 重殻は路肩に泊まっていたバスを横倒しにして道を塞ぎ装甲車の射線を塞ぐとミナモに向き直り、振り向きざまに乗用車を吹き飛ばす。


「怒った? 狙いが雑になってる」


 大型のエクエリと強化繊維で顔を防御し、高速でぶつかる破片から身を守り、破片をまき散らしながらミナモの頭上を飛び越えていきそんな車体をみて彼女は笑う。

 飛んで行った車両が地面に落ち、その火花でつぶれた車たちから流れ出た燃料に引火していき勢いよく炎と黒煙を上げた。


 ――あ、ああ。向こうに見えたあれが予想通りなら、この手で行ける。生き物だしさすがにどんなに丈夫でも耐えられるものはないだろうし。


 道に広がった炎をよけるため燃えていない車両の上を歩き、その視線の先に渋滞に囲まれ行動不能となった一台の車両を見つける。

 ミナモは重殻に背を向け身軽になるため捨ててきたリュックのもとまで走り拾い上げると火の海から離れるため十字路まで引き返し重殻がそれを追って走り出す。


 重殻が通った後は地面は大きく割れ、道路には砲弾でも落ちたような大穴が後が点々と続いている。

 土煙を巻き上げるために地面を殴りながら移動するため重殻の速度は早くもなく、走っている最中通り過ぎた建物からギンセツが飛び出してくる。


「オウギョクさん。朗報です、侵攻部隊が戻ってきました」

「アカバネ君そこに居たんだ、シマは? シマは無事?」


「無事……とは言えませんが、シアさんが手当をしています。あっちはシアさんに任せてください」

「そう、重殻、このままだと戦車隊が全滅するから私たちで倒すよ」


「え、倒すんですか! 時間を稼ぐんではなくて?」

「そう、戻ってきてくれたならいいけど、それの到着待っていられるほどボクたちに余裕がない。重殻は予想よりだいぶ厄介。今ボクたちが倒すか全滅するかの二択、誰かが死ぬ気で囮になってくれるんなら話は別だけど」


「……倒しましょう。でもいったいどうやって、あの土煙をなんとかしないとどうにも……」

「ところで、アカバネ君エクエリは?」


「ちゃんとシアさんに切り替えてもらいました。炸裂式雷撃弾です」

「おーけー、これ撃つと眩しいのか電撃が通ってるのか知らないけど少しだけ嫌がるんだよね。静電気が流れた程度の微々たるものだけど、近寄らせたら終わりだからそこだけ気を付けて戦って」


 火事の黒煙のおかげで直線の道路は見通しが悪く、重殻が吹き飛ばしてくる残骸も見当違いのところへと飛んでいて、ギンセツを引き連れミナモは交差点までやってくる。

 道の真ん中に多くの破片をまき散らせ壊れて黒煙を上げる装甲車。


「アカバネ君、ちょっとだけ、ボクが準備できるまで時間稼いでて」

「え、僕一人でですか! 突然すぎます、何するんですか!」


「すぐ終わる。一分もかからない、お願いね」

「早くおねがいしますよ」


 見えてきたのはトウモロコシのイラストの描かれた移動給油用のタンクローリー。

 考える余地もなく背後に迫る重殻に銃口を向けギンセツが覚悟を決め囮となる。

 タンクローリーのもとに着くとミナモは給油機の電源をつけ、給油用のホースを取り横のトラックに積まれた家具の山を階段に上り重殻を待ち構える用意ができた。


「いいよアカバネ君、離れて!」


 ギンセツの撤退を助けるためミナモがエクエリを撃ちこむ。

 狙いがミナモにかかり重殻が迫ってくるとノズルを持ち替え先端を向けレバーを握った。

 数秒のラグがあってホースを通り勢いよく噴き出た無色で少しだけ粘度のある燃料は重殻に降りかかる。

 一瞬だけ重殻はそれを警戒したが毒でないとわかるときにせず迫ってきた。


 タンクローリーまで来ると重殻は上に載っているミナモを倒すべく破壊の一撃を繰り出す。

 強化繊維にダメージを吸ってもらい攻撃前に重殻へ向かって飛び降り着地。

 背後では轟音と巨大な水しぶきが立ち、タンクローリーが横転する。


「乗れちゃったよ、どうしよう」


 衝撃に耐えられず破裂したタンクの中身をかぶって重殻の背中を滑り落り、尻尾の棘に気を付けながらその場から離れようと走り出すと背後からの熱波がミナモの背中を強く押した。


「っつい、っついつい、あっつい!」


 家より高く火柱を上げる炎の熱をかぶり転げまわるミナモ。

 逃げたギンセツが消火器をもって走ってきて、燃料をかぶって燃えているブーツに吹きかけた。


「ありがとう、危うく燃えるところだった」

「まだです、重殻が死んでません。というか普通に足燃えてましたけど」


 激しく燃え近寄るだけで火が尽きそうな熱と黒煙を吐き揺らめく炎の中で動くもの。


「熱が伝わらない? そんなことないと思うけど……」

「殻の厚さにかかわらず呼吸すれば体内が焼けると思うんですけど、そもそも酸欠にならないんですかね」


「アカバネ君は離れていて、ボクがやる」

「どこに行くんですか!」


 燃えている装甲車に付いていた大型のエクエリを拾い上げ、破損していても動く車両のもとへと駆け寄るとピンを抜いた地雷をバンパーの間挟む。

 ゆっくりと車を走らせ正面に燃えている重殻をとらえる。

 大型のエクエリを突っ立てアクセルを踏ませるとミナモはアクセルから足を放し車から飛び降りた。


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