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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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破壊の一撃 4

 特定危険種であったニンジャとの戦闘が終わるとすっかり静まり返った住宅街。

 エクエリのバッテリー残量を確認したミナモは、先頭を走ってきた戦車のもとへと歩いていくと後続に指示を出している戦車長に話しかけた。


「すみません、エクエリのバッテリーを分けてもらっていいですか? 先ほどまでに大半を使ってしまって」

「ああ、かまわない。戦えなくなってしまうのはこちらとしてもきついから、万全の状態でいてもらいたい。誰かバッテリーを精鋭に渡してやれ」


 戦車長が後ろの装甲車に連絡を取り、連絡を受けた一般兵が装甲車の窓から受け渡す。

 ミナモの補給に合わせてギンセツとメモリも集まってきてバッテリーを受け取った。


「一日に何度も戦闘だなんて、すごく疲れるな。……前にもあったなそんなこと」

「それでもシアさん、だいぶ体力ついてきましたね。前なんてすぐばてていたじゃないですか」


「あの霧のせいだったんだろうな。もともと生体兵器に害があるんだ、人にないわけがない。私も肺が弱かったけど、シェルターの外に出てきれいな空気を吸っているうちに私の体も自然に治ったのだろう」

「外に出てきてよかったことですね」


「それが唯一のことだがな、痛いし辛いし汚れるし死にかけるしみんなマイナスだ」

「そうですね、こういう形じゃない方法で外に出るべきでしたね」


「そもそも霧がなければ、私の体は弱くはなかった」

「それを言うなら生体兵器が居なければになりますけどね」


 二人が話しているところにミナモがやってくる。


「これから私たちはこのまま歩いて移動、生体兵器が見つかれば装甲車に乗せてもらって近くまで連れて行ってもらうから」

「わかった、できれば重殻には増援が来るまで隠れていてほしいものだが」

「かといって、避難している民間人のもとまで行かれても困りますし、早く居場所は判明してほしいところです」


 ミナモたちのバッテリー補給をして少したってから戦車は進みだし、力ずくで車両を押しのけていく音が響く。


 まだそれほどではないが人の歩行に合わせて住宅街を進みはじめると、どこからか反響するクラクションの音が聞こえてくる。

 装甲車の開いている窓から無線を使って連絡を取ってくる声があった。


「どこかの誰かが生体兵器を見つけたようですね」

「戦わず距離を取り観測に徹していてほしい、戦力は多い方がいいからな」


 皆静まり返り無線に耳を澄ませる。


『出くわしちまった、下がれ下がれ下がれ! こちら04号車、重殻と遭遇! 応援を、おうえっ』


 通信は途中で途切れ直後、住宅街に体の芯にまで響くものすごい破壊音が響く。

 装甲車が部品をばら撒き縦に回転をして火花を散らし交差点へと帰ってくる。


「え」


 一斉に轟音のした方向を振り返った。

 ついさっきシマを見送った角の道から転がってくる装甲車。

 道路を煙と火花を散らし転がるのが止まると車内から乗っていた一般兵たちが出てきた。

 その誰もが全身から血を流し震える腕でエクエリを構え通路の向こうへと発砲。

 少し遅れて装甲車から小さなものを二つ抱えた一般兵が出てきてまっすぐミナモたちのほうへと走ってくる。

 そしてこぼれた燃料に引火し装甲車の周囲は燃え上がった。


「シマ、シズク、ツユ!」


 血だらけのシマと抱き抱えられている双子を見てミナモが駆け出しメモリたちが続く。

 戦車がその場で方向転換し装甲車のわきを抜け交差点へと戻るとその空間を使って装甲車がUターンし後に続いた。

 交差点に戦車が付く前に重たい音が何度か響き、負傷した一般兵と燃えた装甲車を土煙で覆う。


 土煙の中を渋滞で放置された車が勢いよく転がり、土煙の中で光っていたエクエリの光が消えていく。

 そして角から現れる極彩色の体。

 見えたのは一瞬でまた作られた土煙の中に消えてしまう。


 追ってくる土煙から逃げ走ってくるシマに向かって、土煙の中から乗用車が飛んでくる。

 走る彼のすぐ後ろに落ち横に転がったため直撃はしなかったものの、跳ね飛んだ部品がぶつかり彼はバランスを崩して倒れこむ。


「重殻……コロス!!」


 ミナモが吠え背負った荷物から地雷を取り出しわきに抱え、アタッチメントと弾頭を取り出しリュックを捨てるとそれをとりつけながら牙を向いて走り出す。


 2両の戦車が車両を押しのけ潰し3台の装甲車が並ぶだけの道幅を確保する。

 方向転換を終えた装甲車が合流し各車が横一列に並ぶと掛け声とともに一斉に攻撃を仕掛けた。

 戦車砲のエクエリと装甲車の上に着いた大型のエクエリの銃座から放たれた光の弾は土煙の中へと消えていく。

 車両が攻撃している間に装甲車から降りた一般兵たちは近くの建物の中に入りカギのかかった扉を壊してか中に入ると二階三階の窓からエクエリを構える。


「シマは、どこに!?」


 並ぶ車両に道を阻まれその後ろをうろうろとするミナモ。

 車両の間に人の通れる隙間があるが、そこは潰された車両の残骸といつ動き出すかわからない大きなタイヤの壁の細い道。


 一つ燃え盛る炎にあてられて車が爆発した。

 土煙が少し乱れ重殻の姿が見え、その姿に攻撃が集中すると重殻は距離を詰め始める。

 戦車が通るために空けた一本道を大型とを思えない速度で走り出し、飛んでくる攻撃を車両を吹き飛ばし盾と攻撃を同時に行いながら左右に避け、そのついでに車両を前方の装甲車めがけて吹き飛ばす。


 直撃を受け装甲車の一台が両脇の車両にぶつかりながら大きく後ろに下がってきた。


「オウギョクさんそばにいたら危ないですもう少し下がって!」

「道ができた、前に出られる」


 その前に戦車たちが一斉に後退を始めミナモたちは慌てて道の端に避ける。

 結果的に戦車の前に出ることのできたミナモたち。

 重殻が迫ると一般兵たちも攻撃を開始。


 正面からの攻撃を防ぐことができても上からの攻撃は防げない。

 小型のエクエリで威力が足りず大したダメージは入らないがそれでも縦郭は攻撃を嫌がり建物内にいる一般兵に向かって車両を全力で吹き飛ばす。

 ただの一撃で建物は半壊、崩れた建物でまたしても周囲を土煙が覆う。


「行くよ、さぁ」


 土煙でどこにいるかわからないがテープを剥がしピンを抜き地雷を投げ込む。

 しかし爆発はなく土煙の奥から重殻が顔を出す。

 戦車たちを追いかけ隠れていたミナモたちに気が使づ通り過ぎていく。

 その背後から攻撃を仕掛けた。


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