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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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破壊の一撃 1

 

 とびかかった二匹はミナモを力ずくで抑え込もうとしており、彼女の手から大型のエクエリを引きはがし捨て噛みつくが開いた腕で攻撃を防ぐ。

 彼女がエクエリを取られる前に撃った一発が、腕に噛みついていたほうの生体兵器の後ろ脚を撃ち抜いて痛みから噛む力を少し弱める。

 装甲車の上にいるニンジャたちはギンセツのエクエリに注意を払い、銃口の向いているやつは避ける用意を向けられていないものはとびかかる準備をしていた。


 ギンセツの視界の端に映る装甲車内で動く影に視線を移す。

 先ほど運転席から車内奥へと非難していた警備兵が周囲をビクビク警戒しながら戻ってきていた。

 もしこのまま生体兵器に見つかればギンセツの援護では手が追えず彼は数秒とかからず割れたフロントガラスからたちまち襲われるだろう。


 ゆっくりと音を立てないように慎重に移動してきた彼は危険を冒してまで運転席にたどり着くと一呼吸おいて力を込めて押し込んだ。

 クラクションが鳴る。

 静かな地下街を反響する音に一瞬身をこわばらせるメモリと生体兵器たち。


 ミナモに襲い掛かっていた二匹も牙を放し、彼女にのしかかったまま音のなる方を振り返るがそこにはエクエリの銃口。

 ギンセツが引き金を引き彼女の肩を噛みついていたニンジャの首が飛ぶ。

 エクエリを噛んでいたほうもギンセツが狙いをつける前に飛びのいたがミナモが大勢を立て直し胸を撃ち抜き床に崩れる。

 その一瞬の間、二人を守るために撃つメモリの攻撃は当たらずも、襲わせないための牽制にはなりニンジャたちは一時的に装甲車の裏や天井に身を引かせた。


「助かった、ありがと」

「いえ、装甲車からの援護がなければどうすることも出来ませんでした。怪我とかは」


 立ち上がるとスリングを手繰り寄せ大型のエクエリを回収する。

 ミナモはすぐにトラックから大型のバックを取りギンセツとメモリを連れ装甲車の裏に逃げ込んだニンジャを追いかけた。

 しかし、すでに察知し装甲車の裏から店のシャッターを破って店舗の奥へといなくなった後。


「倒れたとき頭をぶつけたくらい、小型の生体兵器の攻撃ならよほどのことがなければ強化繊維は破けないからね」

「よかった、すぐここから離れましょう。ここは壁や天井も自由に移動できる生体兵器との戦闘は不利すぎます」


「だよね、装甲車にいる警備兵をトラックに乗せて逃げるよ」

「防御力でいえば、装甲車のほうがいいのでは」


 一見、姿は見えないがしかし生き物の気配はあり、店舗の電気の消えた暗がりの奥や通気口の穴の奥から生体兵器の荒い息遣いが聞こえてくる。


「この装甲車は鉄板の代わりに耐熱素材で作られてるから武装ないし、いろいろな設備で中も狭い、損傷もしていて装甲が割れてる。だったらまだこのトラックのほうが壁も天井も全くないけど、その代わりボクら大型のエクエリが死角なくスムーズに周囲の警戒と攻撃ができる」

「わかりました」


 装甲車の後部ハッチ、割れた装甲板をたたく。


「シマ、生体兵器は追い払った今のうちにここを離れたい。この装甲車じゃ次襲われたら持たない、できたらトラックに移ってほしい」


 ノブをひねる音とゆがんだ扉を力づくで押す金属同士の擦れる音。

 割れた装甲の扉がすこしずつ開いていき扉が開くと同時に外れる、倒れた扉のその向こうに見知った顔。


「ミナモ!」

「シマ、よかった無事……じゃない怪我してる!? 二人は? シズクとツユは!」


 戦闘服が破け肩から血を流すシマを見てミナモはエクエリから手を放し駆け寄り、助けが来たのを見て装甲車から通路の床へ崩れ落ちるシマを受け止めた。

 彼の後ろからミナモを見て半べそで弾丸のように飛びついてくるシズクとツユ。


「お姉ちゃんー」「怖かったー」

「よかった二人とも、怖かったね、大丈夫助けに来たよ」


 ギンセツに見張りを任せ負傷しフラフラしているシマを座らせて、ミナモはその横に座ると双子の頭を撫でて落ち着かせる。

 シマの肩の怪我の手当てをするため装甲車内に入り医療用具を探していメモリが出てきた。


「運転席に一人、窓から襲われたんだろう血を流し死んでいた」

「そう、助けられたのは3人だけなの」


 シマの戦闘服を脱がせると服にしみこまなかった大量の血があらわれる。

 痛ましい姿にミナモが目を伏せ双子の目を覆い、メモリがその血を拭きながら小声で尋ねた。


「腕、動きますか?」

「すごく痛いが頑張ればなんとか。指は動くが腕をそれほど高くは上げられない」


 ワセリンを塗り包帯を巻き傷の応急処置を終わらせると、メモリを先頭にギンセツとミナモが背後の店舗の穴や通気口を警戒し皆でエレベーター内に止めたままのトラックのほうへと向かう。

 先頭を歩いていたメモリが立ち止まった。


「止まって、何か音がする。何かが削れる音だ」


 その声に皆立ち止まり耳を傾ける。

 ブチンと張られた太めの糸が切れる音。

 何の音か特定できず周囲を見回し一同の視線がエレベーターに戻ってくると、先ほどまでトラックの止まっていたそこには暗闇へと続く穴が開いていた。

 ケーブルが切れてもエレベーターは一気に落下することなく、非常用ブレーキが作動し音もなく緩やかに最下層まで降下していく。


「エレベーターが落とされた!」

「あぶなかった乗っていたら今頃……」

「リュック持ってきてよかった。装甲車に戻って、早く!」


 同じ音がいくつが続き、この場にほかのエレベーターがないことを悟ると急いで装甲車に駆け込む。

 車内にリュックを投げ捨て真っ先に車内に乗せたシズクとツユを座らせシートベルトで固定する。

 外れた後部ドアからギンセツが、上窓から放水銃をどかしてミナモが周囲を見張る。

 運転手の遺体をどかしてシマがハンドルを握りメモリが助手席に座った。


「道は分かるか? 他のエレベーター施設へいき地上に上がりたい」

「ここの生まれだ、仕事でいつも歩き回ってる」


 その直後、配線が切られ通路内が停電した。

 非常電源に切り替わり、手足の見える最低限の光量で誘導灯のみがうすぼんやりと通路を照らす。


「真っ暗だ何も見えない、目が慣れてもすぐには生体兵器に対処できないか」

「一区画移動すれば別電源で明かりはついてる。皆何かに掴まってくれ飛ばすぞ!」


 後ろにまで聞こえるように大声で叫ぶとシマは装甲車のヘッドライトをつけ強くアクセルを踏む。


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