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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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突破 8

 畑を抜け市街地に入ると人っ子一人なく、静かな市街地には風に吹かれゴミが舞っている。

 そこを一台のトラックが駆け抜けた。

 ミナモは運転、ギンセツは警戒を行っていて、メモリは携帯端末を操作し現在の戦闘情報を集めている。


「一匹はぐれた06ファイターを倒したきり生体兵器がいない」

「このままいくと最後の目撃情報で市街地へと向かった重殻と鉢合わせるはずです。小型の半数は一般兵が倒したみたいですが戦闘で車両にも損害が出ていて増援には来れないとの報告は次々上がっていますが……」

「ここの一般兵は強いですね、連携がうまいというかほかのシェルターと違って防壁の前でもバラバラに戦っていなかったし、砲台の命中率もいいし機甲部隊の逃げる判断も早かったから被害が少なかった」


「戦闘経験ならその辺の精鋭より多いと思うよ」

「なんとも頼もしいな。あ、朗報だ、侵攻作戦に参加していた部隊が戻ってくるそうだ。だがおよそ2時間後、それまで持ちこたえられれば入り込んだ生体兵器は駆除できる。私たちがなんやかんやしている間に災害種も侵入しているそうだ」

「だったら戻ってくるまで被害を食い止めていくだけだですね。重殻も強いしそれに災害種だなんて……」


「そうだね。ボクも怪我はしたくないし被害を抑えるために市街地から引きはがすように戦おう」

「それがいい」

「了解です」


 時折、避難の最中に生体兵器の襲撃をうけたとみられる血だまりと荷物が満載の横転した車両が見えた。

 それを見てギンセツが眉を顰める。


「逃げ遅れた人もいるんですかね……」

「廃シェルターとして放棄が決まると財産を取りに戻っている時間はないからね……。お金がないと他のシェルターに逃げた際、シェルターに住む移住権は買えても、家や仕事をもらう居住権が買えないから、前のシェルターで中層だろうと高層だろうと、下層市民として働くことになるんだよね」

「一応は何かしらの才覚があれば、それらを売り込んで仕事にありつけるがな。精鋭なんかがいい例だろう、下層市民だが精鋭は高給だし居住権が買えれば家族も働ける即戦力として手ぶらで逃げてもどこのシェルターも移住可だからな」


 それからしばらく市街地を走っているとメモリの操作していた携帯端末に一般兵の無線が入った。


『地下街に生体兵器がいる、数が多いこちらは武器を持っていない、誰でもいい助けてくれ! 場所は地下一階商業区を南西から北西に移動中、もう持たない』


 無線先の切羽詰まった声で緊急を要していることだけはわかる。

 しかし無線は生体兵器の種類、具体的な数などの情報を伝えることなく、自分たちの位置だけ伝え切られてしまう。


「人が襲われてる、助けないと。ですよね」

「武器を持っていないのだから粘ったとしても、……今から行っんじゃ間に合いそうにないと思う。……だったらこの近くにいる重殻を探す方がいいのでは?」

「この声、シマだ! 引き返して助けに行く!」


 ミナモの判断でトラックは行き先を変えエレベーター施設へと向かう。

 避難の終わりエレベーター施設のシャッターの閉まっている入り口をトラックは勢いに任せて破壊する。

 割れたガラスが周囲に散らばりその無茶な運転に思わずメモリが悲鳴を上げた。


「時間がないからって、そんな突破の仕方」

「シヤさん走ってエレベーター呼んできて!」


 強引に改札も破壊しエレベーターホールの真ん中で停車させると、指示を拒否できなかったメモリがエクエリをもって飛び出し小走りでエレベーターのスイッチを押しに行く。

 エレベーターの扉が開くと下に降りる階を押し、トラックがエレベーター内に入って降下を始めたところでメモリを回収した。


「何階かがわからなくて、とりあえず地下の一階を押したが……」

「うん、たぶん追われてるってことは何かしらの乗り物で移動用に降りたんだと思うし、一階だと思う。開いたら急いで探すからアカバネ君もシアちゃんも戦う準備しておいて」

「でも生体兵器は不明ですし、追っているのはまさか重殻?」


 エレベーター降下中にミナモはリュックから地雷を取り出す。

 気の抜けるようなベルの音を聞いて気を引き締めハンドルを握る。

 入り口とは反対側のエレベーターの扉が開くと扉の向こうに小型の生体兵器に囲まれ耐熱材の装甲を剥がされつつある赤い装甲車が止まっていた。


 理解が追い付かず思わずぽかんとする三人。


「わっわっ、これだ!」

「助けを求めていたやつか!」


 慌ててミナモは運転席から、ギンセツはメモリを守るため助手席側にトラックから降りてエクエリを構え生体兵器を狙う。

 地雷が床に転がり落ちるとともにミナモが装甲車から自分らに注意を引くべく叫ぶ。


「小型の生体兵器を討伐する!」


 エレベーターの扉が開くと装甲車の装甲を剥がしていた特定危険種、ニンジャたちも扉の方向を振り返った。

 人とは比べ物にならないくらい強力な鼻が漂ってくる血の匂いを嗅ぎ負傷者を見つけだし狩るべく一斉にとびかかる。


 装甲車の屋根を蹴って高くとびかかってきた二匹の体に大型のエクエリが串刺しにするように風穴を開けてると、生体兵器を見上げていた葉欄隊の面々の視界の外から姿勢を低く床を這うように別の二匹が距離を詰めミナモを狙う。

 メモリはとっさに首を守りエクエリの銃身と強化繊維の制服で守られた腕を出して攻撃から身を守る。


「副隊長!」

「大丈夫、痛いけど怪我はない。さすが強化繊維って感じ、でも早く仕留めてくれないとボクもさすがにやばい」


 二匹に飛びつかれトラックに叩きつけられるミナモ、生体兵器は爪を立て腕を噛みなおすがその繊維を破ることはできない。

 ギンセツは片腕で大型のエクエリを構え新たにとびかからろうとする生体兵器を牽制する。

 近距離での射撃に自信のないメモリは小型のエクエリをもっておろおろするばかり。


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