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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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突破 6

 道路を我先にと走る人がある程度いなくなってからシマは移動を開始する。

 高齢者や子連れ、エレベーターを待ちきれなかったものたちが先任者たちが押しのけ開拓した道を通って逃げていて、シマたちもその道を通ってエレベーター前へと向かう。


 生体兵器が来ているという話で長蛇の列もほとんどがいなくなり、最後尾を無理やり建物の中に押し込めるとこれ以上人が入ってこないように一つを残しシャッターを下ろす。

 シマは戸締りを終えた警備兵のもとへと近寄った。


「なぁ、この装甲車はこの後どうするんだ、ここに置いていくのか」

「このままこれを使って市民を防壁まで避難誘導していく。しかし道路がこのざまだ、でも地下通路を通って渋滞のない場所から上がれば走れるから一度下に降りる」


「手伝うから俺らも連れて行ってくれないか、さすがに防壁の前まで歩いていくには遠すぎる」

「……警備兵だが、そっちの子たちは……家族か?」


 腕のワッペンを見せシマが警備兵だと納得させるも、その裾をに掴んでいる双子を見て少し困った表情をする。

 住人たちは子供も老人も皆車を捨て歩いて避難しているのに双子だけを特別扱いはできないということなのだろう。


「俺のじゃない、葉欄隊、オウギョク・ミナモ、精鋭の家族だ。有事の際、シェルターのため戦ってくれている精鋭の家族を優先的に助けるのはいいんだよな? だったらこの二人は保護対象だろ、装甲車に乗せて問題ないよな?」

「うーん。そうか、わかった乗れ! ただ避難誘導するから防壁にはいかないぞ」


 赤い装甲車の後部の扉が開きそこに双子を乗せる。

 広い車内にはだれもおらず応急処置用の救急キットと対人用ゴム弾銃がいくつかあるだけ、無線で現在の交戦情報がやり取りされているのが垂れ流されていた。


「あと、防壁が突破されて生体兵器が来たというのは本当か?」

「ああ、畑を突っ切ってきていて早いやつは直に反対側の市街地に到着する。ここもあと15分くらいしたら戦場だ、急いで逃げるぞ」


「それで、防壁の前で戦っていた精鋭はどうなった? やられちまったってことはないよな」

「わからない、しかし報告ではどこの隊か知らないがまだいくつかの精鋭は交戦中だ」


 避難誘導に当たっていた警備兵たちも戻ってきて赤い装甲車に乗り込む。

 ひとりが車両の搬入用の扉を開け、装甲車を建物内に入れると最後のシャッターを閉める。


 先ほどまで混雑していたエレベーターホールには今はもう誰もいない。


「みんな下に降りたのか、中に入れば早かったな」

「下に降りていくだけで出ていくものがいないからな。お前も乗れ、さっさと下に行くぞ」


 エレベータ―が開きその中に装甲車が入っていくとそのまま地下へ下り、すぐに反対側の鉄の扉が開く。

 いつもはにぎわっている商店の並ぶ通りだが、今は誰もおらず店にはシャッターが閉まり静まり返っている。


「誰もいないな、ここの住人たちはみなしっかりと逃げたか」

「ああ、誰も来る気配がない」


 運転手は逃げ遅れがいないか調べ銃座にいる仲間が確認し、市民が慌ててエレベーターに駆け込んでこないことをしっかりと確かめると車両を発進させる。

 ここも前日の祭りの影響だけじゃない様々なゴミが散らばっていた。



 まっすぐと市街地へと向かい畑を荒らす大型の生体兵器。

 シェルターに慣れていないメモリの運転のもと土煙が上がっている方向に向かってトラックは走ってきたが追っている生体兵器はどれも道路からは離れており何度か迂回をしてようやく一匹目に追いつく。


「見えました正面に一匹、06ファイターです」

「もうすぐ収穫の野菜をぐしゃぐしゃにして……許せない、あれを倒すよアカバネ君」

「首に傷がある。さっきギンセツが攻撃していたやつだ、仲間からおいて行かれるほどには弱ってはいるみたいだな」


 トラックで先回りをするとミナモが大型のエクエリと地雷を抱えて飛び出す。

 地雷の誤爆防止の蛍光色のテープを剥がし太い針金のピンを抜くとそれを06ファイターに向かって放り投げる。

 畑の柔らかい地面に刺さり地雷は転がることなく止まると、ミナモは大型のエクエリを構え06ファイターに撃ち込んだ。


「正面はまったく効果ないか、なら」


 ミナモをとらえまっすぐ向かってくるファイターの目を狙うが、それらを交わし大型のエクエリでさえ鱗の一部しか削ることしかできず、何発か撃つと彼女は後ろに下がる。


「炸裂式電撃弾なら」


 ファイターが地雷の一つを踏む。

 瞬間に大爆発を起こし真上に舞い上がった土がファイターを覆う。

 その土煙に向かってミナモが撃ち込むと土煙全体に青い稲光が走る。


 土煙の中から現れる影はバランスを崩し畑に倒れこむ。

 踏まなかった方の地雷に倒れこみもう一度その場で土が舞い上がった。


「地雷全部命中! 小型なら死亡、中型ならこれで致命傷だけど、どう?」


 飛び散った作物と土が装甲車のほうまで届く。

 ファイターは半身を柔らかい地面に埋め起き上がろうとする、その体にもう一度ミナモは撃ち込んだ。

 ギンセツもトラックの荷台から片腕で大型のエクエリを構え撃ちこむ。

 二度目の稲妻、肉の焼ける臭いが漂い始めギンセツの撃った光の弾が目玉に命中し大穴が開く。


「アカバネ君、片腕でよくあてられたね」

「まぐれです、でも穴はあけられたのでもう一度狙って脳に損傷を、貫通榴弾に切り替えます」


 地雷を踏み前足の一本を失い転倒し腹部に大穴の開いた虫の息の生体兵器にとどめを刺すのに時間はかからなかった。

 ギンセツの攻撃で脳を破損させシェルターに入ってきた生体兵器の一匹を排除する。


「一匹目ですね、あの地雷って精鋭に支給されている高性能の爆薬なんですか?」

「そうだよ、それを強化改良したものです。ボクらの隊はもともと大物狙いってのもあるから爆薬の使用量は多かったんだよね。わざわざこんな大きなリュックを持つくらいに、さぁつぎに行こうまだまだたくさんいる」

「副隊長、今連絡があった。防壁から追加でシェルターに入った生体兵器はなし、防衛隊が食い止めているらしい。小型の生体兵器はほとんど駆除され、特定危険種たちの場所が分かった、ファイターの残りは市街地には向かわず果樹園のほうに行ったらしい。重殻は市街地へ、ニンジャも市街地へ逃げ行方をくらましたらしい。で、つぎはどれを追う?」


「数の多い06ファイターでいきたいけど、避難が済んでいない市街地へ向かう。最後まで避難誘導している警備兵たちが逃げられていないだろうから助けに行かないと」

「了解です。行きましょう。早く倒して平和を取り窓さないと」

「わかった、でも負傷しているギンセツに無理をさせず焦らずに戦ってくれ」


 ミナモとギンセツは再びトラックに乗り市街地を目指す。

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