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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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突破 5

 防壁の中、防壁に隣接する基地の建物はどれも半壊し濛々と黒煙を上げていて、同じく黒煙を上げている破壊された車両が横たわる。


「足跡を追う、使えそうな車両を探して。特定危険種なら動きの速いやつだと人のいる中央区へまっすぐ向かうはず、普通の生体兵器ならまだこの辺にいるかもしれない気を付けて」


 防壁を潜り抜け周囲に生体兵器の姿がないとわかると、ギンセツとメモリに見張りを任せもう一度周囲を見回してからリュックを下ろし中から円盤状の巨大な缶詰のようなものを取り出す。

 上面に蛍光色のテープで巻かれ太い針金が固定されている。

 ミナモの背負った大きなリュックの中身はほとんどがそれで、爆薬や大型のエクエリに着けるアタッチメントに装填する榴弾や煙幕などだった。


「それは何です?」

「感圧式の爆弾。対生体兵器用の地雷だよ。重量300㎏から反応するから普通なら人が踏んでも反応はしない小型でも軽いやつはしないけど、もちろん車両は別だよ。あと、重たい装備抱えたり、おもいっきり踏んだら反応するけど」

「そんなものをシェルター内で使うのか!?」


 地雷をリュックから2つ取り出しわきに抱えると背負いなおす。

 駐車場へ向かい何かしら残っていないか調べに向かう。


「大丈夫、埋めたりはしない。その辺に放って置くだけでいい、表面に危険物と書いてあるから大人は見つけ次第一般兵に届け出るし、子供の力じゃ早々起爆はさせられない」

「それじゃ生体兵器にばれるんじゃないか?」


「もちろん注意力のある小型ならばれる、中型は半々。大型は気が付く距離なら止まれない、ボクたちが狙うのは06ファイターと重殻、ほかはほかの精鋭に任せる。大物狙い、こんな時クオン君かキュウちゃんがいれば楽なんだけど。さぁ行こう」


 駐車場に残っていた一台のトラック。

 周囲に一般兵が倒れていることから彼らが乗ってきたものらしいが、血と臓物の中に倒れる彼らの中に運転できるものはいない。


「これから戦うのに嫌なもの見せちゃったね、気分が悪いなら少し待つけど」

「……慣れっこです」

「もはやなんとも思わなくなってきた自分が怖い」


「なら、運転はシヤちゃんで。ボクが前に出て気を引くからアカバネ君は援護で」

「わかりました、怪我さえ中れば僕が前に出たのに」

「無茶はするなよギンセツ」


 トラックを拝借し基地を出て生体兵器を追う。

 道路しか進めない車両と違い生き物である生体兵器は段差や高低差、柔らかい畑の上も気にせず走れる、ミナモたちが最短で追うにも道はジグザクに伸びていた。



 シマたちが歩道にまで乗り上げて無秩序に止められた車の間を抜けて移動している。

 中央を抜け住宅街に出たが車は渋滞で乗り捨てられ放置されたまま大通りも裏道も永遠と続いていた。

 道を塞がれあちこちで通行止めをくらい、人の通れる隙間すらなくなると双子をボンネットの上に置き車両の上を歩いて移動する、道が通れそうになるとボンネットから降ろして歩道を進む。


「邪魔な車はどっかにどかしてほしいのだけど、もう持ち主もいないしなぁ」

「道路、おもしろーい」「今日は何かのお祭りなのー?」


「そうだな、今日はシェルター全体で鬼ごっこかかくれんぼをする日かな」

「たのしそ」「おもしろそ」


 シェルターの外につながる防壁を目指し亡者の行軍のような様子も元気な双子には関係なく楽しそうにはしゃいでいる。

 周囲で帰りたいと駄々をこねたり泣きじゃくっている子供たちよりかは扱いがらくなのだが。


「喉は乾いていないか、そこに自販機がある何か買っていこう。何か希望があるか?」

「「オレンジジュースがいい!」」


 避難区画へ逃げようとエレベーターホールの近くまで行くが依然として長蛇の列。

 自販機で飲み物を買い休憩をしている間に様子を見てきたシマは、避難誘導しているシェルター用の赤い装甲車からくしゃくしゃになった地図をもらってきてそれを近くの車のボンネットに広げる。


「なにそれー、ごみ拾い?」「今日すごく散らかってるもんね」

「シェルターの地図だ、このまま歩くとどうやっても1時間近くかかるが防壁に着くな、二人を連れてるともっとか……」


双子にわかりやすいように地図に指をさして今いる位置から防壁までの道をなぞる。


「いいか、二人とも、ここまで歩くんだ」


「バスなら早いからあっという間につくよ」「もう疲れちゃった、お姉ちゃんはいつお迎えに来るの?」


「ああ、すぐ来る。バスは今日はお休みで動いていないんだ。防壁まで行けば、ほらミナモが働いている、だからこれから会いに行くんだ」


 これから長旅になるだろうとシマは渋滞で歩きづらい道をみて気が滅入った気分で飲みかけだった缶に口をつける。

 歩いてきた道路のはるか後方から叫び声のような声が聞こえてきた。


「生体兵器が防壁前で止められなかった、こっちに向かってきている! 逃げないとみんな殺されるぞ!」


 どこの誰ともわからない声が子供の鳴き声やクラクションなどの音よりも予想のほか通りに響く。


 数秒の沈黙。


 もう避難誘導に耳を貸すものはいない、そして排水溝に流される水のごとく我先にと走り出す市民たち。

 歩くのを嫌がり渋滞が何とかなるのを待っていた高層の住民までもが身なりを気にせず走り出す。

 人を押しのけ車を押しのけ荷物を捨て品格を捨て駆け出した。


「壁によれ!」


 そういうもシマは素早く二人を抱きかかえ壁側に駆け寄り身を隠す。

 おいてきた地図は人が作った風に舞い地面に落ちると踏まれ汚れ引き裂かれ使い物にならなくなる。


「なにー」「どしたの?」

「逃げるぞ、さっき言った鬼ごっこの続きだ、鬼が近づいてきている」


 シマは鬼の形相で走る市民を見ている二人を安心させるためそういったが、力んだ拍子に飲みかけだった缶を半分握りつぶしてしまい逆に二人を怯えさせた。


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