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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
435/798

突破 4

 

 忘れていたかのように対生体兵器用の迎撃ミサイルが飛来するも、防壁や戦闘する一般兵たちに被害が出ないよう遠く離れたところに着弾する。

 もっとも生体兵器の襲撃が前から分かっているならまだしも、急に表れた生体兵器の群れ何とか防もともとは飛行型の生体兵器用の迎撃手段であって壁側で対処できないかと見守っていたが、すぐに特定危険種まで増え始め、その数は増えに精一杯急いでミサイルを用意したため準備ができるころには十分懐に潜られていた。


 激しい閃光と振動が一瞬だけ大きな地震のように大地を揺さぶったがべう壁前にいる生体兵器たちは動きを止めない。


 防壁の前での戦闘に勝機がないと防壁の中に避難しようとする車両が出てきて防衛線に穴が開く。

 06ファイターが撤退中の装甲車を体当たりで、蹴飛ばされた段ボールのように大きなへこみをつけて宙を舞ったあたりから防壁の前は戦闘ではなく蹂躙に変わった。



 シェルターの市街地で遠目から防壁を超えて舞い上がっているのが見えた土煙が、ついに防壁の中で上がり始めた。

 まっすぐ門へとつながる道路はどこも渋滞で、皆どれだけ待っても動く気配のない車を捨てて道路を歩き始め捨てられた車がさらなる渋滞を作る。

 あちこちからクラクションの音が鳴り響きもめ事の怒号や悲鳴、シェルターの避難勧告の音量をかき消す。


 地下に避難するエレベーターを待っていられない人たちも大荷物を抱え道路を歩いて穴の開いた防壁の反対側へと向かって大移動していた。


「誘導する警備兵が足りてないな、地下も含めたシェルター全域の避難を誘導しているんだからそれもそうか。俺も双子を預けて市民の誘導しないと家族も心配だし。さて地上も移動するのは大変そうだな、さぁついて来い」

「ひといっぱーい」

「どこいくの? おうち帰るの?」


 エレベーターを使って地上に帰ってきたシマは土煙の上がる防壁とは反対側、人の流れと同じ方向に向かって歩きだす。


「避難だ、危ないからここから離れる」

「ぼうへきがこわれたって、ここに生体兵器が来るの?」

「そんなのお姉ちゃんが倒してくれるよ」


 そんな時に防壁が破壊と連絡があり、動揺と混乱がまじりあい皆駆け足で避難を始めた。

 ぞろぞろと一点を目指して歩いていた集団は急に走り出し我先にと競い合う。

 道路には誰かの荷物から零れ落ちた衣服やぬいぐるみが踏まれてズタズタになっている。


「行こう、離れないようにな」


 恐慌状態の市民の流れに交じりシマは双子を抱えて走り出した。



 防壁の前、横倒しになった軽装甲車から這い出すミナモ。

 エアバックの作動で顔を強く打ち付け空気の抜けた後のエアバックには鼻血が出た跡があった。


 横転した軽装甲車両は防壁手前の廃車の残骸に交じりすでにメモリとギンセツは荷物をもって這い出ており、廃車に寄りかかり動く方の腕で軽装甲車に固定していた銃座の破片から大型のエクエリを取り外していながらメモリの手当てを受けている。

 大型のエクエリの改修を後回しにし新人二人の様子を見に行く、頭を打ったようですこしふらつき鼻と額をぬぐいミナモは二人のそばによる。


「二人とも無事だったんだ」

「一応はですけども。すまない、車の様子を見て爆発の危険はないとしてオウギョクさんは放っておいた。ギンセツは天井から引っ張り出せたが、副隊長は私ひとりでは引き上げられなかったから」


「別にいいよ、無事だったんだから。アカバネ君は?」

「右腕の脱臼と体を強く打った。けどできる治療は施したらもう大丈夫、救急箱ですオウギョクさんも自分の手当てを、すまない、そちら側の傷には気が付かなかった」


 メモリは目を見開き救急箱を抱え立ち上がるとミナモに向かってくる。

 いわれてミナモは汗をぬぐった手のひらをみた。


「血だ……」


 額を切ったようで勢いよく鮮血が頬を伝っている。


「座って、血を止めないと。何をボーっと……体に不調でも?」

「いいや、大丈夫。ごめんありがと」


 メモリはミナモを座らせ消毒すると頭に包帯を巻く。

 手当てを受けながら耳を澄ませ聞こえてくる音に集中する。


「戦闘は、生体兵器はどこに行ったの?」

「特定危険種はすでに防壁の内側に入られた、防衛隊は半分を残して中に入った生体兵器を倒すため引き返していった」


 防壁の前にすでに生体兵器の姿はなく戦闘の音は防壁の内側から聞こえてきている。

 新たに生体兵器が現れたがそれらは復旧した砲台や戦車隊が陣形を組みなおし応戦し防壁のそばへは近づけない。

 ミナモは余ったガーゼで制服に滴った血をふき取り、頭から血が流れ出なくなると転倒した車からミナモは自分の大型のエクエリを取り出しに行く。


「アカバネ君は、まだ戦える?」

「何を言って、ギンセツは腕を怪我して……」

「シヤさん大丈夫です、戦えます」


 大きなリュックとエクエリを車の中から引き上げると状態を確かめ背中に背負う。

 ミナモに合わせギンセツも立ち上がり怪我をしていないほうの肩で大型のエクエリを背負った。


「ならごめん、バラバラにとか言ってたけど一緒に行動してもらうね。特定危険種が多い、シェルターを守るってのもあるけどボクの仕様でそっちを優先して狙いたい」

「はいわかりました」


 戦闘の続く防壁の外に背を向け歩き出すメモリに後を追うギンセツ、二人を追いメモリも小型のエクエリを取り出し防壁に空いた穴を潜り抜ける。

 鉄筋、鉄骨、鉄板、コンクリートの重なった16メートルほどある分厚い壁は並みの生体兵器の力では防壁が破壊されることはない、開けられた穴は大型の生体兵器が一匹が通れる程度のもので生体兵器の大きさも形も違う無数の足跡が並ぶ。


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