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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
432/798

突破 1

 

 生体兵器は数を増し防壁に迫ってきていた。

 戦場で重低音が鳴り響き、その場で小さな噴火のような高い土煙が上がる。


「なんだ、旧時代の大砲でもぶっ放しているのか?」


 巻き上がる土煙が風で流れで生体兵器の正確な数は分からないが、光の弾が飛んでいく砲台のエクエリが狙う先の数は20を超えている。

 防壁に向かう生体兵器は小型が多くその多くは獣型、中には昆虫型も交じっており戦場は混沌としていた。


「さて、どのあたりで戦うのがいいのかなぁ。重殻とは正反対の方向に行きたいなぁ」


 精鋭としても個としてそれほどの強さのないミナモは、援護の受けやすいなるべく人の多い方向へと進路を変える。

 囲まれ各個破壊されないため一部を除きほとんどの戦闘車両群は防壁からの遠距離射撃を行っており、一部の生体兵器はそれを交わしながら距離を詰めてきていた。


 門が閉まっていき防壁から離れようと移動しているとその車の上を勢いよく車両の上を何かが飛んでいく。

 それは天板に当たるとべシャリと音を立て四方に広がり大きな赤いシミを作る。


「キャァ!」

「うわっ、なに!」


 メモリが小さく悲鳴を上げ、それに驚いたミナモが小さく跳ねた。

 衝突した何かは剥がれ落ち転がっていき地面へと落ちていく。

 胸に手を当て一呼吸置き窓ガラスにも張り付いていたそれを見てメモリがそれを分析する。


「生体兵器だ、バラバラになってぐしゃぐしゃになっているが……でも、何で?」

「シアさんはそこに居て、ボクが見ます」


 防壁の前は地面がきれいに整えてあり速度を出してもそれほど車体が揺れることはない。

 天板を開けギンセツが大型のエクエリをもって外に顔を出す。

 天井に気を取られていると、また大きな塊が空を飛んでいきフロントガラスに衝突し赤く染める。

 それもまた動物の毛らしきもののついた肉片。


「また、なんで、何が……」


 ガラスについた汚れをワイパーで払おうにもベタリとした油が伸びるだけでその上に舞い上がった土埃が積もる。

 車両砲台いくつもの攻撃の集中する先、巻き上がる土煙がエクエリの光の弾の効力を失いその中心にいる生体兵器に有効打を与えられないでいた。


「あれって……いけない、来るべき道を間違えた!」


 ミナモが叫び急ハンドルを切った。

 大型のエクエリを銃座に固定する作業をしていたギンセツが大きく振られる。

 メモリもギンセツのズボンを押さえながら座席にしがみつき車内を転がらないように耐えた。


「あぶない! 副隊長、曲がる前に何か言ってくれ、ギンセツが危うく振り落とされるところだった!」

「それどころじゃない、重殻だ。ほんとにいた、今まで縄張りから出たことないのにこんなところまで……あとボクは暫定的であって副隊長じゃない」


 特定危険種、重殻。

 シェルターから少し離れたところにある湖に住む水陸両用の大型の生体兵器。

 縄張り内にいるものを襲い狂騒タガメなどほかの生体兵器などを川や細い水路に追いやり長年周囲の生態系の頂点にいた生体兵器。

 精鋭が増えシェルター周囲の特定危険種の大規模討伐時、湖底に身を隠し発見できなかった一匹。

 鮮やかな7色の派手な色を持つとげの生えた甲殻類、丈夫な外骨格をもち、大型のエビのようなシルエットの巨体に昆虫型のような複数の足と太いカマキリのような折りたたまれた2本の腕が生え、その腕はは血と土で汚れている。

 その折りたたまれた腕を地面に打ち付けることで巨大な土煙を作り上げ、重殻はその土煙の中に身を隠す。


「あれが重殻、綺麗な色してるけど湖のそばの前線基地を破壊したんだよね。戦車も建物も簡単に破壊してくる。大型のくせに陸上での動きも早いし狙われたらこっちのみが持たない距離を取らないと」


 大型の生体兵器にもかかわらず動きは機敏で、側面や背後に迫る生体兵器のほうへと素早く向きを変えその二本の腕で触れ霧散させる。

 それでも背後に食らいつく生体兵器には尾扇に生えた鋭く長いとげを振り回しその首を貫く。


 重殻の攻撃をまともに受けるとどんな生体兵器も叩かれたビスケットのように粉々になりその破片、ほとんどが骨だがその欠片が遠くまで飛び散りミナモたちの乗る軽装甲車にぶつかり、その装甲のあちこちが血と臓物で汚れた。

 それを見たメモリが驚愕の声を上げる。


「なんだあれは、あの腕に触れたとたんにバラバラになったぞ。なんだあれ、どんな威力をしているんだ」

「シアさん、周囲の確認お願いできますか。ボクも戦いますけどこっちに迫る生体兵器を探すのをお願いします」


「わかった、まかせておけ。ギンセツも無理はせず危ないと思ったら大型のエクエリなんか捨てて車内に戻ってこい。命のほうが大事だ」

「わかりました。えっと、オウギョクさん、この車を防壁に向かう生体兵器のほうへ寄せて走らせてもらえますか。僕がここから戦います」


 ミナモは軽装甲車を走らせ、戦場を曇らせる土煙の発生源である重殻から離れる。

 ギンセツは砲台の砲撃をよけて防壁に迫る生体兵器を狙い、大型のエクエリを固定した銃座から足止めを図る。

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