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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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出撃の日 1

 時は進み出撃の朝。

 門の前に集まる何百と並ぶ戦車と装甲車。

 さらに資材を運ぶトラックや軽装甲者などを含めると基地内には入りきらす畑を埋め即席で作った駐車場外へとあふれ出ている。

 それを扱う一般兵たちが整列している出陣式の長い演説をミナモとシマは防壁の上から眺めていた。


「すごい数だね、シェルターごとの迷彩で地味な色ばかりだけどカラフルだ」

「こんなにきれいに並んでいると壮観だ」


「ミナモ、新人二人はどうなったんだ、俺はあってないけど一緒に戦えそうか?」

「ん、ああ、挨拶はしたけど生体兵器が出てこないから一緒に戦ってはいないよ、まだわからない。この間ボクと来たこたつのあるあの家で休んでると思う、戦闘じゃない限りボクの隊は基本的に集まらないから戦闘がなければほとんど会わないよ」


「たしかに最近、襲ってくる生体兵器の数減ったよな」

「シェルター防衛任務外の精鋭が体なまらないように外周を回って数減らしてくれたからね。今日この日のために」


「ミナモは行かないのか、精鋭なのに」

「行くのは増援できた精鋭たちだけだよ。選抜基準は知らないけどこのシェルターにいたボクたちみたいな精鋭はお留守番。もしなにかあったときシェルターのことを熟知していたほうが俊敏に対応できるからじゃない」


 下から拍手が聞こえ演説をしていた誰かが舞台から降りていく。

 少し下の血列の後ろから車両へと隊列を組んだまま駆け足で車両へ向かっていくのが見える。


「始まったか、これでやっとこのシェルターも静かになる。もめ事の数も減るだろう、中央区の渋滞も緩和されるといいな」

「ほんとにシマは仕事が好きだなぁ。ボクも借金払い終えたらシマとおんなじ警備兵でもやらおうかな、そしたら仕事シマが教えてね」


「ああ、でも特定危険種は今回の作戦でおおよそ排除されるんだろ? 返済はどうすんだ?」

「倒していったところで完全にいなくなるわけじゃないから、その辺をいい加減な隊長を説得して地道に狩っていくよ。早く返さないと増えていく一方なんだけどね。シマは仕事中でしょそろそろ戻らなくていいの?」


「だからこうして高いところから、人の多い場所を見て回ってるんだろ」

「そっか」



 防壁の上出陣式を見ていた二人のもとへと歩いてくる女性がいた。

 風に流されてくる香水の香りに二人は頭を上げて振り替える。

 長く美しいつややかな黒髪を風に任せ、白くきれいな肌を日光を名いっぱい浴びるようにゆったりと歩いてくる。


「どうも、こんにちは。今日はいい天気ですね、いい出撃日和です。ここからの眺めはいいですね、生産系シェルター特有の防壁の周りに大きな建造物がないから静かで遠くまでよく見える。畑がお花畑ならさぞ美しいものになったでしょう」

「あなたは? ……見たことのない制服、精鋭ですか?」


 シマだけでなくミナモも彼女の美しさに見とれていた、その服装は強化繊維でできた精鋭の制服。

 彼女の美しさに思わず見とれていたミナモが声を掛けられハッとする。

 長い髪の女性はくすくすと笑い優しい声で答えた。


「ええ、今日朝早くにここに着いたばかりですから。初めましてオウギョク・ミナモさん。私はツタウルシ・カガリ。王都の技術者です」

「ボクの名前」


「ええ、このシェルターに集まっている精鋭、元からこのシェルターにいる精鋭どちらも資料に目を通していますから、顔と名前はしっかりわかりますよ。葉欄隊は防壁の防衛任務ですか? ほかのメンバーは?」

「隊長は行方不明、新人はお世話になった隊に行ってらっしゃいをいうために下に降りています」


 防壁の扉が開き車列は綺麗な隊列を維持したままに車両が出ていき、車列は防壁を出ると各々担当する方角へと進路を変えて進んでいく。


「そうなの、そしてあなたは好きな人と一緒に人気のないところでこっそりとデート」

「ちっ、ちちっ、違います!! ボクもシマも仕事中です、決して絶対そういうことではなく、時間があったら一緒にいたいだけで、今日もたまたまボクが誘ってここに来ただけで」


「まぁそれはさておき、戦いのために皆さんが出ていきますね。彼らはしばらく戦闘の日々、死者も大勢出るでしょう。それでもあなたたちはこうして平和な日々を送ると」

「……うぐ」


「冗談です。そんなこと言ったらシェルターに住む平和が当然だと思っている人間すべてが対象になってしまいますから。平和な時に精一杯平和ボケしてください、きっと戻れないところまで進んで後悔するころには何もかも手遅れでしょうから。それでは、私はこの後用事があるので。オウギョクさんとはシェルターにいる限りまた会いそうね。私の護衛とか頼むかもしれないわ」


 言いたいことだけを言うと笑顔でサヨナラと手を振りフラッと彼女はその場を離れていく。

 カガリに表情の変化で遊ばれたことに気づかないミナモは今のは何だったのかを訪ねようとシマのほうへと振り返る。

 彼は手を振ってカガリの後姿を見送っていた。


「シマはいつまで鼻の下を伸ばして見とれてるのさ」

「いてぇ」


 こぶしを握るミナモによるいわれのない暴力がシマを襲う。


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