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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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強固なる防壁 4

 畑を抜け住宅街まで走ってくるとシマの自宅のそばまで寄るとミナモは三人を下ろす。

 ミナモの家のある畑の真ん中とは違い、市街地はいくつもの街灯は立っているがそこから少し離れれば暗闇が広がっている。


「ここでいいの? もっとそばに寄れるよシマ」

「大丈夫、ここから道が入り組んでるし荷物もって歩いたほうが早い」


「じゃあ二人をお願い」

「いつ返せばいい?」


「ボクが防衛任務が終わったら迎えに来るから.たぶん朝方かな、悪いけど二人に朝ごはん食べさせてもらえるかな」

「わかった」


 別れを告げるとミナモはそのまま仕事へ行ってしまう。

 軽装甲者が見えなくなると残されたシマたちは、彼の家に向かおうと二人分のお泊り用の荷物を持ち上げ双子のほうを見ると双子はシマの顔を見上げている。


「なんだ、どうかしたのか二人とも。眠くなったのか? 二人は担げないから歩いてくれよ、すぐ着くからな」


「お姉は胃袋掴んだ?」

「お兄は掴まれた?」


「ミナモの料理はうまかったな。二人は毎日うまいごはんを食べられていいな」


「お嫁に欲しくなった?」

「ちゃんと幸せにできますか?」


 暗がりで変化がわかりづらかったが赤面するシマ。


「そこまで話が飛ぶのか、そんな先のこと。ほら行くぞ、しっかりついて来いよ。着いたらまず親に事情を話すところからか、家が近いから騒ぐと怒られる二人はおとなしくできるか?」


「もち」

「ろん」


「よしならついておいで。とはいってももう遅い、遊ぶのは明日の朝だな」


「暗くてお化け出そう」

「こわーい、食べられる―」


「いないいない、人を食うのはお化けじゃなくて生体兵器だ知るのは不審者、でも不審者が出ても俺が捕まえるし。それより暗いからはしゃぐと転ぶぞ、道が平らじゃないからな」


 暗がりが怖いとしがみついてくる双子、荷物を二人に持たせ手を引いて三人は静かで人気のない住宅街を歩いていく。



 シマたちを別れて畑地帯に戻りミナモは月夜に浮かぶ黒い壁、シェルターの防壁へと向かう。

 ミナモは車内でひとり呟く。


「う~ん。シマのことご飯で釣って二人を押し付けたなぁ。騙したみたいでボクは嫌われただろうか……」


 基地内に入り車を止めるとミナモは大きなリュックと大型のエクエリを背負ってエレベーターに乗り砲壁の上を目指す。

 途中にあるエレベーターが軋み金属の軋み擦れる音と大きな振動が続く。


「整備不良だ、怖いなぁ。途中でケーブル切れたりしないよね」


 最上階に到着するが扉は半分ほど開いて動かなくなる。


「まともに開かなくなるとは思わなかった。もうのエレベーター使わない」


 エレベーターを降りたところでマントを羽織り精鋭の強化繊維の制服をきているヘアバンドをした少女がミナモの姿を見て小走りで走ってくる。


「おや、ナモさんじゃないっすか。相変わらず重そうな荷物っすね、ところでどうしたんすこんなところに?」

「お互い人数不足だから一緒に防衛任務だよキューちゃん。うちの隊長見なかった?」


 別の隊のオレンジ色の制服の精鋭、臨時で鬼百合隊の隊長をしているカシマ・キュウ。

 もっとも隊長とは名前だけで仕事のほとんどを副隊長がしている隊だが。


「なるほどそれで。えっとさっきまでいたんすけど、生体兵器が出てくるまで休んでるって休憩所のある二つ下の階に行ったっすね」

「そう、キューちゃんの隊のメンバーはいないの? ヒャッカちゃん」


「一緒に来たから防壁のどっかにいるっすよ、いつも一緒にいるわけじゃないんだしらないっす」

「そうなの、ボクの隊と違って仲良し三人ひとまとまりだと思った。そいえばノエ君元気?」


「元気っす。今日もお見舞いに行ってきました。片腕での生活にも慣れてきて、もうすぐ手術なんで、腕も治るっすよ」

「そうなんだ、そろそろボクもお見舞いに行きたいなぁ」


 ちらりとキュウのほうを見るミナモ。

 怪我をしたと聞いて何度となく面会へと訪れたがキュウのほうから面会禁止が出ているらしく、彼女の許可がないと非常に困ると受付の人に気まずそうな顔で断られていた。


「ダメっす。ナモさんはお見舞いには来ないでください」

「だめか。一応ボク、ノエ君やクオン君と一緒に戦ってきてる中なんだけど、キューちゃんと一緒でもだめ?」


「そのでっかいおっぱい何とかしてくれるのならいいっすよ」

「この制服ならボクの胸結構抑えつけられてるんだけどこの服じゃダメ?」


「ダメっす、大きいっす。それに、室内だとすぐに胸が苦しいって脱いじゃうじゃないですか、ノエに毒っす、天然でわかってないっすよね暑い日おっぱい蒸れたからって人前でもんだり、暑いからって胸元大きく開けて谷間寄せて見せつけてきたり、他人の背中に乗っけて休んだり。見舞いじゃなくて携帯端末での会話ならいいっすよ」

「病院だから携帯端末で連絡も取れないしなぁ。う~ん、ボクなりに胸のことは気を付けてるんだけどなぁシマにも言われたし。一応だけど別にボクはキューちゃんからノエ君を取る気はないよ」


「それは分かってるっすよ、それでもナモさんのおっぱいは凶器っす」

「ええ~……」


 二人が話していると後ろで金属同士が擦れあう嫌な音。

 大きな音に驚き振り返ればエレベーターは下の階へと降りて行っている。


「やっぱりこのエレベーター壊れてる、あれ扉すこし開いてない? 基地の設備の優先的メンテって話はどうなってるの?」

「来週に迫った作戦の準備で今車両整備に力を入れているらしいっす。それが終わらないとこれもたぶん治らないんじゃないんすかね。私は乗らないんで知らないっすけど」


 いなくなった後も嫌な音が響きそこから逃げるように速足で防壁を進む。

 屋根のある場所から出て見晴らしのいい防壁の屋上を歩く。

 広い道路のような防壁の上には見張り台や倉庫などが立ち並んでいて、その間に砲台のエクエリ、サーチライト、荷物を運ぶフォークリフトなどが置いてある。


「そういえば、ここ最近ボク生体兵器を見ていない気がするんだけども」

「そうっすね、一応毎日一般兵が見回りをして日中目に付く生体兵器は片っ端から倒していますし、危険視されていた特定危険種も精鋭でなんとか数を減らしていってますからね」


 二人はシェルターの外側へと向かっていく。

 落下防止の金網があるが錆びていて触れるだけでも外れそうな状態、月灯りを頼りに暗いはるか下を覗いた。


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