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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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強固なる防壁 2

 通報のあった店の前では人だかりと警備兵が集まってきていた。

 見れば人だかりの奥で勢いよく黒煙が上がり、その煙は通気口へと吸い込まれていく。

 黒煙に近寄らないようにシマより先に来ていた警備兵が野次馬を追い払っているが騒ぎを聞きつけ人は増えるばかり。


「これは何事ですか? 放火?」

「この店の発電機がいかれたらしい、中は停電。発電室は火災だってよ。いつもの整備不良だったんじゃないか? 今消火準備中だ、お前もこの辺の野次馬を追っ払うの手伝え」


 防火シャッターは斜めに傾いて止まっていてしまっていない。

 周囲には消火器を使った跡があるが今は誰も消火はしておらず消火器も放り捨ててある。


「消火は?」

「消火装備を取りに行ってるが整備兵が来るまで店には入るな、店内の通風孔のせいで火の回りが早い下手に入ればあっという間に火に囲まれる。中は発電機のそばに置いてあったらしい燃料に引火して手が付けられない状態になっていて。今、連絡を受けて仲間が制御室に掛け合って店内の通風孔の空気供給を止めてもらっているはずだ、無酸素にして炎の勢いを弱らせる予定だがなにぶん入り口の防火シャッターがこれだ、中のものが燃え尽きるのを待った方がいい」


 使い物にならないシャッターを顎で指し疲れた声で警備兵は言う。

 シマ達が喋っている間もシャッターの隙間から空気を吸い込み続けている。


「店内の消火装置は?」

「整備不良の機能不全だ」


「なんで、山のように資源は届いているのに」

「物資がたくさん入ってきても、今度は扱える人間が足りてない。修理にしろ整備にしろ買い替えるにしろどこも人手不足なんだよ。おまけに物資と一緒に来ている一般兵だ、工事や兵器メンテナンス、あっちに技術者が吸い取られている分、整備不良は一向に減らねぇよ。今できるのは人を寄せ付けないようにすることだけだ、ほらお前もいけ、換気を止めたらこっちに煙が逆流してくる。それまでにこの野次馬を遠くに引きはがせ」


 そういわれなんとも腑に落ちないまま、シマは勢いが一向に減らない黒煙に背を向け新たに寄ってくる人を近寄らせないように追い払う。

 後から集まってきた警備兵たちがその辺から集めた消火器で店の中の消火を試みるも循環のため吸い込む空気で衰える気がしない。

 仕方なく消火器を下ろし彼らも集まってくる野次馬を避難させることを優先した。


 追い払っても新たによってくる見物人たちを何分かの間相手をしていると、サイレンを鳴らす特殊な装甲車と消火装備を持った耐熱服を着た整備兵がやってきた。

 装甲車の見た目はほかと変わらない8輪車だがシェルター内用の特殊設計で赤く塗られた車体は耐熱版、本来銃座のある部分にはホースの着いた放水銃が付いている、兵員を輸送する目的の車内には緊急救急用の設備が入っていて負傷者の搬送も可能になっている。


「ようやく衛生兵と整備兵が来たか、さぁ、あれが通れるように道を開けろ。治安維持部隊の一つとしての俺らのできる役目はたせ」


 2台3台と集まってくる装甲車、降りてきた整備士たちによりホースは消火栓につながれ放水活動が始まり、衛生兵たちは警備兵たちとともに野次馬を追い払う。

 炎上する店内の空気が止められ黒煙があふれ出してくると、さすがの野次馬たちも蜘蛛の子を散らすように逃げていった。


 黒煙とともに炎も店の外へとあふれ出し、離れたところにいるシマたちのほうまで熱がきている。


「ここはもう大丈夫そうだな、俺たちもここを任せて離れるぞ。もう少し離れた場所で封鎖線を張る。野次馬も大半が逃げていったし後は俺らがやる、お前は警備の仕事に戻れご苦労だったな」

「わかりました、お疲れ様です」


 シマは野次馬を追い払う仕事から解放され、火事場から離れて本来の仕事に戻る。



 そして、カジノへと戻る気もなく適当に街をふらつき時間をつぶし約束の時間が近づくとそうそうに仕事をあがってミナモの家へと向かう。


 下層市民の家は中央区や住宅街から遠く離れ、自分らの管理が任された畑達の真ん中に寂しくぽつんと建っている。

 家から少し離れるともうそこには街灯はなく何も持たず歩くと日が暮れたとき月灯りだけが頼りとなり、たどり着いた茶色く枯れた垣根に囲まれた木造の一軒家に、傾いた倉庫のついたミナモの家。

 インターホンはなくすりガラスのドアをたたくとエプロン姿のミナモが出迎える。


「おお、シマが来た来た。ようこそ我が家に、もう少ししたらボクの方から連絡しようとしてた」

「お、おおう。早めに終わったから……」


 ワイシャツの袖を二の腕まで腕まくりをし、料理に使っていたであろうヘラを持ったミナモの姿にシマは思わず見とれていた。

 高い段差を上り家にあがり差し出されたスリッパを履く。


「ごめんね汚くて、シマうちに来るの何度目だっけ? 後で片づけるから」

「う、うん?」


 玄関から進んですぐ壁に空いた穴から冷たい風が吹き込む、最近空いた穴らしく穴の真下に壁の欠片が散らかっている。


「この穴は?」

「お父さんが酒に酔って暴れたときに空けた穴」


「悪い」

「いいよ、普通壁に穴が開いていたら気になるだろうし。さぁ、それよりもご飯だ」


 穴の開いた廊下を通ってリビングに通される。

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