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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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強固なる防壁 1

 ミナモと別れシマはバスに乗って住宅街へと戻ってきた。

 源の行動の際、ポケットに入れ電源を切っていた無線機をつけると事故でおきた交通渋滞の情報が淡々と話されていて、それを聞き流しながらシマは何かトラブルかないか見回る。


 朝は通勤、昼間は工事、夕時になれば買い物のための一般の自動車があちこちの店へと向かいそのたびに渋滞ができる。

 依然はこのようなことはなかったが、各地から集まった一般兵たちで急激に人口が増えたため、中心部ほどではないが住宅街も主要道路や裏道のの交通量は多く時間帯によってその車種も変わり、トラブルも時間帯ごとにかわってくる。


「すみません、治安維持隊の警備兵の人ですよね、ちょっといいですか?」

「なんでしょう」


 後ろから声を掛けられシマは声のする方へと振り返った。

 花に詳しくないので胸元に書かれている花のデザインが何の花かはわからなかったが、灰色の強化繊維の制服に身を包んだシマと同じくらいの男性。

 彼はシマのワッペンをを確認すると彼は精鋭が持つ携帯端末を差し出してくる。


 端末の液晶画面には地図が映し出されていて中心に目的地とみられる赤い点。


「ここへ行きたいんですけど、似たような道が多くて」

「ああ、それならこの道を二つ先で曲がってもらって少し進んだところに看板が立ってますので、すぐに見つかると思います」


「ありがとうございます、助かりました」


 精鋭の男はシマに頭を下げその場を離れていく。

 彼の向かう先によく似たデザインの灰色の制服の女性が立っている。

 鼻のあたりまでマフラーで顔の覆っていてニット帽、耳当て、手袋まではめての全身防寒。


「ここからもう二つ先だってさ、ヒメカさん」

「そうですか。では行きましょうミチカゲ、そもそもあなたが鈴蘭隊に声掛けさえしなければ一般兵の人が送ってくれたというのに」


「だって、だってよ、俺は鈴蘭隊に世話になったし見かけたら挨拶くらいしておかないとよぉ」

「その結果私たちは今こうして迷子になったんじゃないですか。早く行きましょう」


 彼女もシマに頭を下げると道を尋ねた彼と一緒に教えた道のほうへと歩いていく。

 彼らの去り際の会話が耳にふと何処かでその精鋭の名前を聞いた気がしたが、一度首をかしげるだけでシマは深く思い出すことはなかった。



 ある程度地上を見て回り特に大きな問題は起きていないと判断するとシマはふらりと地下へと向かう。

 シマの向かう先、窓のない大きい箱のような施設は多くの人が出入りしている。

 建物に入ると見た目よりずっと狭い、入ってすぐに改札口がありその先はだだっ広いロビー、その左右に大きな扉が並んでいる。


「おっちゃん、見回りだ。下に降りさせてもらうけどいいよな」

「ああもちろん。改札はパスでいいよ、おつかれさん」


 ワッペンを見せ管理人に確認を取らせるとシマは改札を抜け奥へと進んでいく。


「そいじゃまた帰りに寄らせてもらうから」

「あいよ、行ってらっしゃい」


 多くの人の出入りのあるエレベーターに乗るためだけの施設に入り、管理人と軽くあいさつを交わすとだだっ広いエレベーターホールを歩き、何基かあるうちの一番早く着いたものの扉へと向かう。

 最大40名ほどが乗れる清掃の行き届いた汚れ一つない清潔感のある白い円筒のエレベーター、出入り口が別で入り口のほかに閉まっているが奥にもう一枚扉がある。

 シマはそれに乗り十数名とともに地下へと降りていく。


『地下2階、遊楽街エリア、お降りの際は荷物のお忘れにご注意を』


 アナウンスとともに入り口とは別の扉は開きシマはエレベーターを降りる。

 地下は常に一定の温度に保たれ何層にもわたって区画分けされた空間が広がっていて、その地下フロアの一つ。

 現在の時間帯シェルターは就業時間、この階の施設を訪れている客は高齢者がが大半で若い客はマクウチシェルターとは違うデザインの戦闘服のよそから来た一般兵の姿がちらほらみえる。


「まだこの時間帯はトラブルもないだろうし人も少ないけど、一応……確認な」


 床に敷かれた赤い絨毯を踏みギラギラ光る電光掲示板の指示に従って、シマはまっすぐ金色の扉の施設へと向かった。

 路上に物を置くな、計画性なく金を借りるな、ごみのポイ捨て禁止、悪質な呼び込みは罰金、店の敷地外に看板設置禁止、などの注意の張り紙以外はほとんどが店の宣伝ポスターで埋め尽くされた通路。


 施設の中は地下に空気を送り込む換気扇の音をかき消す騒がしい音楽と電子音、歓声に交じって金属のメダルの重なる音。

 高い天井から釣り下がる大きなモニターには数字と倍率が流れ、七色に輝くミラーボールが回っている。


 ――いつ来ても騒がしいなここは……見た感じいないな、……もう少し見たら帰る。


 ガンガン響いてくる音楽に片耳を押さえながら店内を歩き回る。

 きらきらと金や銀色のふちが輝くメダルやカードなどを使ったギャンブル場。

 酒や香水の香りがまじりあった甘いにおいの施設をざっくりとみて歩く。


 日が高い時間帯にもかかわらず集めらた一般兵たちが利用しそれなりの人であふれかえっていて、治安維持隊の警備兵のシマを見て彼ら彼女らみな背を向ける。


 ――いた、居やがった、こんなところに。……くそっ、ミナモが頑張ってるってのに。


 目に入ってしまった一人の男。

 一般兵を除けば時間を持て余していた老人の多い中ひとり目立つ中年の男性、服装もかっちりをした高そうなスーツでより一層周囲と浮いていた。


 ギャンブルに夢中で顔は見えなかったがその後姿を見てシマはこぶしを握る。

 シマからしたら彼は他人だがその姿を見て思わず駆け出しつかみかかりそうになる。

 数歩歩いただけでシマを止めたのはたまたまかかってきた無線。


『地下二階、遊楽街第3ブロック、店名直立でトラブル発生、付近の警備兵は急行せよ。繰り返す、遊楽街でトラブル発生』

「近くか、くそっ」


 無線を聞いてシマは湧き出す怒りをぐっとこらえ踵を返し現場へと向かう。


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