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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
11章 狂おしき崩落日和 ‐‐闊歩する巨兵‐‐
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荷運び日和 2

 荷物を膝の上に置き腕を伸ばす。

 冷たい風が吹くも暖かな日の光に充てられてミナモが小さくあくびをした。


「ところでお前はいつまで精鋭を続けるんだミナモ?」

「ボク? ボクはまだ全然戦えるよシマ、なんでそんなこと聞くの?」


 農村区画と違って隅々までしっかりと電気の通っている市街地のバス停の電光掲示板には、次のバスの到着時刻が映し出されていて、道路を挟んで向こう側の公園には子供たちが歩道の剝れたレンガを積み木の代わりに遊んでいるのが見える。


「お前のいる隊、もう何人人が入れ替わってるか知ってるよな」

「ううん、まぁ一緒に戦ってきているからね葉欄隊として」


「去年は2人、ミナモが入ってからを今の二人を入れて入れて6人、みんな生体兵器と戦って死んでるんだぞ……」

「そりゃ戦うのがボクたちの仕事だからね」


「だったら、こんな危険な仕事」

「ボクは何度も特定危険種とも戦ってきた、殺しに行く以上殺されるのも仕方ない。向こうは人の何倍も強い、昔いた生体兵器の拠点壊しという災害種はシェルターを襲わず、前線基地を破壊し続けて千数百人というひとを殺したという、それに比べれば一人や二人の犠牲なんて小さなものでしょ?」


「ミナモ、それ自分に重ねるなよ、ほかはどうあれお前家族のために精鋭やってるんだろ、死んだらお前の父親や妹たちはどうする」

「お説教じみてきたなぁ。ほらバスが来た、乗ろ」


 決済カードを取り出し、話の途中でミナモが逃げるようにバスに乗り込む。


 バスに乗り住宅街を抜けるとそこから先は見渡す限り畑が続いていて、畑のさらに向こうは集まってきた一般兵たちの宿舎や兵器倉庫が立ち並ぶ。

 ミナモの向かう先の最寄りのバス停でおりると荷物を置いて自販機に立ち寄り飲み物を買う。


「おーいシマ、茶とスープとお汁粉どれがいい?」

「お汁粉」


「ボクと意見があったね、ボクも」

「どうすんだよ、取り合いか?」


「まだボクの分のお汁粉一本しか買ってない、危なく一本を半分こするところだったね。投げるよ、ほいっ」


 バス停でお汁粉を飲み休憩をとると、また荷物を持って歩きだす。

 彼女の向かう宿舎は道路を通ると遠回りになり、近道と二人は枯れ草で覆われた畦道を進む。


「転ばないでよ、新しい制服を渡す前にしわくちゃにはしたくないからね」

「ああ、大丈夫だ心配ない。これくらいの道は遊びでも畑仕事で散々歩いた。ところで新しくミナモの隊に入る新人ってどんな人なんだ? 特定危険種との戦いを生き抜いていけそうなのか?」


「う~ん、難しいところ。ボクより年下なんだよね、新しい子は。別のシェルターで精鋭に推薦されて、ついこの間まで研修かなんかであちこちシェルター回って生体兵器と戦ってきたらしいんだけど、二人とも戦士って顔じゃないんだよね」

「それならミナモもそうだろ」


「少し問題があるのが、うわさに聞く問題児の精鋭らしい」

「問題児?」


「統率が取れずに自分勝手な行動するの。隊長とボクの二人しかいない隊だし必然ボクが二人の教育係になるんだろうなぁ。隊長は面倒を見ないだろうし、今までは死んじゃった副隊長が新人教育していたから」

「なんであれつまり新人は問題児の不良が来るのか、なんかあれば俺に言えよ」


「シマに何ができるのさ」

「ミナモよりはしっかりと叱れる」


「たしかに、それは間違いない。んじゃシマ、なんかあったら呼ぶね。んでさ、新しくくる子は同郷らしくて仲がいいっぽいんだよね」

「なるほど、だとしたら厄介だなそいつらが協力して厄介ごとおこしそうだ」


「一応二人のプロフィールとか見てみたけど、そこまでひどい子じゃないみたい。二人がいた鈴蘭隊は問題児精鋭の筆頭の一つらしいんだけど、隊長がなかなかにひどいものだった」

「筆頭の一つって言葉おかしくないか? それでどんな感じにひどいんだ?」


「ぶっ飛んでる。一緒に行動する精鋭どころか自分の部下さえおいて隊長が一人で突撃しようとしてる、なんで隊長してるんだかよくわからない。とにかく集団行動が苦手っぽい」

「そんな隊の新人か、がんばれよ。さて、ついたな」


 二人が通常の道に戻ると見えてきた畑の真ん中に立つ一軒家。

 木造で年季の入った外観の前まで来るとミナモは荷物を地面に置きカギを開けて荷物をもって中へと入りシマも後に続く。


「荷物、玄関に置いておいていいよ、後はボクがやっておくから。シマはどうする、上がっていくならお茶出すよ」

「なら少しだけお邪魔するか。仕事に戻らなきゃいけないからすぐ帰るけど」


 靴を脱ぎ散らかし速足で廊下を進んでいくミナモ、シマはその靴をきちんとそろえて並べると彼も家に上がる。

 ミナモの歩いて行った後を追い軋む床を歩いていき、シマはすりガラスのスライドドアを開けると物で手狭となった居間に続いていた。


「今誰もいないから気にしなくていいよ、私も実家に帰るし隊長はいつもどっかいってるしここで寝泊まりすることになる新人も明日まで来ない。ゆっくりできるよ。シマ、お茶と紅茶ならどっちがいい」

「お茶で」


 居間には棚やタンスがいくつも置いてあり壁には日に当たり変色したポスターやタペストリーが張られていて部屋の真ん中にはこたつが置いてある。

 こたつの周囲には統一性のないジャンルの雑誌が乱雑においてあり、シマはそれらを端に避けて座れる場所を作った。


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