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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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帰港 2

 アラタとシンヤ二人が向かう先は自室。

 通り過ぎていくほかの部屋はすべて扉が開かれていた。


「この先に行ったんだから、行先はここしかないよね」

「だな、この辺で二人が行きそうなところはここしかないな」


 戦闘の跡が残りあちこちに空いた壁の穴から吹く風でどこからか飛ばされてきた部屋の装飾が転がっている。


「すごい散らかってるけど、部屋ん中は無事なのかこれ」

「戦闘は終わったって聞いたけど、まだどこかの部屋に生体兵器が隠れてたりしないよね、誰もそばにいないし襲われたら助からないかも」


 そういう話題をしているときにタイミングよく、何処かの部屋の割れた窓から生き物の鳴き声のような隙間風が吹く。


「ひゃ!」「ひっ!」


 その瞬間話をやめてお互いに肌を寄せ合う、ただの隙間風だとわかると落ち着き離れて歩き出す。


「この辺全部の扉が開いてるのは誰かが生体兵器がいないか調べたからだろうから、普通に考えて大丈夫だろ。生体兵器をすべて倒して安全が確認されたから戦闘終了になったんだ、怖がることなんかねえよ」

「今兄さんびっくりしてたじゃん」


「血見るの怖かったけど慣れちゃった」

「ほんとにな、艦内にシュトルムが乗り込んできてからあちこちで血を見るようになったからな」


 あたりを見て回り自室の部屋の前に立つ。

 他の部屋は扉が開いているのに二人の部屋だけ扉が閉まっているのに違和感を感じ二人は自分たちの部屋の中へは入らずそのまま通路に立ち扉を眺める。


「私たちの部屋の前だけ扉閉まってるよ兄さん、なんで」

「知らねーよ。風だろきっと、まだ強いし勝手にしまったんだよ」


 そのまましばらく二人は扉の前で立ち止まったまま動かない。

 今まではいなかっただけで、もしかしたらがある今手元にエクエリはなく生体兵器が隠れていたとしたらどうすることもできない。

 艦内放送が聞こえないことから配線は切れていてAIミカヅキの援護もないだろう。


「……どうしたの。何でもないなら開けてよ兄さん」

「ちょっと待て、心の準備が……よし開けるぞ、アラタどっちの部屋からにする」


「じゃあ私たちの部屋で」

「よし、任せとけ」


 アラタ達の部屋の前に立つ、大きく深呼吸をすると意を決してシンヤが一気に扉を開けると中へと進んでいく。

 他の扉を開けて調べた誰かを信じてシンヤは自分たちの部屋に生体兵器がいないことを祈ってドアノブに手をかける。


 中に生体兵器はおらず代わりに下の階まで貫通しなかった電柱が部屋の真ん中に新しい柱を作っていた。

 その時の衝撃か部屋の中はごみ箱をひっくり返したかのような散らかりよう、思わずシンヤが悪態をつく。


「うわぁ、ひどいなこれ部屋の中がめちゃくちゃだ、真ん中刺さってるのは電柱かこれ? なんにしろ片づけるのが大変だぞ」

「え、いや、……電柱が増えた程度で床とかもともとこんな感じ……アオイさんが部屋をきれいにしないから、私は何度も片づけたんだけどもそのたびに、……っと、見た感じだとアオイさんはいないみたい。兄さん次はそっちの部屋を開けて」


「俺らの部屋もなんかしら刺さってるんだろうか」

「この部屋にもいなかったらどこに行ったか分からないね、どうしよういなかったらリアスさんとこに戻る? それとも艦内歩き回って探す?」


 シンヤは同じように深呼吸をしてから扉を開く。

 先ほどと違ってシンヤの部屋は散らかっておらず攻撃を受ける前と変わらずきれいなまま、部屋の奥へ行くとベッドに長い癖毛がベッドの端から垂れていて誰かが寝ている。

 そばによるとアオイが寝息を立てていて気持ちよさそうに寝ていた。


「誰か寝ている……アオイさん? あ、ソウマさんも」


 アラタがそばにより顔を確認すると、アオイがベットに大の字に寝ていて同じベッドの端に追いやられる形でソウマもいた。



「二人ともぐっすり眠ってる、俺らが来たのに全然起きねえな」

「なんでおんなじベッドに?」


「アオイさんたち見てたら私たちも眠くなってきた。ふあ~、兄さんベッド借りるね」

「待て俺のベッドだ、向こうの部屋に自分の部屋があるだろ。自分のベッドで寝ろよ」


「電柱刺さってるから嫌に決まってるでしょ、兄さんが代わりに私のベッドで寝てよ」

「あの汚い部屋でか、断る。一人で自分の部屋に行けよ」


「怖いから絶対嫌、一人でなるだなんて考えられない。ねえ兄さん床でもいいからここで寝ちゃダメ?」

「……ったく、俺が床で寝るから」


 寝る準備をし徹夜の戦闘での疲れで気を抜いた途端に睡魔が襲い掛かる。

 横になったとたんに意識を失うように二人は眠りに落ちた。


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