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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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嵐を晴らす砲撃 5

 破壊の限りつくし散々暴れまわったその生体兵器は、静かに再び人の声の聞こえる方向へと向かっていた。

 艦内は破損がひどく艦内カメラは機能しておらずミカヅキは生体兵器の接近を発見することも警告こともできなかった。


「姉さんそろそろ僕が変わろうか?」

「いいわ、ソウちゃんはバッテリーを変えてて」


 エネルギーを使い果たし砲台のエクエリのバッテリーを交換していたソウマ。

 バッテリーの交換中は特にすることがなく周囲の様子を見ていたアオイは双眼鏡であらかた落とし、空に残った生体兵器の位置を確認していた。


 砲室の外では砲台のエクエリの弾種を変えバッテリー切れをおこした、空のバッテリーをもって充電所へ向かっていく船員達。

 周囲から人が消えバッテリーが余っていたアオイとソウマだけになった。


「もうだいぶ減ったわね生体兵器も」

「シンヤも落とせなかったけど姉さんも同じくらい充てられてないよ。一匹船内に居れたら数人の犠牲者が出るんだからしっかり撃ち落としてよ」


「わかっているわそれくらい。動き回らなければあっという間に撃ち落としたのに」

「やっぱり僕が撃つよ」


 バッテリー交換を終えたソウマは撃ち尽くし使い果たした空のバッテリーをもって席に戻る。

 撃てるようになるとアオイはまた砲台を動かし生体兵器を狙う。


「ソウちゃんには無理よ、エクエリを握るにはまだ早いわ」

「小型のエクエリで姉さん助けたじゃん」


 島へと向けた艦砲射撃のたびに破損個所が軋み嫌な音を立てているため、アオイが音の方向に振り返りソウマも耳を塞ぎたくなるような音の方向に目を向けた。

 砲撃で揺れるたびに破損個所が擦れあい嫌な音が出る。


「ミカヅキ、ボロボロだね。今まで傷ついたことすらないのに」

「ええ、そうね。すべて終わったらミカヅキをほめてあげないと、私たちを守ってくれたし……まぁ、隔壁は全然役に立たなかったけども」


「それは姉さんの逃げ方が悪い最初から下を目指せば上部構造物より分厚い水密隔壁があったのに」

「ミカヅキの指示よ、助けが来ているからそちらへ逃げろと」


 二人の背後で破損していた壁が大きく軋む。

 会話を続けながら撃ち落とすのに夢中なアオイは砲台の操作を続けていて後ろの異変に気が付いていない。

 裂け目の間から少し前にアオイを追っていた虫の生体兵器が出てこようとしていた。


「ここで船体ぱっくり割れたりしないでしょうね?」

「ねぇさん! やばい、ここから逃げなきゃ!」


 壁を破壊し少しづつだがその体が出てくる、あわててソウマは席を立ってアオイの手を引いて席を立たせる。

 何事かと驚いたが後ろの状況を見てさらに驚く。


「またこいつ!? まだ生きていたの、誰か仕留めておきなさいよ!」


 周囲を見るが皆バッテリーを取りに、あろうことか砲手までもが持ち場を離れて左右のお隣さんから少し先まで無人だった。


「誰もいないわ! どうなってるの」

「バッテリーがなくなったからほかの砲台に行ったのか一緒にバッテリー取りに行ったのかも」


「そういうことじゃないわ、どうするの」

「わからないの姉さん、逃げるの!」


 ここに大型のエクエリはない。

 固定され一定の方向にしか動かすことのできない、すぐ横に強力な砲台のエクエリがあるが専用の工具がないと取り外すことはできないため戦力にはならない。


 そのため二人ができることはただ逃げることだけ。

 慌てていたため席にタブレットを置いてきてしまったが小型のエクエリはとってきた、二人は周囲に危険を知らせながら走る。


 生体兵器が狙うのは一番近くにいたアオイとソウマ、誰でもよかったのか二人を覚えていたのかは知らないがまたしても生体兵器との鬼ごっこが始まった。

 アオイとソウマを守ろうとしても武器がないため何もできず彼らも逃げるだけ。


 そのまま走っていても意味がないと細い通とに逃げ込むソウマの後に続いてアオイが曲がる、しかし二人が全力で逃げてきた先は行き止まり。

 空から落ちてきた戦車の砲塔が通路を塞ぎ、本来続いていた道を寸断している。


「行き止まりよ」

「姉さんまっすぐ進んで」


 天井を見上げれば空が見えるが登ろうとしたが砲身を足場にしても上には手は届きそうにはない。


「どうするの、ハッチから向こう側に行けばいいの?」

「早く行って、もうそこ曲がってきてる」


 破損したキューポラから向こうへと潜り抜けようとアオイは手を伸ばし傾いた砲塔を上っていく。


「この厚さなら、装甲は破られない逃げ切れるわ」


 反対側へと続いているとわかるとアオイはスルリとキューポラを抜け反対側から顔を出すとソウマをつかもうと手を伸ばす。

 小型のエクエリからバッテリーを引き抜いて手を伸ばすアオイに渡した。


「姉さん、お願い!」


 戸惑うことなくバッテリーを受け取ると向こう側へと引っ込む。

 バッテリーを渡しソウマが振り返れば生体兵器は眼前へと迫ってきていた。

 せめて生体兵器から逃げようと入ってこれないだろうと傾いた走行の下へと入り込む。

 小さな体でも行ける範囲は小さく体を半分ほど防楯の下に入り込ませた程度、生体兵器にこびりついた血の匂いが強くなる。

 パきパキと音を立てる顎が迫るとソウマが叫ぶ。


「姉さん!」


 その声をトリガーに砲塔だけの戦車の主砲が放たれた。

 車体からもがれ砲塔だけの整備不良だが搭載されているのは砲台のエクエリ至近距離での威力は強力。

 その体は主砲を乗り越えていたため装甲の薄い腹を打ち抜く。


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