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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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嵐を晴らす砲撃 4

 戦闘指揮室の一番大きなモニターに映るスターサークル。

 当然その足元にあるものも。


「ミサイル!」

「みたいだな」


 泣きつかれ眠ったアラタと彼女に膝枕しているシンヤ。

 出て行って半時と立たないうちに服を真っ赤に染め泣いて帰ってきたアラタに驚いたものの、正体不明の巨大生体兵器にそれどころではなくなった。


「なんでそんなに落ち着いているんですか?」

「問題はない、電子制御で信管を作動させいるあれはただ落としただけではただの鉄塊とそう変わらない」


「あ、そういう……」

「繰り返し戦闘を学習して頭を使ったみたいだが、それでも機械は操作できない。それにまだ動くみたいだ、ミカヅキが操作権限を奪った。……見ていろ、ミカヅキいいぞ」

『了解しました、光量補正で一時的に画面が暗くなります』


 スターサークルの掴んでいたミサイルが前触れなく爆発、周囲の護衛ごと焼き払う。

 それを見て指揮所では小さく歓声が上がりその声にアラタが目を覚まし何事かと周囲を見回す。

 何事かとアラタが疑問を口にするが皆画面に夢中になっており答えは返ってこない。


 艦長とリアスがモニターを見ながら、ほかの画面に映る場所で異常がないかを確認している。


「何でミサイルなんか……ああ、シェルターから持ってきたのか。いくつものシェルターがこいつらにやられ、その分数の多く増えた……が、それももうおしまい」

「いいや、普通は全弾撃ちきり防衛手段がなくなってからシェルターが陥落する。ミカヅキが見つけた、ミサイルの習得先はおそらくあれだろう、君らの密航の目的、確かめたかったのかな、ザンマ……正しくはイツハ・シンヤくん、アラタちゃん。なんで名前を偽っていたのかわからないけど、関係性を知られたくなかったとかかな」


 艦長に話しかけられ身をこわばらせるシンヤたち、カメラを下に下げさせモニターに映る映像を見せた。

 シュトルムの住む島の付近、沈んだが底が浅く上部構造物の一部が飛沫をあげて打ち付けるまだ波の高い海面に見える鋼鉄の構造物。


「ただいま、父さん……」

「ただいま……迎えに来たよ」


 泣きやんだ二人だったがそれを見てまた涙が頬を伝う。

 二人の密航者の長い船旅のゴール地点、自分の乗っていた船の最後の確認沈んだということは都市戦艦内に生存者はいない、あの場所なら逃げ出したとしてもシュトルムのえさになったに違いない。

 名の刻まれない巨大な墓標を眺め手を合わせて祈りを上げる兄弟。


「何年か前、失敗に終わった第一次シュトルム討伐作戦、旗艦の都市戦艦イツハ。こんなところで沈んでいたんだな。シェルターの防衛力をもってなら災害種を退けられる、それを信じて都市戦艦とその護衛艦数隻で行かせてしまった」


 一時船内を騒がせたスターサークルの墜落以降、脅威になるような生体兵器は現れず海面から飛び出ているイツハの上部構造物を見る。


『リアス様、旗艦クズリュウから砲撃指示が出ました。シュトルムの巣となっている島への攻撃支持を』

「砲撃開始の指示を砲室へ。艦砲射撃開始だ、島を吹き飛ばしてしまえ」


『了解しました。……、砲室への指示完了しました。皆さまこれより砲撃を開始します、法のそばには近寄らないようお願いします。また、砲撃音などにご注意を』


 指示の後、都市戦艦全体が小さく振動するように揺れる。

 ミカヅキについている島を狙っている主砲が轟音とともに火を噴く。

 島を射程に収めたミカヅキを含めた都市戦艦三隻から放たれた砲弾が島へと着弾すると大きく爆発し島の構造物を破壊する。


 主砲装填は自動、標準も半機械化されていて砲主は簡単な手順と引き金を引くだけで砲弾が十数秒おきに飛び出ていく。

 遅れて4隻目の都市戦艦が加わり絶え間なく続く、砲撃音が壁などに阻まれどんなに小さくなっても音は艦全体に響く。



 何匹もの生体兵器が弾の進路場へと向かいミサイル同様に途中で爆破させ巣の破壊を阻もうとするが、軽く脆い飛行型の生体兵器の体は信管を作動させることはできず砕け散り無残な肉塊へと変わるばかり。

 体当たりをやめ砲をつぶしに向かえばエクエリの集中砲火が待っている。


「向かう先がわかれば狙うのも楽よ」

「姉さん、その割には当たっていない」


『弾種の変更が許可されました、皆様バッテリー残量に気を付けて五月雨での戦闘を』


「五月雨を使っていいって、バッテリー姉さんちっとも撃ってなかったみたいだからいっぱい余ってるし、ガンガン撃とうよ」

「サボっていたわけじゃないわ。私は当たるとわかった時しか撃ってないだけよ」


「姉さんその割には当たってない」

「五月雨ね、おーけーよ。数うちゃ当たるのよ」


 砲身横のレバーを下げ弾種を五月雨へと切り替えると、なりふり構わず突っ込んでくる生体兵器へと向ける。

 砲台のエクエリが持つ威力を下げる代わりに高速連射が可能な五月雨、連射される光の弾は一本の線となって生体兵器を切り裂く一本の鞭へと変わる。


 一発一発は避けることができてもおってくる光の帯は一本ならまだしも、二本も三本と増えていき直撃を受けるとその体は巨大な刃物で切断されるように切り裂かれていく。

 都市戦艦の損傷していないシンジュガイの数だけ光の帯は増えていき、生体兵器は次々空中で千切られ海面へと消えていく。


「姉さんいい加減当ててよ」

「生体兵器が避けるから当たらないの。もう、これ壊れてるんじゃない!」


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