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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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艦内戦闘 11

 死者を踏まないように足元を照らし、ひとりひとり息がないのを確認していく。

 歩くたびに誰かが血だまりを踏みぴちゃりと水の跳ねる音が鳴る。


「声はあの隔壁の向こう側みたいだな……ここからじゃ見えない。おい、誰だかわからないがこっちまで来れるか?」

「ダメみたいだな、返事も帰ってこない。気を失ったかやられたか」

「ここからはエクエリを持った俺達が行く、武器を持たないものは全員後ろにいてくれ」

「明かり担当に誰かにいたもらったほうがいい、一人来てくれ」

「残ったほうにだれも武器を持ってないというのも危ないか、誰かひとり彼らを上に連れて行ってくれ」


 隔壁の奥からは返事はなく、ライトで照らすも何も見えない。


「おかしくないか? いや……何つうか録音を繰り返しているというか、同じなんだよ声のトーンがずっと」

「そういわれれば、確かに。この先には何があった? 暗くてここがどこだか分らん」

「この先は確かすぐに右に曲がれば武器庫兼倉庫だな、シンジュガイ用のでかい砲台エクエリの予備と修理用の装甲板とかが保管されている場所だ」

「開けていて遮蔽物もある、生体兵器が隠れていそうな場所だ。生体兵器がいるとして倒さないと他が被害を受ける。俺たち以外倒す人間もいない」


 エクエリを持った船員たちは覚悟を決めると声の聞こえたほう、恐る恐る隔壁の向こうへと消えていく。

 ひとり残ったエクエリを持った護衛とその場に残された武器を持たないアラタ達。


「あの、残った私たちはどうするんですか?」

「ここにいても仕方がない、負傷者と生体兵器は彼らに任せ上を目指す」


 アラタ達残った船員たちは半開きとは別の上へと向かう階段へと向かう海岸へと向かい進みはじめる。

 その途中にも生体兵器の犠牲となった船員たちがいて白い服を真っ赤に染めている、彼らの死体は五体満足なものはなく必ずどこかを食いちぎられたように破損しそこから固まっていない鮮血が滴っていく。

 足元の血を見て一瞬で頭から血の気の引いたアラタはふらつき横にいた船員に当たる。


「ごめんなさい! あ、座学の先生」

「アラタちゃんか……避難区画にいれば安全にこのまま帰れたのに、どうして出てきた」


「兄さんに会いに」

「そうか、ここも上も危険だ。迎えたらすぐに下に戻れ、倒れている彼らみたいになりたくなかったらな」


 力強くうなずきアラタは床を見てまたふらつくと教官に支えられる。


 隔壁の奥広い倉庫内へと進んできた船員たちはエクエリを構え中を照らす、棚やビニールシートのかかった資材の山が見え周囲に生体兵器が見えないとなると部屋の中へと入る。

 ライトで照らしながら奥まで進むと倉庫内一番奥の棚の上に白い生体兵器が一匹。


「あれがさっきの惨状を作ったやつか」

「明かりを破壊していったのもこいつなのか」

「逃げられないよう、一斉に撃つぞ」


 ライトを向けエクエリの銃口を向けてもその場から動かず首を傾げたりしている。


「撃て!」


 指示とともに引き金に手を指をかけた時だった。


「たす……、にげてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 突然絶叫する生体兵器。

 それは反響し人の声によく似た鳴き声にすくむ護衛たち。

 留まっていた棚と倒すように蹴飛ばし翼を広げ飛び立つとまっすぐ護衛たちのほうへと向かっていき彼らを飛び越え廊下へと出る。

 慌てて引き金を引くも光の弾はかすりもせず壁や天井に当たり消えた。


 狭い入り組んだ廊下では翼を広げることができず、生体兵器は壁にぶつかり床に落ちると羽を折りたたんで廊下を全速力で走り出す。

 追いかけようとした護衛たちを余裕で振り切る速度。


 逃げた先半開きの隔壁を跳ね上げ上に向かっていたアラタ達に白い生体兵器が襲い掛かってきた。

 背後から硬いものが床に当たる音を聞いて何かが迫ってくるのに気づくもライトを向けエクエリを向けるころには目と鼻の先。


「なんでこっちにっ! くそっ!」


 エクエリを持っていた船員は何もできずに血液をまき散らす。

 力なく倒れる姿を見届け棒立ちのなる。

 戦う手段を失い後はもう無抵抗な集団、我に返り生体兵器の姿を見てから逃げ出すも追いつかれ血を流し床に倒れていく。

 誰かが悲鳴を上げるもその肺の息を吐ききる前に声が出せなくなる。


「走れ、止まるな!」

「あの、どっちに行けば階段ですか! うぁっ」


 教官に突き飛ばされ廊下の端に飛んでいくアラタ。

 倒れた拍子にタブレットを落とし壊れていないかを確認してから拾い上げたころには立っているのはアラタだけとなっていた。

 白い体を血を浴び赤く染めた生体兵器が身を震わせるとゆっくりとアラタの前に立つと首をかしげる。


「たすけて……いたい……。はしれ、とまるな。だれか……」


 人の声を真似し繰り返す生体兵器を目の当たりにして竦みあがりタブレットを盾にうずくまる。

 遅れて追いついてきた武器庫へ向かっていた船員達はライトで照らし生体兵器とさっきまでともに行動していた床に散らばる仲間たちを見て怒りをあらわにする。


 武器を持たないアラタを後回しにし生体兵器はエクエリを向ける彼らのもとへと向かい体当たりを食らわせる。


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