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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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艦内戦闘 10

 

 ここは船の中でも偉い人たちが集まる場所で本当なら入れないところに自分はそこに居させてもらっているという自覚からおずおずと機嫌をうかがいながらアラタがリアスのそばへと寄る。


「あの、兄さんはいますか?」


 最悪の事態になっていないことを祈るような不安げな顔でアラタはリアスを見上げる。


「いや、ミカヅキから生存報告は受けているがカメラには映らないところにいるらしい」

「無事なんですね」


 それを伝えたとたんアラタの顔に笑顔が戻る。


「すぐそばまで来ているはずなんだが、さっきの放送でいろいろな場所で混乱が起きていてわからんな。ミカヅキ内の生体兵器の駆除も終わってないし、非武装の船員達を持ち場に戻らせるのはまだ危険なんだが」


 いてもたってもいられず部屋から飛び出していこうとするアラタ。


「すぐそばにいるんですね! 迎えに行ってきます!」

「待て待て待て、生体兵器が怖いんだろう? ここで待ってればアオイが引き連れてくるだろう」


「でもそれより一人になるのは嫌なんです、兄さんがいなくなったら、私」

「……迎えに行くならライトもっていかないと途中暗くて何も見えないぞ」


「ああそうですね!」

「これも持っていけ、スピーカーか壊れているからミカヅキの案内はこっちのほうが適格だ」


 リアスは腋に挟んでいたタブレットをアラタに差し出す。

 差し出されたタブレットには艦内の見取り図と赤い点が一つ。


「いいんですか!」

「この部屋に予備も二つあるし、ここにいる限り私は使わない」


 赤い点にはシンヤの名前があった。


「ミカヅキが最後に彼を見た場所だ、カメラかマイクに痕跡が残れば位置は更新される」

「ありがとうございます」


 タブレットとライトを持ち出し大切に抱え込むと戦闘指揮所を出るアラタ。


 ――忠告はした。自分の命は後悔の無いように使え。


 閉まる扉を振り返ることなくリアスはまにたーを見続ける。

 避難区画から上へ向かう者たちの後についていきシンヤたちのと合流を目指す。


 ――一人は嫌、兄さん無事でいて。


 階段を上がるとすぐに明かりは消える、電気系統が壊されたようで通路は真っ暗闇、手にしたライトを照らし壁に空いた手を添えて進み始める。


「わぁ、暗いなぁ……」


 明るかった避難区画とは真逆の漆黒の闇、誘導灯も赤色灯も壊され機能していないすべてを飲みこむ暗闇が通路の奥で口を開けていた。

 上に向かっていた船員たちは甲板へと向かう階段の前で立ち止まっていて何やら話している。

 アラタもその人だかりへと向かっていくと話し合っている船員たちの会話に耳を傾けた。


「なんでここは開かないんだ? 避難区画のシャッターはみんな開いたんだろ? どうしてここは閉まったままなんだ」

「そこの端をみろ。生体兵器が体当たりしたみたいで隔壁が派手に拉げて引っかかって上に上がらなくなったんだ、人の力じゃ押しても引いてもびくともしない」

「よっぽど強い力でぶつかったのか。それでもこの隔壁は抜けなかったようだな」

「仕方ない別の階段まで歩くか、この暗い中歩くのは怖いが明かりはないか? こう暗いと何がどこにあるかわからん」

「エクエリを持ってるものは先導してくれないか、生体兵器がこの辺まで来ていたのは確かだどこに現況がいるかわからない」


 開かない隔壁の前で話していた船員たちはライトをつけ暗闇を進みだす。

 その集団に紛れ込んでアラタも手元のタブレットの赤い点を見ながら通路を進む。


「兄さん怪我してたらどうしよう」


 ――途中で離れ離れなったアオイさんや兄さんと一緒にいるソウマさん無事かな、二人とも兄さんと一緒かな。


 タブレット上の赤い点は動いており移動を続けている。


 ――兄さん、こっちに来てる。合流できそう。


 アラタがタブレットの動く点に夢中になっていると一団が動きを止めた、それに気が付かずアラタは前を歩いていた船員の背中にぶつかった。

 鼻を押さえアラタはすぐに謝る。


「どうした、なんで止まる?」

「この先で、何か聞こえないか?」

「スピーカーが接触不良でザーザー言いてる以外は何も」

「いや俺にも聞こえた何かいる、みんな静かにしてくれ」


 その言葉に一段は動きを止め静かにする。

 足音も服の擦れる音も減りスピーカーが発するノイズが大きく聞こえる中、誰の耳にもその声は聞こえた。


「たす……けて」


「誰かいるのか? こっちだ、光が見えるか」


 暗闇の先にライトを照らす。

 ちょうど十字路の曲がったところから声は聞こえ声の主の姿は見えない。


「いたい……たすけて……」

「怪我をしているのか、そっちには何人いる? 生体兵器はいるか?」


「ひとりに、しないで……たす、けて」

「わかった、そっちに生体兵器はいないんだな? どうなんだ?」


 助けに行こうという声が強くなり最後尾をついていくアラタからでは見えないが前方からエクエリを構える音が聞こえ一団はゆっくりと通路を進み始めた。


「ほんとに進んでも大丈夫なのか?」

「でも生体兵器がいたら生存者なんていないだろ?」

「いたらミカヅキが隔壁を下ろしているだろ、早く助けないとこの間に手遅れになったらどうするんだ」


 十字路すべてをライトで照らし生体兵器がいないことを確認すると床に倒れたものの中で息のあるものを探す。


「いやだ、しにたくない……たすけて、いたい、いたい」


 通路を曲がると複数の死体とエクエリがつっかえ棒となり半開きの隔壁声はその半開きの隔壁の向こうから聞こえてくる。

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