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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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艦内戦闘 8

 下の階に降りると配線の切れつかなくなった照明が多く外からの光を取り入れる窓もないため、通路は完全な闇。

 エクエリを持ったソウマと非武装の二人を中心に囲む護衛たち。


 見慣れ歩きなれた艦内もひとたび明かりが消えれば、自分の手もとすら見えない別の景色となる。

 護衛たちが照らすライトの明かりだけが頼りで、それらが左右に振られるたびにいくつもの影が動く。


「真っ暗ね、電気壊されて何も見えない」

「赤色灯も誘導灯を徹底的に壊してる」

「これ生体兵器がやったのか?」


「わざわざライト壊すって人がやる意味ないでしょ」

「音か臭いで動けるのかも、あるいは暗くても目が見えるとか」

「向こうだって明かりがなきゃ何も見えないだろ、なんだ暗闇で目が見えるって」


「喉乾いたわ。走ってから何も飲んでない」

「我慢して姉さん。今非常時なんだから、また生体兵器に襲われるよ」


 暗闇と断線でミカヅキの艦内カメラも機能しておらず、護衛の何人かがエクエリに着いたライトをつけ通路を進む。

 幸い移動中一度も生体兵器と出くわすことはなく避難区画の上の階まで無事地たどり着く。


「このまま下にいければ早かったんだがな」

「危険は最小限にと緊急時は数か所を除いてすべて完全封鎖だからな」

「アオイ様もソウマ君もいるし、ミカヅキに開けさせることはできないのか」

「他の扉とも回路が同じで一か所開けると全部開くらしい、ほかの扉の前に生体兵器がいたら避難区画へと降りて行っちまう」


「不便なつくりだ、しかたないか。この先を進み途中で曲がれば避難区画への道だな。いこう」

「ああ、ただまっすぐ行くと発電機だ、エクエリのバッテリーが心もとない、先にそちらへ行って補充できるか」

「俺も早めに変えておきたい、残量が数発分しかない。バッテリーの予備を持ってくるべきだった」

「アオイ様、一度遠回りしてもよろしいでしょうか? 戦闘が続きエクエリのバッテリー残量が減ってきており一度補給をしたいのですが」


 話を聞いておらず流れで護衛たちに会話振られ何のことかと一瞬呆けるアオイ、ソウマがそっと耳打ちで今までの内容を伝える。


「……ええ、いいですよ。いざというときにエクエリが撃てなくなってしまっては大変ですものね、二人も大丈夫よね少し寄り道するって」


 アオイに言われうなずく二人。


「確かあそこのそばにウォーターサーバーあったはずよね」

「なんか変だと思ったけどそれでか、姉さんなら先に避難区画へ行くと思ったから……ん?」


 手をつないでいたソウマが立ち止まり、彼に引っ張られる形でアオイとシンヤが立ち止まる。


「どうしたのソウちゃん」

「声が聞こえる。みんなには聞こえない?」

「おいおい、幽霊とじゃないよな!」


 耳を澄ませると何人かがソウマと同じ声を聴いた。


「だれ、か……。たす……けて、たすけ……て、くれ」


 暗闇の奥からかすれた悲鳴のような囁き声に耳を傾け護衛たちは音の聞こえるほうを見る。


「確かに聞こえるな、こっちだ」


 暗闇の先から聞こえるうめくような助ける求める声、声の聞こえるほうへと慎重にと向かっていきライトの光を絞り光量を上げ通路のずっと先を照らす。

 すると、白い服と白衣を真っ赤に染め上げた割れた眼鏡絵をかけた男性がたっていた。


「船医の先生!」

「みんな、撃つなエクエリを下ろせ!」


 なぜこんな暗闇に一人立っているのか疑問は生まれたもののその疑問はすぐに解消される。

 その場に立ち尽くす船医の後ろには翼の生えた生体兵器の姿が見えた、いくつものライトの光を受け船医の後ろで丸い目玉がきらきらと輝く。


「先生後ろ! 生体兵器が!」


 しかし船医はその場から一歩も動かない、正しくは動けないでいた。

 よく見えれば繊維の足は床についておらず、宙に浮いた足は片足だけ振り子のように揺れている。


 護衛たちはエクエリを構えようとするが船医に当てててはいけないと銃口は下を向いたまま。

 生体兵器に背中の側の服を咥えられ、意思のない人形のように持ち上げられるだけのその体の指先がわずかに動く。


「まだ生きているわ!」


 船医を加えたまま生体兵器が光の照らされるほうへと一歩前に出た。

 それに合わせて咥えられている船医の体が大きく揺れる。

 片足を折られてるようで左右で足の揺れ幅が違い、片方は関節が普通曲がらない方向へと振られてそのたびに悲痛なうめき声が船医のほうから聞こえる。


「た、たすけて……いたい……」


 生体兵器に咥えられた船医が依然助けを求めてくるが顔を見合わせるだけで誰も助けに行こうとはしない。

 船医を捨てて襲ってきた場合に備えてエクエリをいつでも構えられるようにして護衛たちは距離を詰めてくる生体兵器から距離をとる。


「あの生体兵器なんで船医を殺さないんだ? それでなんで咥えたままなんだ?」

「たぶん……」


「たぶんなんだよ? 続きは」

「たぶん、人質として使えるからだと思う、シュトルムはシェルターを何度も襲ってる生体兵器、人が人を殺せないことを知っているのかも」


「なんだよそれ、何か方法はないのかよ」

「ミカヅキの対人兵器で、気をそらせれば助け出すチャンスと攻撃する隙が生まれるかも」


「だったら早く」

「電気が消えてるし、武装が機能してないのかも。もうずっと生体兵器がいるってのにミカヅキの注意とかないし」


 護衛たちの間で船医を助けるかアオイたちを逃がすかの相談を聞きながら、三人は護衛に後ろに下がるように言われ来た道を引き返すようにと追いやられていく。

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