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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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艦内戦闘 7

 シンヤの攻撃を受けて丸まっていた生体兵器が体を開く。

 しかし、丈夫な背中を持った重たい体は思い通りに動かないようで、グルンと半回転したかと思うとエントランスの手すりを壊して下の階へと落ちていった。


「っ……!」


 どうなったかを確かめる間もなく重たいものが落ちた音が響く。

 ソウマは小型のエクエリを構えて慎重に手すりまで近寄り見下ろす、アオイに肩を貸しているシンヤからでは見えず尋ねる。


「死んだのか、あのエビ?」

「いや、生きてる。でも上がっては来れないみたい。体が重いのかわからないけど柱を伝って上がってくる様子はないよ。大丈夫、移動しよう」


「下に落ちたってことは、下に行けばまた出会うんだよな? どうすんだよ」

「今あいつが進んでいった方向は見た、別の道を進めば鉢合わせないように逃げ切れる」


 その場を離れ避難区画へ向かおうとしていた三人へミカヅキが話しかける。


『アオイ様、ソウマ様、シンヤ様、ただいまリアス様とアラタ様が安全区域へと避難を完了いたしました』


 相変わらず落ち着いたきれいな声でしゃべるミカヅキの報告に少しいら立つアオイ。


「私を置いて行った薄情者たちね。何が完了しましたよ、私、死にかけていたのに助けにも来ない、薄情な友人を持ったものだわ、あれがソウちゃんのいい名づけなのよ」

「まぁまぁ、あの人は何よりも先に副艦長として生き残る義務があるから大目に見てよ。報告ありがとうミカヅキ」


『現在、生体兵器と戦闘中以外の戦闘員をアオイ様の護衛に向かわせております。周囲のカメラに生体兵器の姿はありませんので、この場所でお待ちください』


 落ち着いてきたアオイはソウマから離れ自力で立つ。

 白い水兵服は赤黒いまだら模様が飛び散り一部が破けている。


「ところで、それ姉さんの血?」


 ソウマに言われ改めて彼女は自分の体をよじり見れる範囲をすべて見回すとごみで汚れた部分を軽く払った。


「違うわ、これ生体兵器の血よ、あの生体兵器以外にも狙われたのよ、服も破けるし、あ、足痛いと思ったら少し切ってるじゃない! もー、絆創膏持ってない?」

「姉さん、それより着替えたほうがよくない。生体兵器の血って毒とかあるかもなんでしょ、傷口に入ったら大変だし。この階、この先にランドリーあるから行く?」


「そうね。そうするわ、下着見えるか見えないか見たいな、ぎりぎりのスリット入ったまま下に行ったら心配される以上に恥かくわ。着替えるまで待っててくれる? ミーちゃん、助けが来るときはそこに向かわせて頂戴」


『了解しました。洗濯場へ向かわせます』


 ドラム型の洗濯機が並ぶ洗濯場へ移動すると部屋の中を確認しアオイは着替えに一人で中へ入っていく。

 何かあった時のために洗濯場の扉は開けたまま、二人は扉のわきに立ちアオイの着替えを待つ。


「中にはなにもいなかったし、姉さんは大丈夫でしょ何かあったら叫ぶだろうし」

「なぁ、お前の姉さんってさなんっつうか……」


 シンヤが何か言おうとして口ごもり顔を赤らめる。


「うん、気を許してれば平気で抱き着いたり無防備だったりするよ。彼氏いないから、胸とか当たってたでしょ、途中から顔が耳まで真っ赤で話し方もぎこちなかったし、僕から見ればすごくわかりやすい反応なんだけど」

「……顔も近かった、いい匂いした」


「洗剤も石鹸も同じの使ってるはずなんだけど。まぁ姉さん部屋船の人と仲いいからこっそり買ってきてもらってたのかも、部屋汚いし、どこになに隠しててもおかしくはないか」

「そういうことじゃない」


「彼氏はいないよ、今まで一人も。どうする」

「どうするって、なんだよ」


「姉さんは鈍感だからシンヤが何かしない限りは死ぬまで気が付かないよ」

「……んん」


「普段一緒にいたけど姉さんを好きになる要素あった?」

「青と紫のすごくきれいなあの目。初めて見たときからすごくきれいだと思った」


「それは姉さんが喜ぶ、人と違う左右違う目を気味悪がらない人は少ないから」


 アオイとソウマの護衛が到着する。

 皆戦闘の後で包帯で応急処置を受けたものや生体兵器か味方かの血で白い水兵服を真っ赤に染め上げた者たちばかり。

 皆シンヤが体を曲げ引きずりながら運んだ大型のエクエリを片腕で軽々と持ち上げていた。


 そしてすっかり気を取り直したアオイはふざけて二人の肩に手を回し体重をかける。


「お待たせ、乾燥機に何着かあったから。それを拝借して着替え完了、下着は汚れていなかったわ」

「そう。護衛の人たちも来たからもう大丈夫でしょ、姉さん逃げよ」


 ソウマたちを逃がすために集まった護衛達がアオイの心配をしそれを彼女は笑顔で返す。

 しかし、サングラスをかけていない彼女は左右違う目の色を気にし、前髪を下ろし目元を隠した。


「みんなが来てくれたなら後は私たちが避難区画へ降りるだけね、ほんと船に残ったのは戦士として戦うためだったのにみんなに迷惑をかけてしまい申し訳ないわ」

「さすがに子供が死ぬのはつらいからな。アオイ嬢はソウマ君と避難してください」

「本当になぜ船内の仕事につかなかったのですか、非常時にはすぐに逃げれたのに。こればかりは艦長の判断がおかしすぎる」


「私たちが選んだことよ、生体兵器の怖さも知らないで父の言いつけを守らなかったのは私たちなんだから。さ、行きましょ、生体兵器をすべて倒しても私たちの仕事はまだ残っているのだから」


 疲れ切った様子などみじんも見せず、護衛たちを勇気づける先ほどとは別人のアオイをシンヤは見つめている。


「どうしたのシンヤ君そんな見つめられても、顔に何かついていたりする?」

「かっこいいなぁと」


 シンヤの言葉に彼女は照れ臭そうにありがとうと言い護衛を連れて下へと向かう道へと向かった。


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