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暴走生命の世界 バイオロジカルウェポンズ  作者: 七夜月 文
10章 身も凍る荒波をすすむ ‐‐深紅の冷海の嵐を抜けて‐‐
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艦内戦闘 6

ソウマとシンヤはエントランスを目指して走る。

外へとつながる扉は大きく開かれてはいるが出ていくものも入ってくるものもいない。

通路には普段は隠され見ることのなかったコイルガンや回転銃がむき出しになっている。


「何か前来た時より道の感じが違うよな」

「生体兵器が艦内に入って対人武装の使用を許可したんだと思う」


壁や天井に見える対人武器を見ながらも二人は大型のエクエリを抱え走りその足を止めない。


「対人ってそんなもの積んであったのか、知らなかった。都市戦艦って物騒な船だな」

「大昔のやつだよ、この船全体にあってほかのセンサーとかの連絡装置とも連動してるからこの武器は取り除けないらしいよ。人と争わない限りは普通に使わないから長年都市戦艦に乗ってる人でもこんな武装があるなんて知ってる人は少ない」


「ついた、アオイさんはどこにいんだ?」

「エントランスに着いたけど、ミカヅキ、姉さんはどこ?」


手すりから身を乗り出しエントランスから見える上の階下の階その隅々を眺め見る。

どこにもアオイの姿が見えず焦りを募らせるソウマ。


『アオイ様ももうじきつきます、ソウマ様、シンヤ様反対側に移動してください。アオイ様を追う生体兵器の数は一、飛行型の生体兵器ではなく羽のない昆虫型の生体兵器で、遠心銃、コイルガンがその外骨格に弾かれほとんど効いていません』


「さっき下で見たやつ、姉さんに方に行ってたのか。無理にでも仕留めておけばよかった」

「倒すのたぶん大型のエクエリ持ってる俺だけどな。さぁ生体兵器、いつでも来いってんだ」


通路の奥を狙って大型のエクエリを構えるシンヤ。

電源が落ち暗闇の続く廊下の奥に壁に這いつくばるように走るアオイの姿が見える。


「姉さん!」

「待てソウマ、一人で先に行くなって!」


彼女の走る足取りは怪しく、通路の先助けに来た二人を見つけるとふっと気が抜けたように崩れその場に座り込むアオイ。

そんな姉のもとへと向かってシンヤを置いて一人走り出すソウマ。


『生体兵器はこのシャッターの向こうです。アオイ様、シンヤ様、武器を構えてください』


アオイの背後の防火シャッターが膨れ火花を散らし破かれるように裂ける。

暗闇の中、誘導灯の下からの光に照らされその姿が浮かび上がった。


『王都からの情報と過去の戦闘記録に該当なし、新たに大陸から流れてきたものかと思われます。侵入はシュトルムが持ち運んできた瓦礫と同じように空から降ってきて、落着後しばらくしてから行動を開始しました。落着時体を折り曲げ丸くなっておりました』


暗闇からのぞかせる左右に動く顎と二対の触角のついた頭、赤茶色い体に青い斑点、分厚く金属の弾丸をはじく甲殻、外骨格が瓦屋根のように重なり合う長い体に複数の足の中型の生体兵器。


「なんだこいつ、虫じゃない?」

「虫……? ていうかエビじゃねぇか、あれ? 姿、全然違うじゃねぇか」


アオイに駆け寄ると肩を回して立たせて連れてその場から離れるソウマ。


「ソウちゃん、なんでこんなところに? 早く逃げなさい」

「もう少しだけ歩いて、姉さん」


生体兵器はシャッターを抜けるとミカヅキの対人兵器がその瞬間を狙う。

円盤が高速回転する音と鉄の礫が空気を切る音が響き生体兵器の外骨格をたたく。


「ソウマ、早く来い!」


生体兵器に弾かれた銃弾がシャッターが粉々にちぎりその破片が紙吹雪のように舞う。

横殴りの鉄の雨に一瞬ひるむが触角を少し動かすと攻撃も受けながらも何事もないかのように進みだす。


「やっぱり生体兵器は止まらないか、ソウマ早く来いすぐ追いつかれるぞ」


跳弾がアオイたちに当たらないように跳ね返りが危ないと判断すればミカヅキは射撃を止める。

ミカヅキが作ったわずかな足止めでシンヤのもとへとアオイを連れてこれた。


「リーちゃんは、まだ、来てくれないの?」

『リアス様はすでに戦闘指揮所へと向かいこの階より二つ下の階におります』


「薄情な、私を助けに来てくれないの!」

『副艦長は生き残ることを命令で優先されています、残念ながらアオイ様の助けには来られません』


射線上に人がいなくなり誤射する可能性がなくなりシンヤはエクエリの引き金を引く。


「なっ! おいおいおいおい!」


攻撃を受けると体を折り曲げ丸くまるまる。

シンヤが驚いたのは兵隊兵器の変形ではなくその防御力、大型のエクエリの攻撃を受けてなおその外骨格には大した傷はつかない。


「硬いぞあいつ、こいつ何発撃っても倒せない気がするぞ」

「丸まったら動かなくなった、今のうちに逃げよう。ミカヅキ、道案内お願い」

『了解しました。生体兵器のいない道を案内します』

「まだ、走るの。もうつかれた、さっさとあれ倒して、休ませて」


へたり込むアオイを無理に引っ張ってでも立たせるソウマ。

生体兵器はいまだにその場で丸くなったまま動かないでいて、そこにソウマも小型のエクエリで数発撃ちこむが大型より威力の低いため更に効き目は薄い。


「姉さん聞いてた? フジツボの砲でも倒せそうにないの」

「じゃあ、もっと強いので撃てばいいじゃない?」


アオイの言葉にソウマはそうかとつぶやきシンヤのほうを見る。


「シンヤ、姉さん頼んでいい。エクエリは僕が持つから」

「あ、ああ。いいけどどうした」


ソウマに押し付けられたアオイと目が合い、左右違う色の目に一瞬今の状況を忘れて気をひかれる。


「ごめんね、シンヤ君、完全に足手まといになっちゃって」

「あ。あ、はい、いや、だ、大丈夫です」


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